クロックスのレビューマーケティング実践事例:返品率を大幅に低減
昨今、実際に商品を購入した人の感想や評価を積極的にマーケティングに活用する「レビューマーケティング」が、多くのECサイトに広まりつつある。投稿されたレビューがECサイト利用者の購買活動に大きな影響を与え、コンバージョンレートや売上の拡大に極めて有効であることがわかってきたからだ。3月11日に、エクスペリアンジャパンとシルバーエッグ・テクノロジーの共催により開催されたセミナーでは、レビューマーケティングのメリットと具体的なノウハウなどについて、4つのセッションが行われた。
まず登壇したのは、クロックス・ジャパン senior e-commerce managerの木村真紀氏。独自開発の「クロスライト」素材を使用したフットウェアが人気のクロックスでは、新商品からベストセラーまで幅広く扱うECサイトを自社で展開している。ただし、木村氏によれば、従来は返品率が高いという課題があったという。
「返品理由としてもっとも多かったのはサイズ選択ミスで、特に春夏シーズンは返品の8割がそうした理由でした」と木村氏は語る。そこで導入されたのが、ECサイトなどでカスタマーレビューの投稿と掲載を実現できる『Bazaarvoice』である。木村氏は、このBazaarvoiceを導入してすぐに「シンデレラ作戦」を展開した。
「販売しているシューズを自社のスタッフが実際に履いてみて、足のサイズに対して適切なチョイスなのか、それとも1つ上のサイズをチョイスした方がいいのかなどをスタッフが投稿しました。これにより、導入翌年の2012年にはサイズ選択ミスを理由とする返品率を約10ポイントも低減することができました」(木村氏)
さらに木村氏は「同価格帯、同配色のシューズでも、レビューが掲載されている商品はコンバージョンレートが42.8%も高かった」と、カスタマーレビューが掲載されていることのメリットを解説する。最後に「ECサイトに投稿されたレビューを、店頭販売用のスイングPOP、デジタルサイネージにも活用することを考えています」と、今後の展望を述べて講演を締めくくった。
レコメンドにカスタマーレビューを活用して、クリック率を向上
続いては、シルバーエッグ・テクノロジー 取締役 レコメンデーションサービス事業部の齋藤修氏がプレゼンテーションだ。同社はリアルタイムの行動解析によるレコメンデーションサービスなどを展開している。齋藤氏は、カスタマーレビューとレコメンドを組み合わせることにより、大きなメリットが得られると主張する。
「レビューが掲載されていることにより、お客さまは安心して商品を購入できます。これに対してレコメンドは、お客さまに興味を持ってもらえる商品を紹介するための仕組みです。このレコメンドの中にカスタマーレビューの星を入れることで、レコメンドだけを表示するよりもクリック率が1.5倍以上も向上したという事例もあります。当然、この結果は最終的にコンバージョン率の向上にもつながります」(齋藤氏)
レコメンド枠をより有効に活用して売上につなげたいと考えているなら、この齋藤氏の意見は大いに参考になるのではないだろうか。
カスタマーレビューマーケティングを実現する「Bazaarvoice」
3番目の講演を担当したのは、エクスペリアンジャパン マーケティングソリューション営業部 マネージャーの古瀬智志氏だ。エクスペリアンは世界各国でデータや分析ツールを提供しているグローバルな情報サービス企業で、国内においてはMailPublisherシリーズなどメールを中心に5,000件以上の導入実績を持つ。その同社が2013年8月に提供を開始したサービスが、カスタマーレビューソリューション『Bazaarvoice』である。
Bazaarvoiceはカスタマーレビューを容易に展開できるサービスであり、すでに2,000件以上の導入実績がある。エクスペリアンジャパンでは、Bazaarvoiceの導入支援サービスを展開しており、企画から収集、検証のそれぞれのフェーズにおいて導入企業をサポートする体制を整えている。
また、Bazaarvoiceの機能は極めて多彩だ。カスタマーレビューの投稿と表示はもちろん、商品詳細ページ内で質問や回答を共有するQ&Aソリューション、レビュー経由の売上やコンバージョンレートまでも計測できる分析機能、そしてこのプラットフォームは顧客のロイヤリティ向上を目指すアドボカシーマーケティングのために利用することができる。さらにカスタマーレビューでは画像や動画を投稿できるなどリッチ化が進められているほか、管理画面でデザインを変えたり投稿時の質問項目を増やしたりといった調整が可能というカスタマイズ性の高さも特長だ。
