画面遷移にも変化が
もうひとつ重要なのは、画面遷移に変更があったこと。今までのiPhoneでは、基本的な文法として、テーブル状のリストが並んでいて、何かをタップするとそれが横方向にスライドして次のものが出てくるという構造があった。これがiOS 7ではだいぶ減っている。その代わりに登場したのが「俯瞰からコンテンツを拡大していくスタイル」。

iPadの写真アプリを例にすると、さまざまな写真のグループが大量に並んでいる中からひとつを拡大することでその中にある個々のコンテンツに移動していく。ズームインしたりズームアウトすることで移動する画面遷移が増えている。「これを単純に演出的な問題と思うかもしれないが、実際はもう少し凝った、重要な動き」と深津氏は指摘する。
「横へのスライドから拡大・縮小のアニメーションに変わることで、ユーザーはどこから来てどこへ行くのかがわかりやすくなる。現在地をわかるようにするアニメーションがいろいろと重要視されている。そういう手触りの話が、単なるエフェクトや気分の問題ではなくて、情報のデザインとしてユーザーがどう使いやすくするかというのを増強する方向で考えられているのがiOS 7。グラフィック的には賛否両論あるが、ユーザーインターフェイスとかインタラクション的にはだいぶ進化していると思う。」
カラーマナーにも変化があった。たとえば、アプリごとにボタンのカラーテーマが決まっている。タップできる色が黄色のアプリでは、タップできる場所のテキストやアイコンが全部黄色で統一されている。フラットになってどこが押せるかわからなくなっている分だけ、この色のところを押せばタップできるんだということを明解にしようという方針が見られた。
「iOS 7はこのように手触りを意識している。僕たち開発者も手触りというのものについて理解を深めていかないと、どこを押したらいいのかわからないアプリとかできてしまう。そういったことがないように、これからは手触りを意識していかないといけないと思う。」
手触りを考えるときに参考になるアプリ
では、アプリの中の手触りとはどうやって表現したらよいのだろうか。深津氏は、その参考になる、手触りにこだわったアプリをいくつか紹介してくれた。
子どもに色の名前を教える「いろぴこ」
ひとつめのアプリは「いろぴこ」。子どもに色の名前を教えるための知育アプリで、インタラクションの気持ちよさがずば抜けていて面白い。2012年のYahoo! JAPANのインターネットクリエイティブアワード「一般の部」でグランプリを受賞している。指で画面をタップすると色の名前を声と文字で教えてくれる。ふつうのスクロールビューがすごく気持ちいい。子どもにとっても楽しいアプリになっている。

手触りに特化した実験的なアプリ「Clear」
「Clear」は実用的なアプリというよりは手触りに特化した実験的なアプリ。画面上にいっさいのナビゲーションが存在しないTODO管理アプリだ。iPhoneのジェスチャー(2本指スクロール、ピンチしてズームするなど、指を使ったさまざまな操作)を使って削除やフォルダ移動ができるが、ジェスチャーを知らないと使えない、わりと玄人好みのアプリ。

美しさに心を奪われる電卓アプリ「Llumino」
もうひとつ、電卓アプリ「Llumino」。これは高機能な電卓に、ひとつ遊びごころを加えたもの。セルオートマトンが使われていて、キーを押すとそのキーが光り、それが周囲へ伝播していくさまが美しい。気持ちよく、楽しく電卓を使うことができる。