ブログが出てきて、消費者が自由に発信できるようになった今、その「生の声」の質が大事になっています。誰のどんな声を聞き、それらにどう対していくのか。オンラインマーケティングから、ビートルズまで、喜山さんの「聞く技術」そして「読み解く技術」に迫ります。前編はこちら。
遊談相手
喜山 荘一 生の声マーケター
1963年、与論島生まれ東京工業大学卒業後、株式会社西武百貨店経て1995年、マーケティング企業、株式会社ドゥ・ハウス入社。1996年、富士通との共同企画、日本初のeメールマーケティング事業iMi(いみ)に参画。同社常務取締役を経て、2007年、出版マーケティング事業開始。消費者の生の声に基づく商品開やクチコミによるマーケティングを推進している。著書に、『Eメールマーケティング実践講座』『聞く技術』『ウェブコミ!』『買う気にせる3秒ルール』『10年商品をつくるBMR』(編著)などがある。最新刊は、『なぜ、キリン・ザ・ゴールドは求められるのか?』産能マネジメントスクール「eメールコミュニケーション実践」の講師も務める。
なぜ「生の声」にこだわるのか
四家
流通やメディアを挟んで間接的に消費者と接していた企業が、ネットでダイレクトに消費者につながってしまった。実際いろんなコンフリクトも起きた。おいおいどうするんだと。企業の担当者が消費者に一人称で語りかけることのできるサービスであるiMiネットの登場にはそんな背景もありますね。
喜山
そうですね。企業といえども、結局、個人対個人ということをネットは明らかにしました。
四家
96年から2000年にかけてiMiで培ったノウハウをまとめられたのが『図解eメールマーケティング実践講座』で、富士通との事業提携が終了してiMiをお嫁に出した(?)あとの喜山さんの実践を基にしたのが『一億総マーケター時代の聞く技術―「明日の売れ筋」をつかむプログラム』なのかなあと思いました。こちらは2005年ですよね。この本もずいぶんノウハウ開陳されてますよね
喜山
それは過分な整理ですが、はい、そんな面はあります。eメールマーケティングを、eメールを使ったコミュニケーションというように捉えて、リサーチ、問い合わせ対応やコミュニティまで領域を広げてみました。本を書いて手持ちの駒を出すと、何か見えるんじゃないかという期待があります。いまは、自分の活動を「生の声マーケティング」という言い方で打ち出していこうと思っています。
四家
そのあたりはぶれがないですよね。96年から。
喜山
気づいたら、なんですけどね。
四家
ツールはどんどん増えて、企業と消費者とのコミュニケーションの接点も増えたけど、喜山さんは最初から消費者の生の声をベースに、実践を元にマーケティングの方法論を確立し続けている。
喜山
本当はネットに限らず、表現された声であれば、ソースになると思います。確立は、これからのテーマです。
四家
なるほど。あえて「声」という言葉にこだわるのはそこですね。
喜山
「生の声」、いうところの「定性情報」ですね。それをもとに、商品ベネフィットと消費者ウォンツを明らかにすること。と、その方法論を作りたいです。企業の表現は「商品」、消費者の表現は「生の声」です。
それから「専門家が書き消費者が読む」のではなく、「消費者が書き専門家が読む」というような、書き手-読み手の関係を作りたいな、と。そうすると、ネットのインタラクションというフローが生成するものが、その結晶としてアナログの書籍やモノになるという関係式が見えるような気がします。
四家
なるほど。eメールマーケティングは、最初は低価格で効率的な情報訴求手段・プロモーション手段として脚光を浴びましたけど、喜山さんとしてはむしろ「消費者に書いてもらう」ことを促進したことにポイントがあったわけですね。
喜山
そう思います。消費者発信の促進です。それがブログというツールが出てきて、消費者は勝手に発信するようになった。ここで、「生の声」の質が、大切になってきます。
四家
誰のどんな声を聞くか、ですよね。
喜山
はい、そして、どんな内容の声かということですね。
四家
はいはい。このあたりはいま、まだ混乱しているところだと思うんですよ。可能性を感じている人は多いものの。
喜山
そうかもしれないですね。ブログ、書きゃいいってもんじゃない、みたいな。