インターネット広告の生態系には主語が3つある
複雑にプレーヤーが入り乱れたインターネット広告の生態系をあらわす図を「カオスマップ」と呼ぶが、その構造をおおまかにとらえると、広告主から最大7つの層があり、エンドユーザーに到達する。

このカオスマップ上には、「主語」が3つあることを注意しなければならない。
(1)広告主
(2)媒体主
そして、媒体の選定が、人の手から自動最適化エンジンに移ったことで新たに
(3)DSP/SSPをつなぐ市場
が登場した。このようなインフラの整備は、オーディエンスという「人」レベルでのターゲティングスキームをもたらし、「枠から人へ」というキャッチフレーズが生まれた。つまり「広告枠」を買うのではなく、広告を見せたい「人」を買う時代へと移ったのだ。
ここで重要なのは、市場に「オーディエンスデータ」という概念が登場したことだ。インターネット広告が、「枠から人へ」の進化を遂げ、ターゲティングを念頭に置いたとき、「人」のログデータにフォーカスが当たるようになった。「DataExchange(データエクスチェンジ)」と呼ばれる業者群は、市場が持つオーディエンスデータを、DSPにメニューを提供し、充実化させるかたちで機能する。
それぞれ「主語」の思惑を整理すると、以下のようになる。
(1)広告主は、より詳細なターゲティングができるようになることを望み
(2)媒体主は、できるだけ高値で自社媒体を売りたいと考え
(3)DSP/SSPをつなぐ市場は、広告主の詳細なターゲティングの要望に、オーディエンスデータの拡充をもって応えようとする。
そして、オーディエンスデータのつなぎ役として機能しているのが、ユーザーのブラウザに蓄積される小ファイル「cookie(クッキー)」である。cookieファイルはユーザーのPC内に個別に保管されるものではあるが、主語(3)の「DSP/SSPをつなぐ市場」は、このデータをターゲティングに利用できるよう、cookie媒介技術を進化させた(この技術については、次回以降で解説する)。
「アドテクの振り返り」が少々長くなったが、ここでやっとDMPが登場する。オーディエンスデータを扱う、“人”主体のデータ統合基盤がDMPということになる。黎明期のインターネット広告とくらべ、視点は完全に人主体に移った、ということが言えるだろう。
インターネット広告テクノロジーの歴史 まとめ
以上は、2000年から約10年余りの間に起きたできごとだ。このテクノロジーの進化によって、企業のマーケティング戦略は、“いままで”と“これから”で大きな変化を迎えようとしている。
いままでの特徴は、広告主から見て、ターゲットとする人はインターネットの向こう側にいたということだ。
「いかに向こう側へ届かせるか?」
この10年間の進化は、広告“網”の整備と、「投げる」マーケティングの最大化/最適化が行われてきた。これからは、「掘り起こす」マーケティングになる。そして掘り起こすのは、自社のオーディエンスデータである。
10年あまりのテクノロジーの進化によって、インターネット広告技術は「枠から人へ」シフトした。今度は、「人」から、「ある関わりを持った人」へシフトする。その「人」は、複数のタッチポイントで、それぞれどんな接触をしているのか? その関係性を掘り起こすためのツールがDMPなのだ。