異業種だからこそ見える、贈り手と受け取り手のニーズ
福田:アスカネットは写真の会社と思われているかもしれませんが、1992年から自社サーバーで、BtoBの写真転送サービスをやっているんですよ。ネットビジネスがどこまでを指すのかはわからないけど、ネットを使ったビジネスには早くから着手しています。
ギフトネットコムではじめてEC事業に参入するわけですが、はじめてだからこそ業界の常識に縛られずに、「こうなったらいいな」を実現できるんじゃないかな。贈り主や受け取り手の気持ちがわかるというか。ゴールが明確になっていれば、ネットの技術などの問題はコツコツとクリアしていけますから。
先ほど、贈り主が設定した価格ごとに表示される商品が変わると言いましたが、気に入ったものがない場合は、それよりも下位層にある商品も表示して、いくつかに分割して受け取ることも可能です。
この仕組みは、紙のカタログギフトでは難しいと思います。このアイディアは途中で出てきたために、制作会社さんを悩ませたようですが……。
辻野:技術的実現性はいかようにもなるので、やはりユーザの使いかたを先読みした「アイデア」が重要ですね。
百貨店の売上管理や在庫管理は、いまだに古いシステムのままだったりしますよね。販売傾向や在庫状況がリアルタイムで把握できないような場合もあるのに、そこにあまり危機意識もなかったりする。
でも今、スマホの時代でしょう。大がかりで重たいシステムを使わなくても、バーコードをスマホで読みとるなどで、手元の端末を使って簡単に売上管理や在庫管理ができる。それをクラウド上で管理すればさらに便利になる。そういうアプリを作れば、結構需要があってビジネスになるなと思って調べてみると、ある倉庫会社さんがすでにそのようなアプリを販売していました。
たいていの人は、多少の不便があっても、「仕方ないよね」で我慢したり済ませてしまう。でも、起業家タイプの人は「ワンチャンスあるな」と思う。そこが違いですね。
福田:もちろん、すぐにうまくいくわけではないですけどね。アスカネットも、フォトブックのビジネスが軌道に乗るまでは、かなりの金額を投資して、5年くらいかかりましたから。
ただ、続けるうちに、今回の辻野さんとのように、思わぬ出会いというのはありますよね。そうした出会いから、いろいろと変えていく。ギフトネットコムも、現状で完成形だとは思っていません。世に出して、使っていただいて、変えていく。その繰り返しです。
辻野:インターネットのビジネスは、思いついたらすぐにやってみるというのが時代のスタイルですよね。じっくり時間を掛けて考えたサービスを満を持して出すというより、 生煮えの段階でリリースして、使ってもらうことで気づきが生まれて、サービスに反映する。それを高速で回していくスピードの中から、グロースハック的な奇蹟が生まれたりするのだと思います。
見切りが速いのは重要なことで、私がいたGoogleなどは実に見切りが速い。しかし、一方で、事業は5年、10年続けてなんとかなるというものもある。速いのも素晴らしいことですが、新しい事業を成功させるには、スピードと忍耐力、両方が必要なのではないでしょうか。