オムニチャネル化は、購買体験自体を価値あるものにする
オンライン、オフラインを問わず、いつでも様々なチャネルで自由に情報収集や買い物ができる。このようなオムニチャネル化した状況では、「購買体験自体が顧客にとって価値あるものとなる」と、ブレインパッド ソリューション本部の林隆司氏は語る。
2004年に創業した同社は、約160人の従業員のうち半数にデータサイエンティストを擁する、データ解析・活用の専門事業者だ。本講演の後半で事例も紹介された、すかいらーくやゲオといった大手企業を中心に、業種を問わずさまざまな企業のマーケティングを支援している。
その知見を元に、林氏はビッグデータ時代のトレンドについてこう続ける。「顧客の購買体験に価値を生み出すことができれば、顧客ロイヤルティが向上し、LTVも高まります。そこで、企業は体験を促すための各種のアクションを取るわけですが、ここで重要なのが『One to Oneマーケティング』です。一人ひとりに合わせたアプローチを実施することで、顧客との関係が密になり、体験への誘導やそれによる優良顧客化がしやすくなるからです」。
加えて、生活者のマーケティング環境の変化も重要だ。デジタルシフト、とりわけスマートフォンが普及したことで、必要な情報をリアルタイムで取得しやすくなった。言い換えれば、企業にとっては「アプローチしやすい」状況が整った。
密接なオムニチャネルとOne to Oneマーケティング
活用できるデータの種類も広がっている。かつては企業が取得した顧客属性データや購買データに留まっていたが、デバイスの多様化やソーシャル情報の一般化、外部オーディエンスデータが利用しやすくなっていることなどから、多種類かつ大量のデータをリアルタイムで扱えるようになっている。
反面、業種を問わずどの企業も、人的リソースの限界に直面している。そこで、データ分析と活用を最適化し、さらにOne to Oneマーケティングを自動化できるマーケティングオートメーションツールの導入が進んでいるのが現状だ。
「One to Oneマーケティングの考え方自体は、20年以上前からありました」と林氏は解説する。なぜ最近になって注目を集めたかというと、テクノロジーの進化によって、チャネルを横断して一人ひとりに戦略的にアクションを起こせるようになってきたからだ。その点で、オムニチャネルを実現するOne to Oneマーケティングの考え方は、かつての人的なサービスで個々の顧客に対応するという考え方とは少し異なる。
「個々の顧客をよく理解し、そのニーズに合わせた個別のアプローチを展開すること自体は同じですが、その顧客が今は非常に多様化し、変化が早く、ニーズをつかむことも難しくなっています。そこで、属性や行動などのデータから精緻に顧客を知ることが必須になるのです」。
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「誰に・何を・いつ・どのチャネルで」アプローチするか
前述のように、企業が扱えるデータの種類が拡大する中でオムニチャネルを実現するためには、あらゆるデータを踏まえて「誰に・何を・いつ・どのチャネルで」アプローチするのかを適切に導き出す必要がある。
「これは決して簡単なことではありませんが、我々のマーケティング支援の経験から、適切なOne to Oneマーケティングができれば確実にビジネス成果につながります」と林氏。そのためにブレインパッドでは、データマイニングツール、プライベートDMP、マーケティングオートメーションツール、ビジネスインテリジェンスツールという4つの機能の組み合わせを推奨。それぞれ自社開発ツールや販売代理店として取り扱うツールを有し、企業に応じて最適に組み合わせて提供している。
では、これらのツールを効果的に活用する企業は、実際にどのような成果を上げているのだろうか? 3つのパターンから、実例が紹介された。
ひとつ目は、デジタル化に対応したオムニチャネルの事例。ある化粧品会社では、プライベートDMPを導入し、Webサイトやメール、アプリなどオンラインでの情報に加え、コールセンターでの接触や、iBeaconを活用した実店舗への来店情報なども連携。ニーズを踏まえた情報をサイトで表示できるようになり、さらにコールセンターへ連絡があった際も適切な商品をお勧めするというインバウンドアプローチが可能になった。
2,000万顧客を擁するゲオ「SAP Predictive Analytics」導入
