モバイルでの購買意欲が突出して高い、アジア圏のスマホユーザー
日本のモバイル広告市場は、2013年に1,500億円を突破。2016年には倍の3,000億円に達すると予測される中、モバイル広告でのアプローチは企業にとって最重要の課題のひとつだ。
日本には3年前に参入し、PCインターネットの領域では「リターゲティング広告といえばCriteo」というイメージが定着しつつあるCRITEO株式会社でも、この1~2年でモバイル広告に非常に力を入れている。2005年にパリで創業した同社は、現在130か国以上で事業を展開。1,100人の従業員の4割をエンジニアが占めており、他社の追随を許さない技術力の高さを強みに、クライアントのサービス継続率90%以上を誇っている。
アジアパシフィック地域では、東京を本拠地として2011年に事業を開始。以降、四半期ごとに、グループの伸長にAPECの占める割合が増している状況だ。アジアへのサービスローンチから参画し、現在は日本担当マネージングディレクターを務めるCRITEO株式会社の鈴木大海(おおみ)氏は、「欧米などと同様に、アジアでも多くの広告主の目下の課題となっているのが、モバイルへの対応」と語る。
「eMarketer.com掲載の調査によると、APECのスマートフォンユーザーのうち42%が『モバイルでの購買経験があり、かつ今後も使いたい』と答えています。これは他の地域と比べても突出して高く、大きな勝機があることがわかります」(鈴木氏)
日本におけるモバイルでのCVは35%超
さらに、Criteoが2014年7月に実施した「コンバージョン数のデバイス比率調査」によると、日本は主要各国の中でモバイルでのコンバージョンが35.3%と最も高かったという。こうしたユーザーサイドのモバイル購買行動の活発化を受けて、日本でのモバイル広告の進化は日々加速している。PCインターネットで高いコンバージョンを上げている同社のモバイルへの取り組みは、その最先端と言える。
Criteoのリターゲティング広告商品「Criteoパフォーマンスディスプレイ」は、広告主のサイトにJAVAスクリプトのタグを入れ込むことによって、ユーザーの行動を特定。画一的なバナー広告ではなく、媒体の広告の仕様に合わせてバナーを自動生成し、クリエイティブの効果を最大化する。ユーザーが直近で閲覧した商品に、精度の高いレコメンド商品を加えるのも、コンバージョンを引き上げるポイントだ。
「Criteoは“最適な商品を、最適なユーザーに、最適なタイミングで”提供しています」と鈴木氏は強調する。広告主のサイトの隅々にまで埋め込んだタグを通して得られるデータを元に、以下の3つの差別化要因によって、きわめて高いパフォーマンスを実現する。
- 高度なエンジンとアルゴリズム
- 自動で最適化される多様なダイナミックバナー
- 豊富な配信ネットワーク
3つの差別化要因でコンバージョンを徹底して追求
まず、システムのコアバリューを担うエンジンとアルゴリズムは、前述の厚いエンジニア層によって、日々進化を遂げている。例えばファッションEC系の広告主の事例では、CTRがモバイルでは0.81%、PCでは0.84%。CVRはモバイルで5.12%、PCで4.01%と、一般的な同業態での平均よりも高い数値が上がっている。「タグをサイトの隅々まで埋め込むことで、どのユーザーがコンバージョンしているのか、どのような行動をとったユーザーならコンバージョンしやすいのかまで分析できます」と鈴木氏。
さらに現在、同社独自の最適化の仕組み「コンバージョンオプティマイザー」がバージョンアップし、よりコンバージョンしやすいユーザーに絞ってアプローチできるようになった。その方法とは、可能性の低いユーザーはインプレッションから排除するのだ。これにより、モバイルでも大幅にコンバージョンを高めることが可能になった。
次に挙げられたダイナミックバナーとは、媒体に合わせてバナーを自動生成する仕組みを指す。それも、同一媒体内でも広告主が入稿した素材を元に、レイアウトやカラーセットをさまざまに組み替えて、より効果のあるクリエイティブを自動的に選択していくことが大きな特徴だ。その組み合わせは、入稿素材が特別多くない場合でも、数十万通りに上る。
複数キャンペーンを横断して一括入札できる「Engine Optimized Segment」
