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モバイルシフトする消費者とミスコミュニケーションが起きていませんか?マルチデバイス時代のメールマーケティング事例紹介

 急速なマルチデバイス化により、多くの企業はその対応に追われている。特にプッシュ型の主戦力であるメールは受け手側の環境に影響されやすく、喫緊の対策が必要だ。そんな中、積極的にマルチデバイス対応に取り組み、少しずつ成果を上げている企業も登場している。その1つとして、ストックフォトやフォトブックサービスで知られるアマナイメージズと、その施策支援を担ったエクスペリアンジャパンの事例を紹介する。

約9割の企業がメールのマルチデバイス対応に課題を感じている

 近年、スマートフォンやタブレットなどの普及やネット環境の進化などにより、ユーザー側のマルチデバイス化が急速に進んでいる。メール配信システム『MailPublisher』を提供するエクスペリアンジャパンによる独自調査によると、企業の約9割がメールのマルチデバイス対応に課題を感じているという。また、海外を含めたHTMLメール閲覧率の調査では、モバイルによる閲覧がここ1年で急増していることが明らかになった。

エクスペリアンジャパン株式会社 マーケティング部
メールマーケティング エバンジェリスト 吉澤和之氏

 こうした調査を踏まえ、エクスペリアンジャパン マーケティング部 メールマーケティング エバンジェリストである吉澤和之氏は、「誰もが実感しているように、iPhoneやAndroidでの閲覧が増えたこと、それを支える高速LTE化の普及がその背景にあると考えられる。メールの閲覧環境はモバイルが一般化しており、もはやPCだけではないことは明白」と語る。

新しいユーザー層拡大により、モバイル対応が急務に

 その実感は、企業側にも当然得られていた。株式会社アマナ(以下、アマナ) WEBマーケティング事業部 WEBマーケティング部 マネジャーの高和丙氏は「早い段階から社内で『モバイルファースト』という言葉が飛び交っていた。ただしサービスの性格上、現状としては取り組みが遅れていた」と振り返る。しかし、モバイルによるサイト閲覧比率が急増したことをきっかけに、急速にモバイル対応への意識が高まっていったという。その背景には、ストックフォトなど既存のBtoBビジネスに加え、BtoCビジネスへと事業を拡大していたことがあった。

株式会社アマナ WEBマーケティング事業部
WEBマーケティング部 マネジャー 高和丙氏

 「フォトブックなどのBtoC向け商材のプロモーションを強化し、その施策の一環として『Tポイント』や『Naverまとめ』との提携を行ったことが、個人ユーザーの急増につながりました。つまり、モバイルによる閲覧は個人ユーザーの急増とリンクしており、そうした新しいユーザー層に対する対応として、モバイル対応が課題に上がってきたわけです。そうしたことを踏まえて、どのような施策やデザインが求められるのか、デザイナーたちを含めた議論が頻繁に行われるようになりました」(高氏)

消費者の変化に向き合い、マルチデバイス対応に取り組もう!

※リンクをクリックすると外部サイトへ遷移します
エクスペリアンジャパンが提供するメール配信システム『MailPublisher』の詳細はこちら

マルチデバイス対応の第一歩は、閲覧デバイスの把握から

 高氏の実感として、マルチデバイス化のスピードは想像以上であり、クリエイティブも含め早急な対応が求められた。しかし、あえてサイトではなく、「メール」の対応から着手した。プッシュ戦略の重要ツールであり、短いスパンでPDCAが回せるメールの最適化こそ、サイトを含めたマルチデバイス対応における有効な指標になると考えたからだ。

 そこでアマナが利用したのが、『MailPublisher』の「開封エンゲージメントサービス」である。HTMLメール受信者のデバイス状況を分析し、ユーザーの実態を把握することで、サイトを含めたクリエイティブの最適化の指標としたわけだ。このアプローチについて吉澤氏は「非常に重要なステップ」と評する。

 「一番目につき、まず取り組みたくなるのが、やはりクリエイティブの最適化です。しかし、やみくもに取り掛かるのではなく、まずは自社のユーザーのデバイス状況を正しく把握することが大切です。その上でどのデバイスにフォーカスするかを選定し、クリエイティブや配信タイミングをどうするかを考え、結果の分析を行って反映し、最適化を図っていきます。ブラウザの分析は比較的行われていますが、盲点になりがちな『デバイス』という切り口で分析し、可視化することが大切です」(吉澤氏)

