定額制音楽サービスの偏見を解体するSpotifyのコンセプト
ここからがSpotifyの紹介。まずグレー氏は、Spotifyは、その人のその瞬間に音楽を届けるサービスであると説明し、これを実現するための要素として「音楽を見つけやすくすること」、「いつでもその音楽が聴けること」の2つを追求していると述べました。
それにしても、通常音楽サービスがプレゼンをする場合には、「月額定額制」や「月額980円」、「聴き放題」や「楽曲2000万曲」などのキーワードを並べ、差別化を図ろうとします。しかし、消費者にとって2000万曲や980円といった数字はあまり問題ではありません。なぜならこれらのキーワードはすでに使い古された決まり文句となっており、どのサービスにも先行優位性を与えることはできません。つまり、コスト競争やコンテンツ獲得合戦をしたところで、消費者への大きな訴求にはつながりません。
キーノートの冒頭で、グレー氏が料金や楽曲数などに触れなかったことはSpotifyのビジネスの根幹を象徴しています。企業のコンセプトをしっかり共有し、サービス開発や海外展開などの戦略に落とし込むことができているからこそ、Spotifyの今日の成長があったことをあらためて確認できました。
続いてプレゼンテーションはSpotifyが提供している音楽プラットフォームの説明に入ります。PCアプリ内の「Discover」機能や「Browse」画面、そしてスマホやタブレットなどマルチプラットフォームへの対応を紹介しました。PCやモバイルデバイスだけでなく、ホームオーディオ、クルマでも、いつでも音楽を聴けるようにしているプラットフォームがSpotifyです。さらに毎日6000万件を超えるFacebookへの投稿を始め、ソーシャルメディアとの連携を強めているために、友人知人から音楽を知るだけでなく、政治家やセレブなどのインフルエンサーからも新しい音楽を知ることができるのが特徴となっています。
Spotifyのグローバルビジネスモデルを改めておさらい

グローバルのビジネスモデルは、PCで広告が付いている「フリープラン」と、スマホやその他のデバイスで無制限に聴け、豊富なオプションが利用できる「プレミアムプラン」の二通り。フリーとプレミアムプラン会員を合わせてアクティブユーザー数は2400万人以上を獲得し、さらに拡大していることから、この中長期的なフリーミアム・モデルは成功していると言えるでしょう。
その要因のひとつは、ユーザーが使いやすい製品開発に努めた結果であるとともに、膨大なユーザーを自社製品のマーケティングデータとして活用したことも挙げられます。
ユーザーが自由に楽曲を選んで組み立てられるSpotifyプレイリストは、2014年1月だけで6000万個作成され、ユーザー1人あたりの平均利用時間は1日100分以上と非常に高いユーザーエンゲージメントが結果として表れています。
また音楽業界への貢献という点でもSpotifyは大きな役割を担っています。現在、デジタル音楽の売上においてはiTunesに続いて2番目に大きいサービスであり、2013年だけでも5億ドルを権利者に支払っています。