「共創コミュニティ」は創刊30周年目のチャレンジ
今回は、共創コミュニティが他社とコミュニティ会員のハブとなっている事例をご紹介します。『オレンジページ』は、2015年6月に創刊30周年を迎える人気雑誌です。「女性の購買行動に影響を与える雑誌」の調査で1位を獲得するなど、既に読者と良好な関係を築いています。2015年3月には新たな試みとして「オレンジページ サロンWEB」(以下、サロンWEB)をスタートしました。5月末時点で2,500名以上の会員が集まり、密度の濃いコミュニケーションの場所となっています。
同サイトは、リアルタイムに消費者の声を聞き、双方向で意見を取り入れることを目的としています。さらに、読者の関心にマッチする他の様々な企業とのコラボによるオンライン/オフラインの企画も実施されており、企業と消費者をつなぐ場所としての期待も高まっています。今回はサロンWEBのコミュニティを運営する髙谷朋子氏にコミュニティ誕生の背景と取り組みをうかがいました。
――オレンジページでは、創刊当初からアンケートや座談会、イベントなどの形で読者と対話する機会を用意されています。今回、さらにオンラインの場でコミュニティを作った理由は何でしょうか?
髙谷氏:読者とのつながり方は、時代とともに電話、郵便、メール、そしてネット上のアンケートと変わってきています。この変化の中で、読者からの声を受けて返すというキャッチボールがどんどん速くなってきている。オンラインのコミュニティは、レスポンスが一番早く肌感があります。
また、これまで読者から「自分たちの声がどう活用されているのか」「アンケートの結果はどうなったのか」と訊ねられることが何度もありました。もちろん、いただいた声はすべて目を通して、適宜誌面に反映しています。ですが、ここを改善しましたとは明言していなかった。そのため、読者の立場からすると自分の声が役に立っていることを、実感できなかったのだと思います。
そこで、オレンジページのコアな読者の声を活かす場を用意して、当社の力になってもらいたい。読者に声が活かされていると感じてもらいたい、というのがサロンWEBの出発点です。
さらにもう一つ、視点があります。オレンジページの読者は、アンケートの自由回答欄に、ご意見をびっしりと書いてくださるかたが多いのです。また、企業に対しても、意見を伝えたいと考えているかたが多い傾向にあります。私たちは読者とはそういうものだと思っていたのですが、雑誌広告クライアントと話す中で、それがとても稀有で価値あることだと気づきました。ここ数年は、クライアント企業から広告出稿案件以外で、読者座談会やモニターに協力を依頼されることも増えてきました。
このような経緯から、オレンジページは読者と企業を直接つなぐこともできるのではないか。企業と生活者がお互いに思いを伝え合える場があれば、双方ともハッピーになれるのではないかということで、共創コミュニティを企画しました。
オレンジページと読者を結ぶ価値観
――なぜ会員の方はアンケートに答えてくれるのでしょうか
髙谷氏:以前、アンケートでモニターをする理由について聞いたことがあります。結果、「アンケートに答えていると自分が何をしたいかがわかる」「自分の声がオレンジページで発信されて企業や社会の役に立つとうれしい」という声をいただきました。
「人の役に立つ」というのは、オレンジページのベースとなっている価値観でもあります。家事や料理のちょっとしたアイディアやヒントを情報として誌面に出すことで、誰かの役に立ちますよね。そんな雑誌の価値観に賛同していただけるかたが、読者になってくれている。ですから、オレンジページに対しても、声をくださるのだと思います。
――これまで、読者とはどのような関わり方をしていたのですか?
髙谷氏:例えば、『オレンジページ』で毎号実施しているアンケートに、「誌面のとおりに作ったのに、うまくできなかった」というような意見があると、そのかたに直接電話してお話をうかがってきました。直接話すことで、最後には満足されて「ありがとう」と言っていただけます。
この話をすると驚かれるかたも多いです。ですが「困っている人を助ける、聞かれたら答える」というのは、私たちにとっては当たり前のことです。読者もそこに共感してくれていると考えています。