ゼロから共に考える「ハイボールシンクタンク」
――なるほど、“買わずの川”というのは分かりやすい例えですね。そこから、具体的にどんなふうに進められたんですか?
まず、いただいたオリエンに対しての答えとして、「ハイボールシンクタンク」というグループを立ち上げましょうと提案しました。サントリーの担当者さん数名と僕ら、あと僕が信頼している、ブレーンのような存在の人たちを含めて10人くらいのメンバーで、定期的に施策のアイデアラッシュをするんです。
メンバーには事前に案を考えてきてもらって、ミーティングの場ではそれをどんどん挙げていく。僕はモデレーターとして「恋のから騒ぎ」のさんまさんみたいに、意見を促す役周りです。話が盛り上がれば、それを膨らませてみたり。シンクタンクをはじめてからもう4年が経ちます。

――実際に実行したアイデアもけっこうあるんですか?
例えば、ウィスキーを飲まなくなった理由の一つに、店によって濃かったり薄かったりバラバラで、おいしく飲めなかった経験があるんじゃないかと。ハイボールは新しい飲み物だからお客さんだけでなく、飲食店も飲み方を知らないことがありました。
そこで、飲食店での濃さを統一してもらうのにも有効だろうと、「おいしいハイボールの作り方」という、小雪さんが出てくる動画をYouTubeで流したりしました。また、ビアガーデンならぬ「ハイボールガーデン」をつくったり、東京ドームのビールの売り子の方の一部を、ビールからハイボールに変えてもらったりもしました。

一番苦労したのは、2010年7月から1か月間、JR新橋駅の発車メロディーに『ウイスキーが、お好きでしょ』の楽曲を採用してもらったことですね。これはJRさんとしても初の試みで、なかなか難しかったのですが、タイミングが合って数年越しで実現しました。
みんなでアイデアを出しあったことが実現して、結果的にハイボールという飲み方が広がったのは本当によかったと思います。
――今ではすっかりハイボールも定着しましたよね。最近の話ですと、ジェイアイエヌの「J!NS PC」のヒットが印象的ですが、こちらも同社との深い関係から考えられたのですか?
そうですね。2011年9月に発売された、PCディスプレイから発せられるブルーライトを軽減するPC用メガネ「J!NS PC」は、類似品も出ていますが同社のタイプが最も売れている状況です。売上に弾みがついた一つの要因は、品質の証として「ブルーライトプロテクトマーク」を設けたことがあると思います。
視力矯正が必要な人口は日本では3,000万人くらいですが、PC用メガネになったら一気にターゲットが広がる、これまでメガネがいらなかった人にかけてもらう、と最初に聞かされたときは驚きましたが、オリエンもとても納得できましたし、話していくうちに同社の研究熱心なところに感嘆しました。
そこで、まず類似品と差別化するマークを作り、加工したレンズとそうでないレンズの差が分かる什器を店頭に置き、それをCMにも使う、と一連のキャンペーンを組み立てたところ、これがかなり奏功しました。発売以来、250万本以上、60人に一人が買っている計算になりますから、稀有な例だと思います。
社長の考えを共有させてもらっていることも、進めやすさにつながっています。ジェイアイエヌの田中仁社長は今もプレゼンに必ず出席されるし、経営者としての思いや覚悟もいろいろな席で聞かせて頂いて、常に勉強になっています(参考:J!NS PC CMはこちらです)。