位置情報との掛け合わせ
アプリの中には、オーディエンスの位置情報を取得してサービスを行うものがある。位置情報は一般的に緯度経度情報として表示されるケースが多い。これらを市町村区に対応させることで様々な活用が考えられる。例えば、次のようなオーディエンスの軌跡が得られたとしよう。
平日朝~夕方には東京丸の内近辺にいることが多く、平日夜間は東京都世田谷区にいて、休日の日中には千葉県市原市に数時間滞在している。また、このオーディエンスについて、ECサイトでゴルフ用品を閲覧していたというweb視聴行動が得られた。
このオーディエンスは、世田谷在住で丸の内近辺に勤務地があると推定され、比較的富裕層であることも推定できる。さらにweb視聴行動を掛け合わせると、このオーディエンスが市原市に滞在したのは「ゴルフをするため」ではないかと推定できるようになる。

位置情報しか得られていないオーディエンスの場合も、先ほどのWebブラウザとアプリの例と同様に、ゴルファーオーディエンスとの位置情報の類似性から、同様にゴルファーであると判定するようなオーディエンス拡張(location look alike)も実現可能になる。
CRM情報との掛け合わせ
これまでもプライバシーに配慮し匿名性を確保しながら、Web行動とCRM情報を掛け合わせた分析が行われてきた。しかし、あくまでも既存顧客の分析に留まっていた。
今後は、既存顧客の購買情報を活用してLTV(Life Time Value)を把握し、それにオーディエンスデータを掛け合わせ、マーケティングコミュニュケーションを設計するというような活用が予想される。例えば、LTVが高い既存顧客と類似したweb行動を取るオーディエンスは、同じ様にLTVが高いと予想できる。オーディエンス拡張を組み合わせることで、コンバージョン確率が高そうなオーディエンスの中でも、特にLTVが高いと予想される新規顧客(下図の②)候補を探し出し、積極的に予算を配分していくという戦略を打つことができる。

更なるデータソースの広がりと可能性
ここまで紹介したデバイス別の行動情報やアプリ情報、位置情報、CRM情報以外にもデータソースは多様化していくだろう。例えば、ウェアラブル端末から取得できる情報、車載センサーから得られる情報、iBeaconを活用した来店履歴情報が考えられる。
このようにデータソースが増えていくと、その掛け合わせのパターンも増えていく。今後マーケターは、数あるパターンの中から「自社の問題解決に必要なデータソースの掛け合わせ」を考えていく必要があるだろう。
(ビッグデータ解析部 シニアデータサイエンティスト 漆畑充)