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MarkeZine Day 2013 Premium Ad Technology Special Summer(AD)

自社データ、最大限に活用できてる?プライベートDMPはEC事業者の真の味方となるか

 「今やさまざまなデータを取得できるが、自社が得られるデータを最大限に活用していると言い切れる企業は非常に少ないのではないだろうか?」。9月3日(火)に開催されたMarkeZineDay 2013 Premium Ad Technology Specialにて、adingo 代表取締役の古谷和幸氏はそう投げかけた。「通販事業者のための自社データ活用術~最新・既存顧客のリピート施策~」と題し、プライベートDMPの活用が語られた。

今、話題のDMP/プライベートDMPとは?

 VOYAGE GROUPの100%子会社として2008年に設立された adingo は、事業の柱として主にメディアマネタイズを支援するSSP事業と、データマネジメントを行うDMP(Data Management Platform)事業の2つを展開。SSP事業では、すでに2,000サイト以上に導入されている「Fluct」を提供、一方でDMP事業ではEC事業者向けの会員マネジメントサービスであるプライベートDMP 「cosmi Relationship Suite」 を提供している。

※DMPとは、広告配信の対象となるオーディエンスデータを扱うもの。一方、プライベートDMPとは、企業が自社で保有している顧客および将来の顧客の行動をデータベース化し、広告を含むより多くのマーケティング施策のためにデータを活用するためのプラットフォームである。(『DMP入門』より参照)
株式会社adingo 代表取締役 古谷和幸氏

 広告主サイドとメディアサイドの両方をサポートしている視点から、adingo 代表取締役の古谷和幸氏は「DMPを活用することで、広告主は広告のROIを高め、その一方でメディアは自社の広告メディア価値を上げることができます」と話す。広告主側のDSPとメディア側のSSPとの間で、DMPを介して、RTBによる広告の売買が日々繰り広げられているのだ。

以下、講演資料より抜粋

 プライベートDMPを活用することで、会員データや購買データ、cookie、最近ではソーシャルアカウントを使ったソーシャルデータなどを含めてデータを貯め、分析し、その結果から使いたいデータやセグメントを切り出してマーケティング活動に役立てることができる。

 近年、DMP/プライベートDMPに関するメディア記事も増えている。しかし古谷氏は、「2年ほどDMPを取り扱ってきて、クライアントからは『前例がないから分からない』『データを扱う専門家がいない』『値段が高そう』といった声を本当によく聞きました」と振り返る。

通販事業者が抱える課題

 「実際はそんなことはない」と古谷氏は語るが、大変そうに思われているのが現状だ。ここで古谷氏は、自社データ活用の前に通販事業者の課題を整理したい、と切り出す。その課題とは、売上を上げるために強化すべき項目が明確になっていない点だ。通販における売上の公式には、大きく分けて以下の2つがある。

通販事業者の2つの売上公式

公式1:売上=【新規顧客売上】+【既存顧客売上】
公式2:売上=【訪問者数】x【購入転換率(コンバージョン率)】x【客単価】

 まず1つ目について、「どういう構成が理想かと通販事業者に聞くと、多くの企業が既存顧客、つまりリピーターの売上が大半を占めるのが理想と答えます」と古谷氏。「当然、新規顧客も軽視できるわけではありませんが、どちらも同じように追うのではなく、まずは既存顧客の売上対策を確実に行うことが、安定的な売上基盤の構築につながります」。

 2つ目の公式の各項目は、いずれも重要な要素ではあるが、やはり一番重視すべきは「訪問者数」。前提としてある程度の人数を確保できなければ、後に続くコンバージョンや客単価が高まっても大きな額にはなりにくいからだ。

 「これらをまとめると、既存顧客の売上と、訪問者数の増大に最も注力すべきと言えます」と古谷氏。

プライベートDMPを活用して、顧客への理想的なアプローチを実現する!

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プライベートDMP「cosmi Relationship Suite」の情報はこちら

既存顧客へのアプローチ、本当にできてる?

 では、現状では新規と既存顧客それぞれの確保にどのような手段が使われているのだろうか?新規顧客に対しては、アドネットワークやアフィリエイト、オーディエンス・ターゲティング、リターゲティングやリスティングなどさまざまな広告がアプローチとして有効だ。一方で会員情報などが取得できる既存顧客に対しては、メールマガジンでのアプローチが一般的。加えて、リターゲティングも、既存顧客への集客手段として使われている。

 このように、既存顧客へのアプローチの手段は意外と限られている。しかも、メルマガの本当の効果について古谷氏は、「私たちの調査では、メルマガの開封率はおよそ15%程度。いわゆる“捨てアドレス”が使われていたり、興味を失っていたりと、本当にメッセージを届けられている割合はとても低いのが現状です」と解説する。