モバイルユーザーとのミスコミュニケーションを把握する

 「開封エンゲージメントサービス」によるメール配信により、アマナのメールクライアントは64%がAppleMail、8%がiPhoneであることが判明した。アマナのユーザーは主にデザイナーなどのクリエイターであり、Mac利用者が多いことからAppleMailが最も多いことは想定内だったが、8%というiPhoneでの閲覧率は想像以上の高さだったという。

 「しかし、モバイルによる閲覧が増えているにも関わらず、その半数以上がすぐにメールを削除してしまうことが判明しました。それは新しい顧客であるモバイルユーザーとのミスコミュニケーションが起きている可能性が高いことを意味します。早急に対応しなければと思いました」(高氏)

 なお吉澤氏によると、エクスペリアンの調査では調査対象にECサイトが多いこともあり、モバイルでの閲覧は65.5%とアマナの8%を大きく上回る。こうした数値を鑑みても、業種や業態によって閲覧デバイスの割合は異なる可能性が高く、だからこそ自社のユーザーのデバイス状況の把握、可視化が重要というわけだ。

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次のステップとして、クリエイティブの最適化へ

 アマナでは、想像以上にモバイルによる閲覧が増加していることを受け、社内での調査・分析を行った。その結果、新しい顧客層である個人ユーザーだけでなく、既存顧客もスマートフォンやタブレットデバイスで情報を収集しはじめていることが明らかになった。

 「さらに一歩進んで、未だそうした利用をしていないユーザーにも効率的にサービスを活用してもらえるよう、モバイル対応が必要と考えるようになりました。そこでクリエイティブの最適化の必要性を再認識したわけです」(高氏)

 そこで、まずは訴求の切り口から検証をはじめた。提供側が訴求したいジャンルの画像を絞って、より訴求力を強めた「提案型」と、多様な画像を掲載してユーザー側の選択を促す「ピックアップ型」の2種類について、クリエイティブのA/Bテストを実施した。その結果、提案型のほうが圧倒的にCTRが高いことがわかった。

 次にアマナでは、「モバイル対応」と「最適な訴求」という両軸で、クリエイティブ最適化施策を行った。新しいユーザー層は「モバイル」で閲覧し、かつ「提案型」を望むという仮説を立て、さらに「すぐに削除してしまう」という課題をもとに、モバイル表示を意識した「提案型」と、PC表示を想定した「ピックアップ型」の2種類についてテストを実施した。件名などのコピーやビジュアル、ボタンの位置や大きさについても細やかな変更を加えてメール配信を行った。

 結果としては、全体を見ると「提案型」と「ピックアップ型」の効果はほぼ変わらないが、モバイル閲覧分だけに特化して分析したところ、提案型の方が「読んだ」「少し読んだ」とする人が8%も高かった。モバイルで閲覧するユーザーは「提案型」を望むという仮説が肯定されたのである。

PDCAを回しながら、小さな改善を繰り返していく

 こうした取り組みを振り返り、高氏は「最適化」を進める有効な方法について次のように語る。「ボタン一つを変えても閲覧率が上がることはないでしょう。しかし、そうして得られた小さなセオリーを少しずつ積み重ねることで最適化が図られ、得られたノウハウをもとにサイトの最適化にもつなげることができる。PDCAサイクルを回しながら、小さな改善を繰り返していくことが大切だと実感しました」

 その言葉に頷きつつ、吉澤氏は「メールだけでなくサイトまでを含めた全体を見据えた最適化が不可欠」と語る。

 「たとえば、メールでの閲覧率は高いがコンバージョンは低いといったこともよく聞かれます。しかし、情報閲覧はメールで、購入はPCでといったように、デバイスの多様化に従ってユーザーの購買行動が複雑化していることも少なくありません。マルチデバイス対応においては、そうしたことも踏まえて、全体最適化を行うことが重要といえるでしょう」(吉澤氏)

 このようにマルチデバイス対応においては、商材やサービスによって対応すべきデバイスや購買導線などが異なり、それぞれが仮説を検証しながら全体を最適化していく必要がある。とはいえ、どこから手を付けてよいか迷う人も少なくはないだろう。まずは本事例を参考に、自社のユーザーのデバイス状況を把握し、クリエイティブなどの最適化の糸口となる「メールの対応」からはじめてみてはいかがだろうか

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この記事の著者

伊藤 真美(イトウマミ)

フリーランスのエディター&ライター。もともとは絵本の編集からスタートし、雑誌、企業出版物、PRやプロモーションツールの製作などを経て独立。ビジネス系を中心に、カタログやWebサイト、広報誌まで、メディアを問わずコンテンツディレクションを行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2014/08/19 15:57 https://markezine.jp/article/detail/19435