共創マーケティングには種類がある
誤解が解けた所で、共創マーケティングの種類を確認しておきましょう。冒頭で説明したとおり、共創マーケティングは、自社だけでできないマーケティングを誰かと協力して実現することです。このため、「誰と行うのか」でいくつかに分類することができます。

まず、共創を生活者と行うのか、企業などの他組織と行うのかで2つに分類できます。例えば、富士ゼロックスは「四次元ポケットPROJECT」で中堅・中小企業複数社と、一社ではできなかった新しい価値創出に取り組んでいます。このように、企業や官公庁など他組織との共創を行うことで自社だけではできないマーケティングを実現することができます。自社だけでなく、他社の技術力を使って商品開発を行う場合や、メーカーが流通からアイデアを募集するなど、他組織と協力することでそれぞれの強みを活かすことができます。
また、生活者との共創にも2つの種類があります。他社コミュニティを利用した事例として、有機野菜などの食材宅配ネットスーパーのOisix(オイシックス)は、生活者が誰でもアイデアを投稿できるコミュニティであるBlabo上で「Oisixの商品企画部」を展開。野菜のネーミングや商品アイデアを募集して、それらをマーケティングに活かしています。コミュニティを利用することで、自社の課題をそのコミュニティの人たちと共に解決することができます。
これも冒頭で触れたことですが、今増えているのは生活者と共に行うマーケティングです。本連載では主に、「自社コミュニティを使った生活者との共創マーケティング」について、事例を交えながら解説してゆきます。
目的は「ライフスタイルの共創」
なぜ今、自社コミュニティを使った生活者との共創マーケティング? と疑問を持つかもしれません。背景を理解するには、この手法をとる目的を把握する必要があります(どうしても理由が先に知りたい方は次のページをご覧ください)。
目的:ブランド体験を共有し、ライフスタイルを生活者と共に創る
手段:自社コミュニティを形成し、顧客理解(リサーチ)や商品・サービス開発、エンゲージメントを高める施策
ブランド体験とは、商品をつくったり、購入して生活者が得たかった体験価値です。例えば、無印良品の「IDEAPARK」では、新商品のアイデアを生活者から募集し、投稿されたアイデアの開発や検討の進捗を更新しています。自分が提案したアイデアや「それいいですね!」とコメントしたアイデアが本当に商品になったら、その商品はただ店に売られている商品ではなく、開発に自分が関わった思い入れのある商品になります。無印良品は”企業のモノづくりに参加できるライフスタイル“を生活者に提供しているといえます。
共創マーケティングで自社コミュニティをつくるのは、ブランド体験を共有することでライフスタイルを生活者と共に創るためなのです。そして、コミュニティに集まる人は、商品・サービスの体験を共有したい人です。そのため、購入量やロイヤルティも高いコアファンである場合が多いです。コアファンだからこそ、商品に対してひとこと言いたい・企業の商品開発担当と対話をしたいという強い思いを持っており、リサーチや商品開発の取り組みに積極的に参加してくれます。
また、コミュニティ内の投稿を見て、その商品・サービスをより一層好きになるという効果もあります。週末にFacebookで友人が遊びに行っている投稿を見て、「自分も遊びに行きたい!」と思ったことはありませんか? 同様に、商品・サービスを体験している人の写真や投稿をコミュニティで何度も繰り返し見ることで、もっとそのブランドと近づきたいと思う効果も働くのです。
実際に、飲料の共創コミュニティ内で新商品の感想を聞いてみると、「飲んでおいしかった」という投稿とともに、「みんながおいしいと思うなら飲んでみたい」というコメントも多く見られます。