DMP導入の設計から運用までを一気通貫で担うオプト
MarkeZine編集部(以下MZ):今回は、企業のDMP導入から活用までの知見に長けた株式会社オプトから、橋本さんと高木さんのお二人をお迎えしました。まずは、オプトさんが近年注力されていることや取り組みを教えていただけますか?
橋本:当社は今、マーケティング×テクノロジーの追求をミッションに掲げ、企業のマーケティング活動のデジタルシフトを促すパートナーとして、データ活用に対しての取り組みをこれまでより一層強化しています。
例えば、上級ウェブ解析士の取得を促進し、広告だけではないweb全般知識の底上げを図ったり、ビッグデータに関する高度な統計解析や処理技術を研究・開発する専任組織として『OPT Data Science Lab』を立ち上げるなど、ここ数年“データドリブン時代”に備えた基盤づくりとして様々な取り組みを行っています。
MZ:そうした姿勢の中で、DMP領域にも力を入れられているんですね。
橋本:はい。エージェンシーとして、導入時の設計から運用までを一気通貫に担うという形で企業のお手伝いをしています。各領域に専門性を持った人材をアサインし、企業のDMP導入におけるプランニングと実装、既存システムとのインテグレーションなどを含めたすべてをワンストップで実現できることを大切にしています。
MZ:オプトさん内で、DMPの導入支援についてはどのような体制をとられているのでしょうか?
橋本:まずプランニングの視点では、データマーケティングを中心に扱う専門部署を3年ほど前に立ち上げました。当時はまだDMPの概念が今ほど広がっていませんでしたが、データドリブンなマーケティングのトライ&エラーを重ねていました。あわせて、システムの導入・実装を行う専門部署も新設しており、各ベンダーが提供するDMPなどの仕様理解や導入フローを体系化しています。
様々な業界で高まるDMPへの関心、重要性の認識進む
MZ:そうなんですね。その部署は、現在どのくらいの規模なのですか?
橋本:専門的にプランニングを行うチームと、実際にテクノロジー導入におけるシステムインテグレーションの部分を担うチームと合わせて、30名ほどですね。そもそもこうした専門チームを持っているエージェンシーは多くないと思いますし、規模も大きい方ではないでしょうか。
MZ:積極的にデータドリブンマーケティングを牽引されてきたこの3年ほどの間に、DMPも認知され、ヤフーさんからも昨年Yahoo! DMPがリリースされました。近年の業界内での温度感を、どう捉えられていますか?
橋本:企業の関心の高まりは感じていますね。3年前だと、活用できるデータやアウトプットに限りがあり、導入コストを上回るリターンを見出すのが難しいケースが多くありました。また、金融系などの情報管理が特に厳しい業界では、活用以前にクッキーの使用すらも難しいほどでしたが、今ではそのような業界でも具体的にDMPの検討が進んでいます。
高木:当社は元々、冒頭でお話ししたようにデータを重要視する文化があるので、DMPについても早くから知見を蓄積しながら、各企業の状況に合わせて支援してきました。これまで、DMPはまだ検討段階であった企業も、そろそろ着手すべきだという認識が強くなっていると思います。
先行企業はすでに効果を実感、プライベートDMPが主流に
MZ:データドリブンマーケティングを前提に、有効な道具のひとつとしてDMPがあるという認識が広がっている印象ですね。ヤフーさんサイドから、江川さんはこの状況をどうご覧になっていますか?
江川:先ほど橋本さんがおっしゃられたように、比較的情報管理が厳しい業界からも具体的な導入のご相談をいただくようになってきています。また、実際の活用に関しても、先行して導入されている企業にて、顧客分析・把握から広告配信の効果改善に至るまで、様々な実績が出始めています。そういった事例の共有などを通して、これから導入が一層加速するとみています。
MZ:なるほど。そういった、すでに導入し運用している先行企業の状況はいかがでしょうか?
橋本:この1年くらいで、企業側の意識も変化していると思いますね。これまで、DMPといえば外部データの活用でいろいろな成果が得られる“魔法の杖”のような漠然としたイメージを持たれていました。ですが、今はプライベートDMPを主流に、自社のデータにどんなデータを掛け合わせれば有効か、そして、掛け合わせたデータを活用してどうマーケティング施策を実行するかという現実的な視点で取り組まれている企業がほとんどです。
MZ:現状で、まさに導入が進んでいる業界などはありますか?
