矢野経済研究所は、スマートフォン端末を利用した国内EC市場の調査を実施した。本調査におけるスマートフォン・コマースとは、スマートフォンをチャネルとして展開されるECを範囲とする。対象は物販系、サービス系、デジタルコンテンツ系、アプリ系などのBtoC向け市場とする。
国内スマートフォン・コマース市場規模の推移予測
国内BtoCスマートフォン・コマース市場規模は、2012年で8,450億円、2013年には前年比159.4%の1兆3,469億円に成長すると予測。国内EC市場、ならびにオフライン小売市場(ECを除く小売市場)においてもスマートフォン経由によるEC化が進み、今後の市場規模は2014年で2兆413億円、2015年で2兆6,677億円と、2兆円を超える規模の成長を予測する。
また、国内EC市場におけるスマートフォンチャネル比率が上昇しており、スマートフォンの普及は、現状のオフライン小売市場におけるEC化も促進しつつある。一方、フィーチャーフォン系市場は、音楽配信分野など従来のフィーチャーフォンの端末特性への依存度が高いサービス分野に関し、スマートフォンその他のプラットフォームへ移行せず縮小している分野もある。
国内BtoCスマートフォン・コマースの主な動向
スマートフォンの普及により、アプリ分野やCtoC系サービスなど新規市場が立ち上がっている。加えて、既存のEC市場におけるインパクトも大きくなっている。
PCチャネルからスマートフォンチャネルへの移行が増加
経済産業省のデータなどをもとに試算すると、現在、PC経由の国内EC市場は7兆円規模とみられる。また物販系ECサービスを提供する各事業者のデータ等などから分析すると、ECのうち、モバイル端末経由の購買比率は、分野によるものの平均20%前後であり、スマートフォンの普及に比例して伸びている。たとえばアパレル系ECではスマートフォンによる購買比率が、すでに30%を超える事業者も存在する。国内EC市場は今後もPC経由からスマートフォン経由へと堅調に移行するものと考える。
スマートフォンの普及がオフライン市場におけるEC化を促進
スマートフォンの普及は国内EC市場のみならず、オフライン小売市場におけるEC化も促進しつつある。スマートフォン普及によるインパクトのひとつは、これまであまりインターネットを積極的に使ってこなかったユーザー層が、その環境を手に入れることである。サービス事業者はECサイトを構築するにあたって、まずはPC向けとすることが多かったが、昨今ではPC向けではなく、スマートフォン向けを優先して開発するケースも増加している。今後、ユーザー数が急増することが見込まれるスマートフォン向けのサービスが充実するようになれば、小売分野におけるEC化が一層促進される可能性がある。
スマートフォン・コマースの利用経験について
スマートフォン経由でのEC利用経験の比率が最も高かったのは「女性20代」74.0%、次いで「女性10代」55.0%、「男性30代」「女性30代」ともに50.0%であった。「女性20代」はスマートフォン経由でのEC利用について顕著に利用傾向が示され、特に物品系ECは非常に有望な分野であることが窺える。
【調査概要】
調査期間:2013年7~8月
調査対象:国内のスマートフォン向けECサービス(物販系・サービス系・デジタル系)を展開する関連企業等
調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mailによるヒアリング・文献調査・webアンケート調査を併用
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