活用場面での失敗例
アナリティクスを活用する際に、私が個人的に参考にするのが「イノベーター理論」です。詳細は触れませんが、新技術への適応の早さに応じて、早い順から「イノベーター」、「アーリー・アダプター」、「アーリー・マジョリティ」、「レイト・マジョリティ」、「ラガード」と名づけます。アナリティクスは多くの方にとってはまだまだ新技術です。それを活用してもらうためには、タイプに応じてどう語りかけるかを工夫する必要があるのです。

初心者の方のよくある失敗は、アナリティクスのプレゼンテーションの際に分析手法の説明を一生懸命してしまうことです。そうすると新しいことに慎重な「レイト・マジョリティ」や「ラガード」の拒否反応を招きます。説明の中心は業務や経営の課題とアナリティクスによる解決で、手法の説明は補足に入れて質問された場合のみ簡単に触れるようにしてください。
逆にぜひお勧めしたいのは社内の「イノベーター」や「アーリー・アダプター」を味方につけることです。彼らは新技術にトライするのが好きだったり、新技術で違いを生み出すことに積極的な人たちです。アナリティクスを活用する効用を説いてくれるサポーターになってくれることがあります。その正反対のタイプの「ラガード」、つまり懐疑派・保守派であった場合、私の経験では、別の場所で実績を作って、その実績のみをアピールするのが説得する唯一の方法です。よってアナリティクスの初期段階でこのタイプの人と一緒に仕事をするのは時間の無駄かもしれません。
それ以外の大部分の人、「アーリー・マジョリティ」や「レイト・マジョリティ」を味方にする特効薬はありません。しかし、会社の大部分はこの人たちで構成されていますから、彼らの支持を得ることは避けては通れません。地道なアプローチが必要になるでしょう。メリットを説き、初期段階で活用してもらい、そこでの実績を上手にアピールしながら活用範囲を拡げる、というアプローチです。
ある程度自信が付いてきた段階で、マネジメントのバイ・イン(了承)を得て、事業部レベル・部門レベルでの活用を決定してもらうこともお勧めです。こうすることで一気に拡がります。ただし、その際にはアナリティクスの期待効果をあらかじめきちんと伝え、アナリティクスの実施結果を事後ちゃんとレポートしてください。アナリティクスの結果は期待値と同じか、それ以上である必要があります。それができる自信がついた段階でマネジメントまで駆け上がってください。もしまだ自信がないならば地道に力をつけることに専念しましょう。
まとめ
いろいろな失敗例やチェック項目を述べましたが、最大の失敗は過度にこわがってアナリティクスを始めないことです。チェックすべき点を理解しておけば、実際にその事象が起きても対処の方法はあるというものです。
私のお客様の中には、「アナリティクスを始めてみて、アナリティクス以前のデータ整備の問題や、業務オペレーションの改善の気づきにつながった」 と喜んでくださる方もいらっしゃいます。世の中は複雑で思ったとおり物事が運ぶとは限りませんが、このお客様のようにすぐに意外な効果が出たりすることもあるのです。
アナリティクスがまだまだ新技術である今日、少々つまずいても恥ずかしいことはなく、むしろそれが経験値となってその後は優位に展開すると思います。今がチャンスです。
この連載で議論してきたように、初期のアナリティクスにはワナがたくさんあり、失敗もするかもしれません。超えるべきハードルは確かにあります。でもそれを克服して会社に何らかの影響を与えたとき、成功・失敗を超えた新しい次元に進んでいることを実感なさると思います。ご健闘をお祈りします。6回にわたる連載にお付き合いいただきありがとうございました。