橋本:ダイレクトマーケティング系ですね。ダイレクトレスポンスのKPIを重視しながらも、どうやって潜在顧客を発掘しナーチャリングしていくか、という視点で活用されています。
ちなみにその前のピークは2013年ごろ、大手ナショナルクライアントがWebを起点にしたオムニチャネルを探り始めたころに導入が相次ぎましたが、ほぼオンプレミスに近い形でした。
ここ3、4カ月で導入決定が相次ぐYahoo! DMP
MZ:ということは、クラウドサービスのDMPが広がったことも影響していそうですね。
高木:そうですね、やはりクラウドはコスト的にトライしやすいので。Yahoo! DMPがリリースされたことは、大きいですね。導入コストの面からみてもハードルが低い上に、データの精度・種類を兼ね備えているため、DMP導入も以前よりも検討されやすくなっています。
Yahoo! JAPANはなじみがありますし、そのヤフーさんが保有するデータを活用できるとなると、リターンもイメージしやすい。特にこの3、4カ月で、導入の決定が相次いでいます。
橋本:DMPの機能では、データをどう集めて集計・分析するかのインプットと、それをどこで展開するかのアウトプットの両方がポイントになります。最近ではDMPのプレーヤーも充実してきたので、各社のアウトプットも充実しつつありますが、この点でもYahoo! DMPを介したリーチは圧倒的だと思います。
MZ:Yahoo! DMPは、データの収集だけでなく、DMPを通して見つけられたセグメントへどうやってアプローチするかというアウトプットが充実していることも大きそうですね。
高木:そうですね。非常にインパクトが大きいサービスと捉えていますので、直近ではヤフーさんのソリューションに特化したメディアチームを新設し、冒頭でお話ししたデータマーケティングの専門部署と連携して、企業の支援にあたっています。
検討企業が直面する課題はデータ取り扱いの環境とポリシー
MZ:Yahoo! DMPのインパクトもあって、広い意味でのエコシステムができつつあるんですね。各マーケティングチャネルとの接続も、エージェンシーが使いやすいような形を意識されているんですか?
江川:そうですね。データ量はもちろんですが、打ち手の多さも重視しています。たとえば、広告に関していうと、抽出されたオーディエンスに対し、マーケティング施策の目的に応じて、広告の出し方まで設計できるようにしています。媒体を自社で抱え、多様な広告商品を揃えていることが大きな強みですね。
MZ:では、DMPの導入がこれからさらに広がっていく中、企業にはどのような課題がありますか?
橋本:導入における企業の課題の多くは、データを扱う環境とポリシーの部分です。業種や企業ごとに保有データの形状やシステム構成、取り扱いにおける主幹部署など社内環境がさまざまですし、データ利用の際のガイドライン、ユーザーへのオプトインやオプトアウト処置など情報取扱いにおけるポリシーも多種多様です。扱うデータによってマーケティング部に権限がないなど組織面の課題といった個別事情への対応も必要です。また、メールアドレスを扱う際にポリシーを考慮する必要も出てきます。
例えばそういう場合、当社ではアドレスをハッシュ化してポリシーに反せずに使える仕組みや、ユーザーへ架空のIDを付与して情報を紐付ける機能を提供したりしています。元々、導入設計から運用までを担っているので、実装する中でいろいろなボトルネックは出てきますよね。弊社ではこれら個社別課題に対して内製で解決してきたので、自然と対応できるようになりました。
MZ:なるほど、そうしたノウハウにおいて、オプトさんは強そうですね。ここまで内製でフォローする体制が整っているエージェンシーは珍しいのでは?
江川:そうですね、自社でアクセス解析やDMPも提供されてきたオプトさんだからこそできるサポートかと思います。マーケティング施策を理解したうえで導入設計を行うことが必要ですので、企業にとっては支援体制もとても重要です。
ヤフーのデータも活用し、オプトのOne to Oneマーケティングの実現へ
MZ:なるほど。では、実際にYahoo! DMPを扱われる中で、エージェンシーとしての手応えをうかがえますか?
橋本:データは量と質、それから鮮度が重要です。Yahoo! DMPはプライベートDMPでありながら、やはり圧倒的なサードパーティデータを保有しているので、企業が保有するデータとの掛け合わせにも大きな広がりがあります。
企業のホームページに訪れているユーザーをヤフーのデータを使って分析できるのはもちろんのこと、ハッシュ化した企業がお持ちのメールアドレスを使って、例えば過去に優良会員であったが、現在は休眠会員になってしまっているユーザーの、直近の行動を基にマーケティング施策を実施するといったこともできるようになります。また、デイリーで使っているユーザーが多い分、鮮度も群を抜いていると思います。
高木:これまで個別に運用していたヤフーさんの広告商品を、統合して運用できるようになったことも大きいですね。充実したデータを活かして確実に捉えたいユーザーのセグメントをつくり、プレミアム広告(予約型広告)で優良枠在庫に優先的に配信する事で、そのユーザー群には他社広告に先駆けて、自社の広告を独占的に当てるということも可能です。
今、ヤフーさんはアプリのダウンロードを電車内広告などで積極的に促進されていますよね。アプリを通してさらに一人ひとりのニーズが把握できると思うので、僕たちが目指すべきOne to Oneマーケティングの実現をヤフーさんのソリューションが後押ししてくれていると感じています。
MZ:最後に、今後の展開などあれば教えてください。
橋本:直近では、当社のツールeマーケティングプラットフォーム「ADPLAN」とYahoo! DMPの連携をリリースしました(株式会社オプト プレスリリース)。
これによって、ADPLANを利用される企業は、新たにデータの取得・蓄積をせずとも、過去ADPLANに蓄積されてきた、購買履歴データや顧客データ、広告反応データ等のファーストパーティデータをYahoo! DMPに取り込むことができ、広告配信に活用することができるようになります。
また、Yahoo! JAPANが持つマルチビッグデータと掛け合わせることで、オーディエンスの分析や、新規の顧客となりうる層へ広告の拡張配信を行うこともできるようになります。
DMPに限らず、データドリブンマーケティングは今後ますます推進されますし、活用できるデータも広がります。なので、自社の状況に応じたトライ&エラーを続けることが重要だと思います。弊社はそんな企業の支援に引き続き力を入れていく予定です。