目を見張るキュレーションメディアの伸長
変化のスピードが激しいネットの世界においても、昨年末ごろから今年にかけてのキュレーションメディアの広がりには、とりわけ目を見張るものがある。各社、特徴の絞り込みやテレビCMなどの大々的な広告施策を経て、現状ではすでにプレーヤーが選別・確定されているというのがおよその見方だろう。主立ったものは「Antenna」「Gunosy」「SmartNews」「NewsPicks」の4つだ。
なかでも約300のメディアと正式に契約を交わし、画像をベースにしたUIで情報量・質ともにこだわった配信で人気を集めているAntennaは、10月時点で約400万ユーザーにまで成長。運営元の株式会社グライダーアソシエイツ 取締役 荒川徹氏は、キュレーションメディアの爆発的ともいえる拡大について「スマートフォン(以下、スマホ)市場の伸長が大きく影響している」と語る。
昨年後半、国内のスマホ所有率は50%を超え、この8月の調査では57.3%となった。年齢別では、15~19歳で85%ほど、以降の年代も緩やかに下がるものの50代でも約45%と高い。「特に注目すべきは、現在5~6割の所有率となっている30代から50代のシフトが進んでいることです。若年層のメディア接触状況がスマホの登場によって大きく変わったように、これからは少し上の世代でそれが起こります」と分析する。
約6割が「検索エンジンでは自分に合った情報が得られにくい」「インターネットで出会いがない」
デバイスの進化も著しい。今のトレンドは画面が大きくなる傾向があり、通信環境の改善もあって、動画視聴が進んでいる。一方で、楽しめるコンテンツの選択肢が増えたからこそ「小さなスマートフォンの限られた画面上でほしい情報にすぐにたどり着きたい」というニーズも高まっている。そこへマッチしたのが、まさにキュレーションメディアだ。「能動的に検索を行うものの『自分に合った情報が見つけにくい』と、検索エンジンに不満を持つ人が実に57.7%もいるのです」と指摘する。
「キュレーションメディアは、それぞれの媒体を超えて記事単位で情報を集めて提供します。それが、スマホの画面サイズと操作性では複数のサイトを訪れるのに限界がある、という状況に受け入れられました。このように、キュレーションメディアの拡大にはスマホの浸透が密接に影響しています」(荒川氏)
加えて、ユーザーに合わせて情報の配信を最適化する点も、利用が定着した要因となっている。情報の集約・最適化という意味合いで使われる“キュレーション”を冠したこのメディアは、約4年前にアメリカで誕生。現在は「Flipboard」や「Pinterest」がグローバルで浸透し、代表格となっているほか、国内でもアートや旅行といった特定の切り口で情報を扱っているキュレーションメディアも広がりつつある。
「日本では冒頭に挙げた4つを中心に、書評をまとめている『HONZ』、さまざまなECサイトから洒落た商品を集めた『FANCY』なども人気です」