そして「レビューの有人監視を代行する仕組みが提供されていることも、Bazaarvoiceの大きな特長」と古瀬氏は述べる。たとえば不適切な内容が投稿された場合、有人監視を行っているモデレーターによってタグ付けが行われてアラートを発信するといったことができるのだ。
ECサイトの導入効果、平均で1回あたりの売上高が9割以上アップ
その効果について、古瀬氏は「Bazaarvoiceを利用しているECサイトの導入効果を平均すると、コンバージョン率が78%向上したほか、購入金額も7%、1回の訪問あたりの売上高は93%も増加しています。現状では有人監視や分析機能など多彩なサービスをもつBazaarvoiceと比較して、国内に競合サービスはなく、海外を見てもBazaarvoiceに匹敵するサービスはありません」と語る。
さらに古瀬氏は、実際にBazaarvoiceを導入した企業の1社である、イギリスのfigleaves.comの事例を紹介。顧客へのサイトへの参加促進とカスタマーレビューによる安心感の醸成とその後の購買におけるロイヤリティの向上、そしてコンバージョンと売上の向上を狙いとしてBazaarvoiceを導入し、大きな成果を得られたという。
「同一商品でカスタマーレビューの掲載有無を比較すると、12.5%もCVRが高いという結果が出ました。また導入前後の全体平均のCVRを比較すると、導入後は以前よりも35.27%も上昇していることもポイントです。ちなみに、カスタマーレビューが入っていない商品のCVRへの悪影響がないことも確認できています」(古瀬氏)
カスタマーレビューの導入を検討している企業の多くが不安を感じていると思われる、ネガティブレビューについても言及。そもそもネガティブレビューは全体から見ると多いとは言えず、また改善のきっかけを得られることを考えればベネフィットでもあるとした上で「お客さまの不満に理解を示し、問題解決につながる姿勢を示すことが大切」だとアドバイスを送る。
このように、豊富な実績を背景とした古瀬氏からの実践的なアドバイスに、この日詰めかけた多くの聴衆が熱心に耳を傾けていた。
コンバージョンだけでなく、顧客との関係を深めるカスタマーレビュー
最後に登壇したのは、Bazaarvoice, Inc. ジャパン・カントリー・マネージャーのブレント・森(Brent Mori)氏。同社は設立以来、市場の生の声を活用する技術とノウハウを提供してきたと説明する。そしてBazaarvoiceに投稿されたレビュー数は現状で4億件あり、米国でのトラフィック数はFacebookやGoogleに迫るほど膨大だという。
また、日本市場にも力を入れており、昨年9月に日本法人を設立してサポート体制を強化した。その目的は「お客さまの声をグローバル化」することであると森氏は説明する。
「グローバルでビジネスを展開していくことを考えたとき、日本は重要なマーケットであると認識しています。そのため日本法人を新たに設立し、さらに日本人技術者や営業担当者も配置して、手厚いサポートを提供できる体制を整えました。これらの取り組みによりグローバルなショッパーネットワークを日本市場にも展開し、お客さまの声をグローバル化していきます」(森氏)
さらに「コンバージョンだけでなく、お客さまとの関係を深めていく上でレビューは極めて有効」だと述べ、信用できるレビュープラットフォームを実現するための同社の取り組みを紹介した。
「お客さまとの関係を深めるためにはレビューの信頼性が重要であると捉えており、そのためにBazaarvoice, Inc. では400名のモデレーターによる有人監視サービスを提供しています。信頼できないレビューがそのまま放置されると逆効果になりかねないため、有人による監視は欠かせません。こうした弊社の有人監視は多くの企業に信頼されており、Bazaarvoiceが広く利用されている理由の1つになっています」(森氏)
今回のセミナーで印象的だったのは、カスタマーレビューがもたらす効果が想像以上に大きいということだ。ECサイトにおける売上向上を考えているなら、ぜひ検討したい仕組みだ。また、従来はカスタマーレビューの実現には大規模なシステムの改修が必要になるなど、ハードルが高かったが、Bazaarvoiceが登場したことで容易に導入できる環境が整ったと言える。カスタマーレビューの提供は、ECサイトにおける今後の大きなトレンドになりそうだ。