1つ目、2つ目の要因によって、モバイル広告においてもコンバージョンの向上に徹底してこだわっている。それに加えて、3つ目に挙げられた豊富な配信ネットワークによって、リーチの面でも「常に努力しています」と鈴木氏。実際にCriteoのリーチ率は非常に高く、日本のインターネットユーザーの約10人に9人が、1カ月の間に1回以上Criteoの仕組みによる広告に接しているというデータが発表されている。
これらの仕組みをモバイル広告においてもいち早く取り入れた企業は、すでに日本市場で大きく成果を伸ばしている。例えば最近、いくつかの企業で高い効果を上げたのは、入札を最適化する「Engine Optimized Segment」という機能。キャンペーンを細分化すると、ユーザーごとのコンバージョン率の分析母数が縮小して、入札が難しくなるが、この機能を使うと複数のキャンペーンを横断して一括で入札することで、コンバージョンしそうなユーザーをより広範囲で分析可能となる。
また、クリエイティブの面でも、Criteoならではの仕組みによって大幅な改善がもたらされている。例えば「Darwin」というテンプレートを活用した組み替えでは、最もCTRが上がったパターンで25%もの向上が見られた例もあるという。
モバイルマーケティングにおける4つの課題
こうした状況を踏まえて、鈴木氏は現時点でのモバイルマーケティングにおける課題として、以下の4つを提示する。
- Webとアプリの両方に気を配る必要がある
- ユーザーマッチング/ターゲティング手段が多様
- ターゲティングできたとしても、CVRが低い
- PCとは勝手が違う
まずは、モバイル特有の事情である、Webとアプリの両立について。特にアプリは、ダウンロード後の90日以内のリテンション率は35%以下といわれ、継続的に活用されづらいのが難点だ。また、モバイルWebは相対的にCTRが低いとされるのも、解決が待たれる部分だという。
2つ目は、Webとアプリでユーザーのマッチング方法が異なり、クッキーが効かないアプリではユーザー特定が難しいこと。iOSについてはサードパーティーのクッキーが機能しないので、長らくリターゲティングが難しい状況にあったが、「この点は2014年の春から、ユーザーが広告表示を認証するステップを経ての配信を可能にしました」と鈴木氏。
3つ目は、ターゲティングが実現しても、モバイル特有の事情から、PCほどのCVRが見込めないこと。例えば画面の小ささによる情報量不足、入力のしづらさ、移動中に使うために通信環境の揺らぎが多く、コンバージョンに至る前に通信が途切れてしまう、といった要因がある。
そして4つ目は、デバイス・ブラウザ・アプリの重複利用があったり、Flashが使えなかったりと、PCと勝手がかなり違うことだ。
総コンバージョンの22~26%が、異なるデバイスによるもの
こうした複数の課題の中で、特に現在はユーザー特定に注力。ユーザーマッチングの方法には、ひとつはユーザーを完全一致させて検出すること、もうひとつは統計的推計によるマッチング、という2種類の向性がある。前者にはプライバシーの問題があり、後者には誤判定やオプトアウトのマネジメントが課題になっているが、「これらには細心の注意を払っていく」と鈴木氏は述べる。
Criteoは事業を開始して9年ほどだが、この1~2年は特にモバイルに注力してきた。2012年にFLASHからHTML5へ移行し、翌年にアプリ内でのユーザー行動を追跡できるソリューションベンダー「AD-X Tracking」を買収。さらに2014年、同システムをベースとしたアプリ内広告配信を開始した(関連記事はこちら)。それに次ぐ、前述のiOSへの配信開始と、着々とモバイルリターゲティング広告の可能性を広げている。
最後に鈴木氏は、特筆すべきデータを提示。それは、同社で国内の複数広告主の1千万以上のクッキーを調べた結果、「総コンバージョンのうち22~26%がCriteoの広告閲覧後に“違うデバイスで”コンバージョンしたもの」だということだ。PCで閲覧後にモバイルで、あるいは職場のPCで閲覧後に自宅PCで、などのクロスデバイス状況がはっきりと示された。
「何らかのカギを得ることで、ユーザーをマッチングさせた上でこうした行動を把握し、クロスデバイスでのキャンペーン展開を近い将来に可能にしていきます」と鈴木氏。Criteoは、モバイル市場で成果を上げるための大きな味方として、ますます進化を続けそうだ。