多様化する取引に対応するための4つの方策
先述した、5つの方向性を踏まえて徳久氏は、多様化する取引への対応として次の4つの策を提示する。
- 指標開発と新しいビジネスモデル
- 新たな広告フォーマット
- クロスデバイス対応
- CRM発想による媒体価値の向上
「アドテクの世界はこれからも複雑化・多様化していきます。それに対応していくには、媒体社側もより多様に戦術をとる必要があります。その際、スマートフォンの普及やクロススクリーンの浸透などの変化を押さえ、動画やネイティブアドなど新しい広告を理解し検討することも欠かせません。また、現状は広告主が先行していますが媒体社もCRM発想でデータマーケティングに取り組み、媒体価値を向上させる視点も必要です」
例えば1の広告効果指標の開発に注目すると、「広告枠の表示面積の50%以上が1秒以上露出した場合のみカウントするviewable Impressions(※)が普及してきている」と徳久氏。そのため、Yahoo!やMSNなどで、ビューアビリティーをベースにした取引手法が登場している。
また、動画広告では視聴完了数や視聴時間を指標にする流れや、バナーにマウスオーバーして大きい広告が表示され3秒が経過するとエンゲージメント発生とみなす考え方も出てきている。「CPX(Cost per Exposure)、CPE(同Engagement)などでの課金モデルが登場しています。指標開発はビジネスモデルとセットで行うことが、これからも大事になるでしょう」
※MRC(Media Rating Council:メディア調査会社の監査や認定審査を行なう米国の業界団体)の定義による
媒体社側が注力すべき3つの領域とは
最後に徳久氏は、これから媒体社側が注力すべき領域を提示。それは、データドリブン、動画、スマートデバイスの3つだ。データドリブンへの対応を噛み砕くと、ホリスティックアプローチが可能なアドサーバーや、多様なプログラマティック取引に対応するSSP、自社オーディエンスを媒体価値に反映できるDMPなどが必要になる。動画やスマートデバイスの点では、コンテンツの充実や、ネイティブアドなどのコンテンツ親和性の高いフォーマットへの対応、レスポンシブデザインによるコスト減とユーザビリティーの両立などの必要性が提示された。
「ポイントは、ユーザーにとって気持ちのいいもの=ユーザー体験の質を上げるという視点」と徳久氏。最新のテクノロジーを押さえながらも、ユーザーありきで考えることの重要性が示唆された。