グーグル時代到来を見抜いた、後藤社長の先見の明
「ロングテール」戦略には確信があった。それは2001年のグーグルの日本語本格対応。自社サイトの参照元を見てみると、当時は馴染みがなかった「グーグル」という米国のベンチャー企業が作った検索エンジンからの送客が、目に見えて増加していることが分かった。
後藤社長は論文などを調べたところ、グーグルのアルゴリズムは「良いページを引き上げるロジックがある」(同)ことに着目。「グーグルのアルゴリズムに合わせたサイト作り、サイト構造にする」という方針に切り替え、現在の「ケンコーコム」のサイト作りが始まった。
積極的にプロモーションへ資金投下を行っていたが、グーグルの登場で状況は一変。とにかくバナー広告などから「ケンコーコム」に導線を引く手法から、検索中心のマーケティングへと舵をきったわけだ。
ページ単位でクロールしサイトを評価するグーグルのアルゴリズムは、大量の商品を取り扱うケンコーコムにとって追い風となった。「良いコンテンツを用意し、グーグルから評価されやすい構成のページを作り、検索上位に表示することができれば、わざわざお金を払わなくてもユーザーが来訪するようになる」。後藤社長はグーグルの日本語対応直後からこうした確信を持っていた。
ダイレクトメール、ヤフーに広告出稿していた時代までは、完全なプッシュ型マーケティングだったケンコーコム。ロングテール戦略の採用、そしてグーグルへの対応をいち早くはかったことで、プル型のマーケティングへの方針展開に成功し、現在に至っている。
アマゾン、楽天の寡占、楽天との提携で生き残りかける
「消費者の買い物ルートは以前より狭まってきた。00年よりも今は狭い。買い物をするならアマゾンか楽天市場という消費者が増えてきている」と分析する後藤社長。長くEC業界を見てきたその目には、アマゾン、楽天という2強の寡占化が進んでいると映る。EC業界の大手として今後どう生き残りを図るのか。後藤社長はこう口にした。「この状況に適応していかなければならない」
「健康」というキーワードでのカテゴリーキラーを目指してきたケンコーコム。書籍から始まったアマゾンは、いまやケンコーコムが取り扱う商品領域まで進出、現在では総合サイトとしての地位を確立しつつある。
こうした環境下、消費者はどこで商品を買うのか。従前は「健康に関するモノなら『ケンコーコム』か、その他のサイト」(同)といった消費者が多かったようだが、現在の消費者行動は変わりつつある。消費者はより当日配送などの利便性、ポイントなどサービスの高いサイトで買い物をするようになっているのだ。
「アマゾンは安くて早い。楽天市場はポイント」。こうした理由で2社による寡占化が進んでいると考えるEC関係者は多い。アマゾンが米証券取引委員会に提出した12年12月期の年次報告書によると、アマゾン(日本事業)の売上高は、約7,300億円でモールを除くと通販業界トップと判明(参考:アマゾン、昨年の日本売上高は7300億円規模に,産経ニュース)。
一方のケンコーコムは200億円に満たない。アマゾンは全国10か所以上の物流センターから商品を発送し、送料を安価に抑えつつ当日配送などを手掛ける。一方、ケンコーコムの主要物流センターは福岡。送料、配送時間では埋められない大きな壁が立ちはだかる。ケンコーコム1社ではこの差はどうしても埋められない。
「カテゴリーキラーとして生き残るためにはどうしたらよいのか」(同)。出した答えが楽天との資本提携だった。12年、楽天はケンコーコムの40%超の株式を保有する筆頭株主となり、現在はグループ企業の持分を加えると50%を超えている。
「巨額の投資がないと次のステージに進めない」。こうした危機感を持つ後藤社長は、楽天との資本提携の背景を次のように話す。「今後、物流やビッグデータをどうハンドリングしていくか。インフラ、ビッグデータを持っているかが重要になる。カテゴリーキラーだけでは生き残れない」(同)。物流コスト、サービスの質、ITに関するインフラやビックデータ対応――すべてに投資する力がなければ、この先、顧客の支持を得ることが難しいと考える。
ケンコーコムは楽天が提供する総合フルフィルメントサービス「楽天スーパーロジスティクス」を利用することを決定した。主要出荷拠点を福岡から首都圏へ移行。物流網を広げ、当日配送エリアの拡大、配送コストの削減などにつなげる。楽天が抱える膨大なトラフィックの活用など、提携によるシナジー効果で、コスト競争力を高め、生き残りをかける。