総合広告代理店が生き残る勝機は?
横山:おそらく、今後も枠モノの広告は残ります。全てがDSPなどを使って、オーディエンスターゲティングのみでバイイングできるわけではないでしょう。しかし、これからは枠モノもオーディエンスデータで評価される時代になります。
「オーディエンスデータはマーケティングの通貨たり得るか」と、アドテック東京2013のパネルディスカッション「最先端アドテクノロジーから読むマーケティングデータ分析」でも話しましたが、この感覚は広告代理店にとっても必要になってくるでしょう。
菅原:デモグラフィックではなく、オーディエンスの質で評価するようになるということですね。広告に対してポジティブなのか、ネガティブなのか、そこで評価するようになってくるように思います。

横山:総合広告代理店は、それらを作るノウハウを持っています。単純な調査だけでなく、より切り込んだクラスター分析を思考する知見を総合広告代理店は蓄えてきたので、それをいかに応用していくかが肝でしょう。クラスター分析やセグメントによって生活者をどう分解するか、その知見においては彼らは長けています。加えて、しっかりとしたコミュニケーション文脈に基づいてクリエイティブを創作すること、この2点において圧倒的な知見をもっています。ここに、オーディエンスデータが通貨になり得る時代に、すなわちデータマーケティングの時代に、総合広告代理店が生き残っていく勝機を見出すべきでしょう。
広告主にとって、欲しいオーディエンスは非常にセグメントされています。広告主にとって大切なのは、自社商品に興味・関心のある人。そして次に重要なのは、関心があって買えない人ではなく、買えるけれども今は関心を持っていない人です。
菅原:その人たちの気持ちをどう変えていくかですよね。
横山:これをテレビ視聴率の話に応用してみましょう。リーチ100%に近づけるのがテレビですが、テレビ視聴者のオーディエンスデータがわかるようになれば、テレビの視聴者の約7割はまったく自社のターゲットではないといったことが明らかになるかもしれません。飲料のようなターゲットの幅が広い商品であればともかく、ある程度の高額商品になれば、リーチ100%になるようにテレビCMを投下しても意味がない、といったことがつまびらかになるでしょう。