「オーディエンスデータ」とは何か
第1回はDMPの概要、第2回は仕組み、構造について解説を行った。今回は、DMP活用という文脈における「オーディエンスデータ」と、企業の「データセラーDMPの使い方」をテーマに、解説を行う。
「オーディエンスデータ」とは、簡潔にいえば“ある人”の属性情報と行動ログである。
属性情報とは個人をあらわすメタ情報で、一般的にECサイトなどの登録情報などが相当する。行動ログは、Webアクセスログを中心に、ECサイトの購買情報、アプリの稼働時間といったユーザの行動記録で、時系列情報を含むのが特徴である。昨今、スマートフォン、車、ヘルスケア機器などに搭載されるセンサーのセンシングデータもこの部類に含まれ、これを行動ログとして活用するケースが非常に増えている。
総じて「オーディエンスデータ」とは、“ある人”がどのような人かを示す、断片的な記録の集合ということができるだろう。
モノのインターネット化が進む現代において、人をあらわすデータ群は爆発的に増加しており、企業にとってオーディエンスデータの活用は、顧客接点を最適なものにするための根拠として注目が集まっている。
データをマーケティングに活用する、という考え方
顧客接点を最適なものにするために、こうしたデータを使うという方法論は、
“どのような人”なのかがわかれば、その人に「何をするか」を考えることができる
という発想にもとづいている。このようなアプローチは今に始まったことではない。インターネットが登場する以前から「データベース・マーケティング」として体系化されており、実験と検証が繰り返されてきたことは、第2回で解説したとおりである。
インターネット登場以前の時代では、来店時のアンケートや営業担当者のヒアリングメモを名寄せし、「あるユーザ」が“どのような人”なのかをあらわす情報の蓄積と活用を行ってきた。営業担当者のメモは、インターネット登場後、サーバ内のデータにとって代わったが、根底に流れる基本的な考え方は変わっていない。
データセラーDMPは、この10年余りのインターネット広告配信技術の進化の過程で、Cookieを媒介にして、“ある人”に向けた広告を打つことが可能になった。プライベートDMPは、ばらばらだった企業データ3軸(広告データ、Webログデータ、CRMデータ)の名寄せとパーソナライズを行う基盤である。
本稿では、2つのDMPの「オーディエンスデータ」に対するそれぞれのスタンスと、オーディエンスデータの定義の違い、その使い方について比較をしながら解説を行う。
本記事を読み進める際に念頭に置いてもらいたいことがある。それは、両者とも異なるデータを使い、違う進化を遂げつつも、それぞれのスタンスから網羅的なオーディエンスデータの統合とマーケティング活用を目指しているということだ。この点を意識することで、より深いDMP理解が得られると思う。