すべての広告を同じ尺度で捉えるべき
まず、事業を開始してから数か月。SEM、純広告、アドネットワーク……、あらゆる媒体をやり尽くしたと言えるほど、さまざまな広告を出稿した。「その結果、まったく当てが外れ、肩を落としていました」と平塚氏。
それでも、EC事業者としては恵まれていた方だという。同社はドイツの靴・ファッションECサイト「ザランド」の運営元と兄弟会社の関係にあり、すでに事業を軌道に乗せていた同サイトから、ノウハウや経験を提供されていた。それを手がかりに、ヨーロッパで広がりつつあったフランス・クリテオ社のダイナミックリマーケティング広告を、まだ同社の日本法人が本格稼働する前から導入を進めるなど、「迷いながらもとにかく試していました」と平塚氏は当時を振り返る。
転機は2011年夏、アトリビューションと出会ったこと。オンラインマーケティングチームのメンバーがアトリビューションに関心を寄せ、内部で勉強を重ねた末、アトリビューションを分析できるログ解析ツールを導入したのだ。
「これによって、ユーザーの行動履歴やアトリビューション、アシスト数などが簡単に分かるようになりました。それらのデータを分析する中で次第に、アトリビューションという一つの軸で経過を見ていくにあたっては、すべての広告を同じ尺度で捉えるべきだという考えに至りました。また、その考えに基づいて、アシスト数の評価もコンバージョン1として明確に捉えるようになりました」
アドテクノロジーが顧客の行動を通じてマーチャント側とメディア側をつなぐ
2011年夏からのフェーズ2におけるもう一つの出会いが、アドテクノロジーだ。アドテクノロジーを活用することで、もちろんそれにより効率的な広告配信を追求するという側面もあるが、「我々マーチャント側と、出稿先のメディア側が、お客さまの行動を通じてつながるという側面も重要だと思っている」と平塚氏は話す。
「極論かもしれませんが、最近のダイナミックリマーケティングに代表されるアドテクノロジーに関しては、メルマガに代わる斬新なCRM手法ではないか、とさえ思っていました。ただこの時期は、とにかくPDCAを回して結果を蓄積してはいたものの、まだ広告出稿のすべてをアトリビューションの観点から管理するには至っていませんでした」
ここからが、同社の発想のユニークな点だろう。「ひたすらPDCAを回すことで、担当者に経験値が蓄積し、いわば“アドテク・アトリビューション職人”と呼べるまでにコントロールできるようになったのです」と平塚氏。
そんな担当者の育成にも、アドテクノロジーが十分役立っているという。例えば、同社ではログ解析ツールのほか、ポートフォリオ型のRTB自動入札ツール兼オンライン広告管理ツールも活用しており、一人ひとりのユーザーがどの広告をどのように辿ってから購買に至ったのかを把握しながら、管理運用を自社内で行える。これが、“職人”を育てるのに寄与しているようだ。
