2015年には400億円市場へ
― 動画広告市場への見通しをどのようにとらえているのでしょうか。
Phil氏:自社サービスの利用状況からいうと年々、飛躍的に伸びています。わが社がお受けした広告キャンペーンは、2010年は2千回だったのですが、2011年は1万1千回、2012年は2万6千回、2013年は3万8千回と、右肩上がりで伸び続けています。日本でも、今後増えるでしょう。
動画広告市場そのものも成長しています。2013年、アメリカでは4,100億円に対し、日本では130億円程度でした。しかし、2015年では約400億円への成長が見込まれています。規模はアメリカより小さいですが、大きな伸びが期待されています。
出典:米国ネット広告市場、米国動画広告市場(eMarketer.com)
日本ネット広告市場(電通「日本の広告費」)
日本動画広告市場(シード・プランニング)
出典:www.eMarketer.com
― 日本の動画広告はスタート段階で立ち遅れた感じがあります。なぜでしょう。
橋本氏:日本には動画広告に適したブロードバンドインフラがあります。またYoutubeで動画を見る習慣も定着しています。なのに立ち遅れてしまったのは、動画の著作権問題にあると考えています。動画コンテンツのライセンスすべてを放送局が保有しているアメリカに対し、日本は権利者が多く、オンラインに出回る良質なコンテンツの数が少ないのです。結果として、動画広告市場が成長しづらい環境にありました。
単純にテレビ予算からのシフトだけではない
― 限られた予算の中で動画広告の予算はどこから持ってくる傾向にあるのでしょうか。
Phil氏:現在は、主にディスプレイ広告予算からのようです。が、一巡したら他のところから移ってくるかもしれません。テレビの広告予算から流れているイメージがありますが、必ずしもそうではありません。
動画広告市場は、著作権問題がクリアになりコンテンツが増えないと伸びません。一方で、動画を視聴できる時間は限られているわけですから、その制約のなかで、徐々に広告としての適した形を成していくのだと思います。
― 日本独特の広告フォーマットニーズなどあるのでしょうか。
橋本氏:まずは、動画の中に組み込まれる「インストリーム広告」が広がっています。Youtubeで動画を見ようとすると、最初に広告が流れますよね? これは、インストリーム広告のなかでも、動画の前に広告を流す「プリロール」という手法です。テレビCMのように作品の途中で流れる「ミドルロール」、最後に流れる「エンドロール」の3種類があります。いま、日本の動画コンテンツは、プリロールなど、主にインストリーム広告が使われています。
ちなみに他にも、バナー広告が動画になる「インバナー広告」、Webサイトの画面が切り替わったあとに動画が流れる「インタースティシャル」、ゲームのなかで広告が流れる「インゲーム」など、動画広告には様々な形があります。
― 日本では、まだ動画コンテンツの質・量共に不足していますから、他国とは違うニーズがあるのかもしれませんね。
橋本氏:そうですね。「Adap.tv」では日本市場向けに「インリード」という手法の提供を計画しています。動画コンテンツに動画広告を入れ込むのではなく、ニュースなどの文字情報に動画広告を組み合わせる手法です。ページをスクロールしながら読む、文量の多いレポート記事の間に動画コンテンツを入れ、表示された途端に動画が再生される仕組みです。
― 面白いですね。「Adap.tv」の今後の計画も教えてください。
橋本氏:3月から、一部のお客様向けにベータ版のサービスが始まります。管理画面やヘルプ画面が日本語化するのは、今年4月~6月頃です。本国の「Adap.tv」のサービスは日本のお客様にもご利用頂いており、市場はあると思っています。
―楽しみですね。ありがとうございました。