2つ目のパターンは、ビッグデータを活用したオムニチャネル。ここではまず、DVD・CDレンタルショップや衣類・雑貨のリユースショップなどを運営するゲオの事例が挙げられた。7月22日、ゲオは自社の分析基盤としてブレインパッドが取り扱うデータマイニングソフトウェア「SAP Predictive Analytics」を導入したと発表。同社の「業態の異なる店舗間やオンライン・オフラインでの相互送客」という課題に対し、ブレインパッドはツール提供を含むデータ分析のコンサルティングを行っている。
複数業態で合計1,200店舗、2,000万顧客というビッグデータを扱うゲオでは、実店舗以外にオンライン宅配レンタルやアプリなど、チャネルの数も多い。「オムニチャネルに取り組む上で、データマイニングの活用が直近のテーマになります。今後は例えば、DVDを借りにGEOショップに来店した顧客の中から衣類のリユースショップを利用しそうな人を予測し、各チャネルでの施策を実行していきます」。
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すかいらーく、発行クーポンを顧客ごとに最適化
同様にビッグデータを活用したオムニチャネルの事例としては、すかいらーくでデータマイニングを通したOne to Oneマーケティングが進んでいる。同社も主力業態のガストをはじめ複数の業態を有し、合計店舗数は約2,600店。ブレインパッドが支援に参画した時点で、すでにデータマイニングに取り組んでいたという。
「同社では『ガストアプリをリリースしてOne to Oneマーケティングに取り組む』という課題が明確になっていました。そのために必要なのは、日々のクーポンキャンペーンの反応確率を予測する膨大な分析モデルの作成がひとつ。次に、トータルで100億件を超える顧客データを扱える処理能力。そして、マスではなく個の分析を可能にする個人へのスコアリング、の3つでした」。
これらを叶えるため、前述のデータマイニングソフトウェア「SAP Predictive Analytics」を導入。例えば日々のクーポンキャンペーンでは、一律にポテトのクーポンを送るのではなく、「誰にどの商品のクーポンを送れば最も反応率が高いのか」を全会員・全商品について分析することで、反応率を大幅に引き上げた。
高速・短期間に分析できる処理速度も、この事例では重要だった。この一連の分析を統計の専門家が手作業で行おうとしたら、各商品についてサンプリングからデータの分別、変数選択、データ加工などを順次進めてモデルを作成する必要があり、数カ月単位の時間を要する。一方、今回導入したツールでは、膨大なデータ量ながら数時間~1日でモデル作成が可能だったという。
「分析モデルの作成に数カ月もかかったら、できあがったときにはもう顧客が変化していて使えません。このツールはデータマイニングを自動化したい企業によく導入されています」と林氏は話す。
顧客を理解した適切なコミュニケーション
3つ目のパターンは、顧客一人ひとりに対する情報提供。クラウドソーシング企業「A社」では、休眠顧客を活性化して顧客育成を図るため、ブレインパッドの自社開発プライベートDMP「Rtoaster」、および同社が提携するプロバンス社のマーケティングオートメーションツール「Probance Hyper Marketing」を導入。例えば受注者へは、パーソナライズメールを活用してステップアップを促し、サービスの継続利用に一定の成果を上げているという。
以上のように紹介されたさまざまな事例から、企業の課題に応じたソリューションを適切に導入してOne to Oneマーケティングを実行することで、業種を問わず確実にビジネス成果を得られることが理解できる。一人ひとりのニーズに合わせてオムニチャネルでコミュニケーションを図るからこそ、顧客に受け入れられ、企業へのロイヤルティが高まるのだ。
ブレインパッドではこのほど、中小規模の企業でも活用しやすいマーケティングオートメーションツール「Probance One」をリリース。「データ分析・活用領域での支援経験を元に、ソリューション開発とコンサルティング、さらに企業内のデータサイエンティスト育成などにも力を入れていきます」と、林氏は今後への意気込みを語った。
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