以前の反省から見えたネイティブ広告の使い方
「サイトで用意しているものが読み物コンテンツなので、PVの増加はもちろん、コンテンツへの滞在時間と一訪問あたりのPVを絶対下げたくなかった。それに、いくつかの記事を読んでもらいたい」そう考えた北見氏は実現する方法を模索した。そこで思いついたのが、MY LOHASへのネイティブ広告(ここでのネイティブ広告は、インフィード型のいわゆる記事広告)の出稿だ。
「実は昨年、3月12日をサイズの日として記念日協会に登録した際にも、同誌に記事広告を出稿したんです。その時に、導線をもっとよく練れば何か使えるときがあるな、と感じました。そして、今回がその時だと思った」
前回の出稿で気付いたことがある。それは、ユーザーに記事広告から自社サイトへ来てもらうためには、自社サイトにもそのためのコンテンツが必要だということだ。サイズの日の出稿時、自社サイトには記事広告に対応したコンテンツを用意していなかった。その結果、出稿した記事自体は閲覧されたが、サイト流入は期待通りではなかったという。その原因を「入口と次のページを用意できなかったから」と北見氏は考えた。
「そこで今回は、MY LOHAS編集部さんと相談して色々な企画を考えました。ですが、これは!というものはなかなか出て来ません。そんな中、最後の最後に「こんな案もありますけど……」という感じで頂いたアイディアが、パンツになりきる小説だったんです」北見氏は会議の場で、その案を即決で採用した。何故なら、ワコールの施策方針とコンテンツマーケティング戦略にマッチしていたからだという。
「当社のWEBサイト運営には商品を多く知って頂くという方針と、下着の脳内シェアを上げるという方針がある」と北見氏。脳内シェアとは何だろうか。「例えば、お金が手に入ったら何を買う?という質問ありますよね。その時に出てくる答えは家や車、服が多いと思います。その選択肢に下着も入れたい」これが下着の脳内シェアだという。しかし、下着の脳内シェアを向上するには、普段から下着のことをもっと考えてもらう必要があるだろう。その点、パンツになりきって小説を書く・パンツ小説を読むということは、その間はパンツの気持ちになるということだ。「この企画なら、ユーザーが下着のことを考える時間を無理なく創出できるんです」
コンテンツマーケティング戦略の視点については、どのような部分とマッチしていたのだろうか。「記事広告で小説を1本用意して、当社のサイト内で違うライターが小説記事を書く。そうすると、記事広告からサイトにリンクを貼って誘導しても、ユーザーは違和感なく記事を読めます。さらに、小説の募集をすることで、ブログテーマの提供にもなる。そこからも情報は流れて、当社のサイトに来てくれる人がいるでしょう。ここまでの情報の拡散と流入の様子がイメージできました」
目指すはオーガニックでの話題化
今回の企画を実施するにあたり、北見氏はTwitterのトレンドワードにオーガニックでパンツの日を絶対に入れるという目標を持っていたという。「広告枠を買わないで、自然に盛り上がりを作り上げることを意識しました」と北見氏。「下着は「私これ使ってる」とはオープンに言えない商品。だから、自分のことではなく、ワコールが提供した企画として他人事化することで、ネタとして気軽に扱ってもらえる。そこでシェアを増やすというのが肝でした」
自身がTwitterやFacebookのヘビーユーザーだという北見氏。情報の拡散時に、内容によってソーシャルメディアを使い分けたという。「Facebookには「私はパンツ」よりもパンツフラワーやリアルイベントについての情報を多く、Twitterには逆に「私はパンツ」の情報を載せました」と北見氏。その結果、狙い通り8月2日にTwitterのトレンドワードにパンツの日が登場した。
