すべてを統合するプロダクトは存在しない
しかしながら、残念なことにテクノロジーが進化した今日ですら、すべての運用型広告を包括的に網羅した統合管理ツールは存在していません。
たとえばある統合管理ツールはCPC型広告に強く、クリックをベースにしたアトリビューション分析やそれを踏まえた自動最適化に定評がありますが、DSPや第三者配信サーバ(3PAS)との統合には向いていなかったりします。一方で、別の統合管理ツールは第三者配信サーバとかなり密に連携できているものの、検索連動型広告の管理機能が十分ではなく、ディスプレイ広告と検索連動型広告のレポート出力は一元で管理できるものの、アウトプットするには難しい。このように、すべての運用型広告のすべての分析、稼働を網羅した統合管理ツールは存在しないのが現状です。
すべての分析、稼働を網羅した統合管理ツールが存在しないということは、それぞれの統合管理ツールに優位点や劣位点、特徴や特色があるということを意味しています。キャンペーン管理ツールを導入すればそれだけで自動化が進み、課題を解決してくれると考える人も多いのですが、それぞれのツールの特徴、特色を理解した上で、さらに自社のキャンペーンに対してそれらの機能がどのように作用するのかを理解しなければ、導入してもうまく行きません。
筆者の経験から、統合管理ツールを導入する際の選択は、最終的に以下の3つのパターンに分類できます。
(1)自社のマーケティング戦略にもっともあてはまるものを選ぶ
(2)プロダクトの機能から自社のマーケティング戦略や方針を決める
(3)自社のマーケティング戦略を実現するために適材適所に個別のプロダクトを導入し、それらを統合する
では、順番に見ていきましょう。
(1)自社のマーケティング戦略にもっともあてはまるものを選ぶ
仮に、現状の自社のネット広告予算のうち9割が検索連動型広告で、1割がGoogle ディスプレイ ネットワークのリマーケティングだとします。さらに運用のポイントはラストクリックのCPAをベースにしたコンバージョンだとしましょう。その場合、現在提供されているほぼすべての統合管理ツールがそれらの媒体には対応済みで、分析も可能です。
ポイントになるのは、たとえば自動入札を導入するときに、現状はラストクリックでありながら、将来的には検索連動型広告とリターゲティングのアトリビューションまで加味したポートフォリオ入札を実施したいのか、ないしはルールベースでの入札管理を行いたいのかという部分です。ここで選ぶべきツールが変わってくるでしょう。
このパターンでツールを選択する場合、自社の施策や現状がある程度わかっていることが前提です。それゆえに導入後のトラブルも少なく、かつ効果も改善するケースが多いというのが筆者の印象です。
(2)プロダクトの機能から自社のマーケティング戦略や方針を決める
このパターンが日本では最も多い印象があります。統合管理を実施したい、ないしはしなければならないというモチベーションはありながらも、どのツールを選べばいいのかわからないので、ツールの機能から実施可能なマーケティング施策を決めてしまうパターンです。
この場合、導入の段階でいくつかのツールを比較・検討する際に、(1)のように自社のマーケティング施策上で重要なポイントを発見し、それをもとにツールを選ぶというケースもあります。ただ、そういうケースはやはり少数派で、最終的には各社の機能のアセスメントとコスト部分だけでツールの利用だけを決定してしまい、最終的にどのようにツールを使うべきかというイメージがないまま実稼働に入ってしまい、多くのケースで失敗してしまいます。
よく言われることですが、ツールを使いこなせていない(むしろツールに使われている)というケースの多くはこのパターンにあてはまることが多くありま す。あくまで統合管理ツールを使うのが人間である以上、人間の意思決定なしにツールが動くことはありません。ツールありきのマーケティングプランになってしまうと、元の木阿弥になることは注意しておきたいところです。
