やっぱり起きている、若者のテレビ離れ
最近、一日の生活の中でテレビを見ている時間はどのくらいありますか? 色々な業界で、若者の○○離れが騒がれていますが、テレビ視聴もこの例外ではありません。
内閣府の消費動向調査では毎年、世帯主年齢別にテレビ保有率を調査しています。この数字を裏返すと、「テレビを持っていない世帯」の推移状況が分かります。
ご覧のとおり、29歳以下では、テレビを持っていない世帯が2013年ごろから増加し始めています。ちょうど2012年から2013年にかけては、スマートフォンの普及率が50%を超えた頃であり、若者がスマホに可処分時間を預け始めた事が関係していそうです。
そして2015年(3月調査)には、15%もの若者世帯がテレビを持っていない、という状況になっており、このままのトレンドで行けば、来年の調査では20%近い若者世帯がテレビを持たない、という結果が出そうな状況です。
また同様に、若者のテレビ視聴時間も短縮しています。2014年にブランドコンサルティング会社のリスキーブランド社が発表したデータによると、29歳以下でテレビを毎日3時間以上見る層の数を、テレビを1時間未満しか見ない層が逆転しました。
これらのデータを踏まえると、少なくとも29歳以下のゾーンにおいて、テレビというチャネルではリーチする事が困難なターゲットが出現してきたと言えます。
これは、テレビCMをマーケティングに活用してきた各企業にとって大きな問題と言えます。映像は、テキストや画像等に比べて構成要素が格段に多く、表現力も豊かで、ブランディングのような世界観の表現が必要とされるマーケティングに向いたリッチな表現手法です。
しかし従来、映像が使えるメディアは実質テレビしかありませんでした。すると、テレビ離れが起きてしまうと、ブランドコミュニケーションの難易度は格段に上がることになります。
テレビを見ない層へアプローチするための最優先手段?
これらの状況を少し極端に言えば、生活者はテレビを見る層と見ない層に分かれつつあり、後者にはリッチなコミュニケーションをするチャネルが無くなってしまいそうだ、ということになります。
そのような状況を打開する役割として期待されているのがオンライン動画です。現在、オンラインの動画市場は急成長中で、先を行く米国では、すでに配信費だけで1兆円近い市場になっています。日本のおいては、まだ市場が立ち上がったばかりであるものの、後を追うような急速な成長が予想されています。
元々、テレビからネットへ移動した視聴者を追いかけるという文脈があったためか、オンライン動画に取り組み始めた企業の傾向を見ると、まずテレビCMの素材を流用してオンライン動画を配信という流れが見受けられます。しかしその後、これではターゲットには刺さらない、そう感じた企業も多いことでしょう。
以下のデータは、動画DSP大手のTubemogulらがテレビ、ネット横断で2,500近いキャンペーンを調査したものです。テレビCMで利用した素材を流用し配信したキャンペーンと、オンライン専用に素材を用意したキャンペーンの態度変容効果を比較すると、ファネルの奥に行けば行くほど、オンライン専用素材(Made for Web動画、とも言います)の方が効果が高かったのです。
どうやら、テレビCMをオンライン動画の枠で流せば、テレビで接触できない生活者をカバーできる、という単純な話では無さそうだ、という状況が見てとれます。
米国の消費財メーカーのYouTubeチャンネル等を見ると、オンライン専用で作られた動画クリエイティブが大量にアップロードされており、上記のような事実を広告主が認識し始めていることは一目瞭然でしょう。