ビッグデータとPDCAを用いた最適化
これまでの連載では、獲得系プロモーションにおけるオーディエンス拡張と、ブランディングのためのオーディエンスプランニングという二つのテーマについて考えた。しかし、ビッグデータの活用シーンはそれだけにとどまらない。そもそもどういう人たちが自社のターゲットユーザーなのか、実施中のキャンペーンをどう改善していくかという視点もある。DMPに蓄積されたデータを分析しPDCAを回していくことで、これらの問いに答えるための有益な情報を得ることができる。
今回は、PDCAサイクルを「Plan(計画)→Do(実行)」と「Check(評価)→Action(改善)」の2つのステップに分け、広告配信領域におけるPDCAを考える。なお、分析結果のイメージが湧きやすいよう、ある自動車メーカーのケースを例としてとりあげる。
「P→D」DMPデータでオーディエンスの特徴をつかむ
「Plan→Do」のステップでははじめに、広告主のオウンドメディアに訪問したユーザーがどのような人たちなのか、DMPで集めたオウンドメディア外のWeb上の「特徴的な行動」データと紐付けて把握する。これは、広告主が持つデータからだけでは読み取れない個々のデータを、DMPのデータに照らし合わせて多面的に見直すことで、見落としや新たな発見がないかをデータから読み解いていくものだ。
下の図は、自動車メーカー(広告主)が持つ「資料請求を行ったユーザー」が、他のウェブサイトなど広告主のオウンドメディア以外でとった行動をプロットしたものだ。興味のある車(資料請求を行った車)のタイプによりユーザーの行動に特徴が見られることがわかる。
赤く囲った部分は広告主の社内に蓄積された「スポーツカーの資料請求を行ったユーザー群」「コンパクトカーの資料請求を行ったユーザー群」だ。青い点はそのユーザーの行動を表している。例えば左上ののスポーツカーのユーザー群は「車のパーツ検索」や「モーターショー関連のサイト閲覧」といった趣味的な行動が特徴だといえる。一方、右下のコンパクトカーの場合は、「ファミリーレストランの検索」や「イベント情報の閲覧」といった、より一般的な行動が見られる。
こうして把握したユーザーの特徴と、マーケターのこれまでの知見を総合してオーディエンスプランニングを行い、実際の広告配信であるDoの段階へと進んでいく。詳細についてはこれまでの連載で紹介しているので、そちらを参照してほしい。
「C→A」“クリックの質”を評価する
広告配信をはじめて一定期間後に配信状況を分析し、配信の最適化を図る。いわゆる「Check→Action」のステップに入る。広告が適切なターゲットに適切なクリエイティブで届けられているかどうかをCheckする方法として、広告をクリックしたユーザーの前後の行動を確認するというやり方がある。
まずは、「コンパクトカーA」の広告をクリックしたユーザーの行動を例にとって考えてみよう。広告主は上述のPlanのプロセスで「コンパクトカーA」のメインターゲットは「子育て世代の男女」という仮説を導きだし、広告配信を行った。
クリック前には、「おでかけスポット情報の閲覧」や「育児情報の検索」などの行動が見られる。これが「デートスポット情報の閲覧」や「バレンタインデーのプレゼント検索」などであれば、独身世代もコンパクトカーAのターゲットになりうる可能性があり、ターゲット選定に漏れがある可能性も出てくる。
また、クリック後にはコンパクトカーの情報を比較検討する行動が見られるが、例えば広告に登場したかわいい犬について検索を始めるなど、車の購入とはかけ離れた別の行動が見られる場合には、ランディングページなどのオウンドメディアや広告クリエイティブを、車の機能性や価格にフォーカスした内容などに変更すべきかもしれない。このようにユーザーのクリック前後の行動を分析することで、次の最適化へのActionの糸口がつかめるわけだ。