買収、日本市場への参入発表…AOLと組んだ狙い
― 昨年8月には買収ニュース、続いて9月には日本市場への参入発表とあわただしい半年間だったと思います。買収を受けたのは多数のメディアを持つAOLとのシナジー効果を狙ったのでしょうか?
橋本氏:AOLの事業は多岐にわたりますが、大きくはメディア事業と広告事業で成り立っています。メディア事業は、ポータルサイトの他に、ハフィントンポストやテッククランチなどの媒体を運営しています。広告事業としてはアドネットワークなどを運営していますが、その中で私たち「Adap.tv」は動画に特化した広告配信サービスという立ち位置の会社となります。
― なるほど。Adap.tvの本拠地はアメリカですよね。どんなサービスを展開されているのでしょうか。
Phil氏:もともと2007年に設立し、急速かつグローバルに成長したのち、昨年9月にAOLの傘下に入りました。アメリカだけでなく、いまは東京、シドニー、シンガポール、ロンドンに拠点を持ちます。今後も拡大予定で、今年はフランスとドイツに、その後も東南アジアに進出する計画もあります。
強みのひとつは、総合的なサービスを提供できることです。最近アドテクノロジー業界には様々なテクノロジーが登場しています。効果的なプログラマティック広告出稿を実現する「DSP」やメディアの収益化を支援するテクノロジーの「SSP」などですね。そういった技術が台頭する中での私たちの強みは、広告主向けの技術とメディア向けの技術を、ひとつのプラットフォームで動かせることだと考えています。
世界トップシェアを誇るAdap.tvの統合プラットフォーム
― ひとつのプラットフォームで動かせると何がよいのでしょうか。
橋本氏:例えば広告主が「DSP」を使って広告枠を購入したとしましょう。しかし、購入できなかった広告枠の詳細を知ることはできません。購入できなかった広告枠には対策が打ちづらいという問題があります。しかし私どもは、広告の出稿先であるメディアとつながる「統合プラットフォーム」のため、購入できなかった広告枠の詳細も広告主サイドが把握し、改善をはかることが可能です。さらに少し未来の話をするとアメリカではテレビへの広告配信にも実験的に取り組みはじめています。セットトップボックスなどからユーザーデータを吸い上げ、ターゲティングも行っています。
― ネット広告の配信技術をテレビ広告配信にも応用しているという意味でしょうか。
Phil氏:それに近いですね。ただ、さすがに運用型広告のような世界ではまだまだありません。やり方としては少しアナログで広告代理店が購入した広告枠へ掲載する素材を放送局へ送り、放送局が配信しています。リアルタイムで配信されるのではなく、購入して数日後に配信、のようなイメージですね。
ちなみにAOLと合併したことでAdap.tv経由の動画広告は月間43億インプレッションとなり世界トップです。世界中で流れている動画広告の7回に1回はAdap.tvから流れています。グーグルよりも多いです。