 では、リターゲティングはどうだろうか?購入意欲が高まっている直近の訪問者に、閲覧した商品をプッシュできるリターゲティングは新規顧客には非常に有効な手段だが、「購入して1か月後のユーザーに」などの絞り込みができないため、購入直後の顧客にもバナーが出続けたりすることがある。

 「ホテルの予約など、もう完了したのに延々とバナーが出るのを経験した人も多いと思います。これでは、伝えたい人に適したタイミングでプッシュできる方法とは言えません」と古谷氏は指摘する。

プライベートDMP活用で実現する、顧客への理想的なアプローチ

 「リピーター対策、ロイヤルカスタマー対策などの既存顧客へのアプローチ策として、これらの手段にはまだ課題があるのではないか」と古谷氏は指摘する。そこで有効な例として、プライベートDMPを活用した、メルマガとリターゲティングを掛け合わせた施策が紹介された。

 メルマガのように、まず会員向けに対象者が限られ、細かくセグメントができ、いつでも配信できる。また、リターゲティング広告のようにユーザーがネットサーフィン中に接触することができ、情報量は画像を使って豊富に伝えられ、またランディングページまで到達するハードルも低い。プライベートDMPを活用することで、両方のメリットを組み合わせた既存顧客への理想的なアプローチを実現できる。

 具体的には、ページ閲覧情報で利用するcookieに、企業が有している自社会員データをひもづけて、対象者を明確にした上でバナー広告を出し分けるというものだ。トラッキングタグを用いて得たサイト内の行動情報を自社のDMPに格納し、会員データと融合させて、独自のデータベースを構築。それを分析して出稿に利用するため、「極端な話、セグメントした一人に向けてバナー広告を表示させることもできる」という。加えて、ある商品を購入するユーザー層の分析だけでなく、ある一定のユーザー層に何が売れているのかを分析することも容易だ。

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デバイスの壁を越えたリターゲティングも可能

 主に利用するのはトラッキングデータと会員データだが、例えば店舗があり会員情報とひもづけができていれば、オフラインの売上情報やソーシャルアカウントのデータを加えることもできる。さらにアメリカの例では、コールセンターの情報を統合したりするケースもあるそうだ。

 adingoのプライベートDMP 「cosmi Relationship Suite」 は、ユーザーの流入経路が複雑化し、扱うデータが膨大になる中、それを最大限に活用できるプラットフォームの構築を実現。また、複数のセグメントを簡単な操作で抽出でき、そのままメール配信やDSPによる広告配信などの具体的なアクションを行えることも有用性が高いポイントだ。

 特に、今のユーザー動向に即しているのが、スマートフォンのプッシュ通知に対応している点だ。「スマートフォンのWebサイト上でもログインした場合、PCとスマートフォン上の行動履歴を統合できるので、スマートフォンで閲覧した情報に基づいて次にPCを開いたときにリターゲティングすることが可能です。デバイス横断的なアプローチは今後ますます有効になるでしょう」と古谷氏。隙間時間にスマートフォンで閲覧し、実際の決済は自宅のPCでといった使い方をしているユーザーも多い中、このアプローチは高いコンバージョンを狙えそうだ。

売り上げUP!EC事業者のプライベートDMP活用事例

 古谷氏は、「cosmi Relationship Suite」の活用事例として、コスメやカラーコンタクトレンズの通販サイト「Luvlit(ラブリット)」(運営:株式会社T-Garden)を挙げる。アクティブな会員が約5万人、月間UUは15万に上る若年層女性に人気のサイトだ。

 同サイトには「コンタクトを使い切るタイミングの会員に、送料無料のクーポンで次回リピートを訴求したい」という意向があった。そこで会員データと購買データを用い、該当の会員には「送料無料」を謳ったバナーを配信。一方、非会員には売れ筋商品を訴求し、成果を上げている。購買データを軸にセグメントした事例だ。

 また、PCをメインとする家電や健康食品などを販売するECショップでは、会員データを軸にセグメント。扱ってはいるものの、メーンカテゴリではないため埋もれがちだった男性向け化粧品に焦点を絞り、外部サイトを介して直接商品のLPに誘導、前年同月比500%の売上を上げたという。

 ツールの進化により、自社データをフル活用するための環境が整った。それによってユーザーを深く理解し、またデバイス環境の変化に合わせて接触を図ることで、既存顧客の売上を安定的に確保することが可能になる。さらに古谷氏は、「DMPはデータ分析によって見込み顧客の発掘にも役立つ」と指摘。「ハードルを高く捉えず、マーケティング全体に有効なDMPをぜひ試していただきたい」と講演を結んだ。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/10/01 11:00 https://markezine.jp/article/detail/18447