ネイティブ広告は有益なコンテンツに成り得るのか?
ネイティブ広告の落とし穴は、やはり編集と広告の境界があいまいになることである。編集記事を装った広告記事が増えたりすると、メディアサイトの信頼を喪失しかねない。それだけに、ジャーナリズムを重視した一流の伝統メディアともなれば、編集の独立性を主張し、ネイティブ広告に否定的な態度をとるはずと思われた。ところが、NYタイムズ、ワシントンポスト、フォーブス、エコノミストといった、高級新聞や高級雑誌までがこぞって、オンラインサイトでのネイティブ広告に乗り出したのだ。
その背景には、一流の伝統メディアでも、経営的に厳しい状況に追い詰められている現実がある。また一方で大手広告主は、オウンドメディアを立ち上げたりして、影響力のある人たちに自らのメッセージを伝えたいと動き出している。そのために信頼のある一流メディアサイトと連携したいのだが、従来の広告枠の利用では消費者に無視され、伝えたいメッセージが届きそうもない。そこで、大手広告主もネイティブ広告に期待を寄せているのだ。
ネイティブ広告にもっとも早く乗り出した伝統メディアとしては、フォーブス(Forbes)が知られている。2010年11月にBrandVoiceプログラムを立ち上げた。マーケター(広告主)が自作のコンテンツでForbes読者(消費者)と直接つながり、対話も実現できるサービスである。フォーブスのサイトには現在、SAP、Xerox、Oracle、NetAppなど 大手広告主13社のネイティブ広告記事が連載されている。

広告主はNetApp。この記事はソーシャルメディアで数多く共有されていた。フォーブス読者から記事に対するコメントも多く寄せられ、広告主のライターがそれに答えていたりしている。
編集記事と並んで同じフォーマットで提供される広告記事がフォーブス読者に容認してもらうには、編集記事としても通用するレベルのコンテンツが求められる。そのためSAPやNetAppは、それぞれネイティブ広告向けコンテンツの執筆陣として約20人を確保している。ほぼ半数が広告主社内の投稿者で、残りが社外のゲストライターである。平日には毎日一本のペースで新しい広告記事を投稿している。BrandVoiceの広告料金は月間5万ドルから7万5000ドルの間で、少なくとも3か月間継続することが条件となっている。それらの広告記事をいくつか閲覧したが、フォーブスの編集記事といわれてもあまり違和感がない。読者からの評判も高く、フェイスブックやツイッターでの共有件数が編集記事を上回るものも現れている。