Social Media Weekに登壇したハネス・グレー氏のキーノートを振り返る
ソーシャルメディアやテクノロジーをテーマに最新トレンドを話し合う「Social Media Week Tokyo」(主催:サイバー・コミュニケーションズ)が2月に開催されました。その初日となる17日、キーノートに登場したのは、Spotify Japan株式会社の代表取締役を務めるハネス・グレー氏。
Spotifyは、この連載で過去にもご紹介していますが、改めて説明をすると、好きな音楽がPCやスマホからストリーミング再生で聴き放題できるサービスです。Spotifyのビジネスモデルは、無料モデルと有料モデルを組み合わせたフリーミアムが大きな特徴のひとつ。アメリカの場合、月額9.99ドルの有料会員になれば、PCだけでなくスマホやタブレット、デジタル家電などでもオンデマンドで聴き放題ができ、さらに曲間に入る広告も消すことができます。
スウェーデンで2006年に開発されたSpotifyは、現在世界55か国で運営、アクティブユーザー数2400万人、有料会員数600万人を突破した世界最大のサブスクリプション型音楽ストリーミングサービスです。
今年に入り、日本でもSpotifyがネット上でも話題になる機会が増えてきました。今回のSocial Media Week Tokyoではスポンサーにもなっており、同週開催された日本初の音楽ハッカソン「Music Hack Day Tokyo 2014」にも開発者にAPIを提供するスポンサー企業として参加を表明。そんな中、今回のグレー氏の登壇が発表されたことで、「Spotifyがいよいよ日本でも開始するのか?」などといった憶測や期待が広がっていました。
グレー氏の口から日本ローンチの言葉を聞こうと思い、音楽サービスとしては珍しいほどキーノートには多くの人が集まりました。しかし、グレー氏は登壇直後に「今日は発表イベントではありません」と宣言したことによって、多くの人が期待した日本ローンチは当分先になることが確定しました。
Spotifyのビジネスを知っている日本人は果たしてどれだけいるだろうか?
そんな熱気に包まれた会場で始まったキーノートは、これまで公の場で語られることのなかった「Spotify」の製品についてや音楽業界への貢献、その可能性を初めて日本人に届けるプレゼンテーションの場となりました。とくにSpotifyの広告ビジネス面でのメリットの紹介は、音楽を使ったマーケティングやサービスに関心のある企業人にとっては貴重な60分になったに違いありません。
まずグレー氏は、Spotifyの説明の前に、音楽サービスが価値を提供する上で重要な「音楽体験」について説明しました。
自分が子どものころに聴いていた音楽やライブで聴いた音楽といった、生活の中にある音楽のチカラが社会や人生を変えるほどの影響を与えることができると述べ、様々なライフスタイルにまで音楽が浸透していることを紹介しました。たとえば、「モチベーションを高める」「ジムで運動する」など日常的な行動の中に音楽はすでに根付いています。さらに、音楽は自分のアイデンティティにもなり、人と人をつなぐツールとして感情に働きかけるユニバーサルな側面を持っている点を“音楽のチカラ”と表現していました。
またグレー氏は、日本人における音楽の影響力に関する調査データを紹介。最も日本人が好む娯楽は「音楽」で、回答者の56%を占めています。それ以外の44%の人のうち、89%が音楽が好きと答え、移動中に音楽を聴いていると答えた人は3分の1に及んでいます。日本人の生活にいかに音楽が浸透しているかがうかがえます。