裏側強化その1:EC事業者がおさえておきたい決済のこと
強化したいECの裏側、第一弾は「決済」。大手ECサイトがLINE Payを続々導入、Apple Payの上陸も待たれています。そして5月11日からは、「Amazonログイン&ペイメント」の提供も始まりました。
新しい決済が、ECに何か変化を起こしてくれるのでは。そういった期待を込めて、このテーマを設定しました。ご講演いただいたのは、カード情報のポータルサイト「ペイメントナビ」を運営し、決済の最新動向を発信しているTIプランニングの池谷貴さんです。
ざっくりまとめると……
- 日本の決済利用は、海外と比較すると、「コンビニ決済」の利用度が高く「PayPal」が低め
- EC事業者がおさえておきたい主要な決済は7つ
- 「Amazon ログイン&ペイメント」のメリットは送客と利便性
- ECなど非対面決済の不正には、認証強化で対策
EC事業者がおさえておきたい、主要な決済手段として以下7つをピックアップ。それぞれの現状、メリット、課題などを解説した。
- クレジットカード
- 携帯キャリア決済
- コンビニ決済
- ウォレット決済
- プリペイド決済
- IC決済
- 外貨決済
日本の決済、特徴は「コンビニ決済」が強いこと
「1.クレジットカード」については、諸外国と同様によく利用されている。日本の特徴としては、「3.コンビニ決済」の割合が高い。また、「PayPal」は他のアジア諸国同様、利用頻度が低めであるが、近年では中小規模のネットショップでの利用が伸びている。
「2.携帯キャリア決済」は、年間10%程度の成長を見せている。増加するスマホでのEC利用と相性がいいのに加え、4ケタのパスワードを入力するだけで決済できる利便性が後押ししているようだ。また、若年層を含めた、クレジットカードを利用しないユーザーを取り込めることもメリットの1つである(「5.プリペイド決済」も同様)。「オンラインコンテンツだけではなく、物販のECにも徐々に浸透してきている」と、池谷さん。
Amazonログイン&ペイメントのメリット・デメリット
注目は「4.ウォレット決済」で、楽天ID決済、Yahoo!ウォレット、Amazonログイン&ペイメントなど、ID決済もこれに含まれる。ECサイトにとってのメリットは、以下のとおり。
- 大規模なコマースサイトの会員を送客できる
- IDとパスワードのみで簡単に支払いが行える
- 大手ショッピングモール等で利用できる汎用性の高いポイントが貯まる(Amazonは非対応)
セミナー開催時、発表されたばかりの「Amazonログイン&ペイメント」への注目が集まったが、現状の導入手段は次の3つに限られる。
- 自社開発
- ECシステム「FRACTA NODE」を利用する
- ASPカート「FutureShop2」の利用する
池谷さんは、「さらに導入への門戸が広く開放されること、日本の通販企業のニーズが高い継続課金への対応、ポイントが付与され広く使えるようになることで、さらに浸透していくのではないか」と評価した。
実店舗でのウォレット決済はまだ不便 「チャージ」は進むか
LINE Pay、Apple Payも「4.ウォレット決済」に含まれ、ECはもちろん、実店舗も含めたオムニチャネルでの利用が期待されるサービス。しかしながら、PayPalの「顔パス」のように、事前予約して店舗にチェック・インすると迅速に商品が受け取れるサービスは、注目されてはいるものの、結局は待ち時間があり、通常店舗で購入するのとそれほど変わらないため、運用面での工夫が必要だ。
「とはいえ、海外ではスターバックスのモバイルウォレットが売り上げの10%を超えるなど、成功をおさめている事例があります。それは、バーコードを利用したシステムで、インターネットでもチャージできるというもの。飲食店では、『4.ウォレット決済』『5.プリペイド決済』『6.IC決済』を組み合わせたような、その店舗のカードにチャージして支払う、といった仕組みが広がっていくのではないでしょうか」
非対面決済の不正利用が深刻 認証強化など対策を
「7.外貨決済」は、海外の利用者が為替変動や手数料を気にすることなく自国発行カードを利用できるサービスである。越境ECに取り組むなら、早めに検討したいサービスだ。導入するだけなら、決済代行会社に依頼すればよいが、「アメリカを中心に、海外発行カードは不正が多いため、販売する商品によってはセキュリティ対策も必要となります」(池谷さん)
クレジットカードの不正利用に関しては、国内外問わず、深刻な問題だ。とくにECなど、実際にはカードを提示しない「非対面型決済」での不正が顕在化しており、犯罪手段も巧妙になってきていると言う。加えて、ユーザー側のID&パスワードの使い回しが多いため、ID盗用の被害が増えてきた。
対策として池谷さんは、以下5つの認証強化策をあげるほか、16ケタのカード番号をトークン(意味のない乱数)に置き換える「トークナイゼーション」、不正検知のクラウドサービスなど新技術を紹介した。
- カード情報非保持サービス(カード番号を自社で保存することなく決済可能)
- PCI DSS(カード決済を安全に処理するための国際基準)に準拠したサービスを利用
- 3-Dセキュア(第三者の不正利用を防ぐための本人認証)の導入
- セキュリティコード(カード裏面等に印字されている末尾3桁または4桁の数字)をユーザーに入力してもらう
- チャージバック保証サービスへの加入
今後、EC事業者が「決済」を強化するために
最後に池谷さんは、EC事業者の「決済」強化策を述べ、講演を締めくくった。
「ただ単に多くの決済手段を導入するよりも、自社の顧客に合った決済手段をきちんと選定して、導入すること。また、決済画面までいかに簡単に遷移させ、コンバージョンを高められるかも重要です。
そして何より、リピーターになってもらうための施策。たとえばポイントの付与なら、大手ショッピングモールのように大量に付与して新規ユーザーを送客するのではなく、囲い込むためにどのように付与するか。実店舗があるなら、ネットとリアルのポイントを一元化するなどの施策も考えていくべきではないでしょうか」(セミナー第二部は「SSL」 続きはECzineで)