One to Oneマーケティングは顧客への「おもてなし」
分析テクノロジーの進化やSNSなど新しいネットワークサービスの発展に伴い、マーケティングの技術・手法は近年めまぐるしく変化している。ところがこうした中でも、20年前から提唱されてきたのに、今なお色褪せていないマーケティング概念がある。それがOne to Oneマーケティングだ。
「データ分析」をコアコンピタンスに事業を営むブレインパッドは、10年前の企業設立以来、国内トップクラスのデータサイエンティストの分析力を背景にOne to Oneマーケティングに取り組んできた。それでも、同社プロダクトマネージャーの林隆司氏は「長年やってきても、『One to Oneマーケティングは難しい』と常に感じています」と語る。
理由は何か。「顧客ニーズの多様化と変化の早さ、増え続ける情報量に、企業は翻弄されています。情報の中には、役立つものもあるけれど不要なものもあり、『どのデータを使って何をしたらいいか分からない』という状態に疲弊しているのです」林氏は説明する。
そもそも、One to Oneマーケティングとは何かを定義できていない企業も多い。ブレインパッドでは、One to Oneマーケティングの基本を、「個々の顧客に合わせたアプローチをする『おもてなし』」だと考えている。心地よいおもてなしを提供するには、顧客を知ることから始めなくてはならない。その上で、その顧客に対して最適なコミュニケーション=パーソナライズドコミュニケーションを取る必要がある。これにより顧客ロイヤルティを向上し、ひいては顧客ライフタイムバリュー(LTV)を上げていく。これがOne to Oneマーケティングだ。
顧客を知るために必要な2種類のデータ
では、顧客を知るにはどのようなデータが必要なのか。林氏は、顧客の購買データやWebの行動ログ、メルマガの反応などの「行動と動機」に関するデータ、そして性別や年齢、居住地、企業側のセグメンテーション情報といった「生活と態度」に関するデータの2種類を挙げる。顧客の行動パターンや過去の履歴を基に、「何を欲しているか」「なぜそれが必要なのか」を分析し、さらに性別や年齢などのデモグラフィック情報によって顧客についての理解を深めていくわけだ。
だが、顧客への理解を深めただけではOne to Oneマーケティングは完成しない。大切なのは、この分析結果を踏まえて顧客とコミュニケーションを図ること。これによって、初めて自社の付加価値が高まる。林氏は「ファストフードや食券制の飲食店と、一流の料亭の違いはここにあります」と説明する。「顧客の指示に応えるだけではなく、そのニーズを踏まえて適切にコミュニケーションを取れることが、高い付加価値を生み出しているのです」
適切なコミュニケーションの実現に向けては、大きく2つの軸で考えることができる。1つは「コンタクトを取るタイミング」、もう1つは「オファーの内容」だ。タイミングが良くても提案がニーズに合わなければ意味はないし、その逆もしかり。さらにきめ細かく考えるなら、「量(頻度)」もポイントになるだろう。つまり、分析とコミュニケーションの両方があって初めてOne to Oneマーケティングが実現できるのだ。以上を踏まえるとOne to Oneマーケティングを実現するためのIT要素は、次の2つに落とし込める。
- 顧客を知るための「アナリティカルCRM」
- 顧客とのコミュニケーションを実行する「オペレーショナルCRM」
前者はBIや統計解析ソフト、データマイニングツールなどが挙げられる。後者は、SFAやメール配信システム、キャンペーンマネジメントツールなどがある。
この2つのIT要素を連動させることでOne to Oneマーケティングを実行していく。では、具体的にどうすればいいのだろうか。次のページから、ブレインパッドで実際に取り組んだ実例などを基に、One to Oneマーケティング実行のポイントを説明していく。
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