従来型の広告アプローチからの脱却を
ここで徳力氏は「ちゃぶ台返しかもしれないが」と前置きしながら、「そもそも従来型の広告アプローチ、ノイズ的なものからの脱却が不可欠なのでは?」と疑問を呈する。前出のクックパッドの「広告でありながら、ユーザーにも役に立つ情報」がスマホ広告の王道なのではないかというわけだ。
林氏は「確かにLINEでの友人や家族とコミュニケーションの中に、企業という第三者が土足で入ることになれば、ユーザー離れのリスクが高まる可能性がある」と語る。そして、クライアントの広告頻度アップ要求に対し、企業からのメッセージ配信頻度をコントロールせざるを得ない状況であると、実サービスと広告のバランスの難しさを語った。

ディスプレイ広告ユニットマネージャー 赤星大偉氏
一方、赤星氏はインフィード広告などのネイティブアドが、スマホ広告を牽引していることを紹介。「新しい広告手法を模索しながら、広告の新たなスペースを確保して掲載数を上げていくのか、効果の高いメディアとして単価を上げていけるのか、そのあたりは今後のチャレンジ次第」と今後の展開を語った。
そして、沖本氏は「コンテンツ的に見せるのではなく、本質的にコンテンツとしての価値を上げることがポイント」と語る。その結果として、頻度も効果も上がり、ブランド認知も購買額も上がっていくというわけだ。その「価値化」を大切に、取り組みを進めていくという。
ヤフー、LINE、クックパッドが模索する、次世代スマホ広告のあるべきカタチ
テレビとの連携や、ネイティブアドの成長の余地が見られながら、スマホならではのプッシュ性を活用した広告や、コンテンツやサービスとの協調など、様々な可能性が紹介されたが、はたしてこれからのスマホ広告はどのようになっていくのか。
林氏は「やはりLINEとしてはローソンの事例にも見られるように、効果の高いプッシュ広告の可能性は追求したい。ただ一斉に配信するだけでなく、LINE ビジネスコネクトを活用すれば、地域別男女別といったようにより効果的な配信も可能になる。適切な人に適切なタイミングで届けることを追求していきたい」とLINEが得意とするプッシュ広告のブラッシュアップに期待を寄せた。そうしたLINEのユーザーに対する直接的なアプローチに対し、ユーザーに接する店舗スタッフから間接的に広告効果を高めようというのがクックパッドの取り組みだ。沖本氏は「これまで紙文化だった小売業の販促に、スマホによるネットでの販促という新たな文化を浸透させようとしている」と意欲を見せた。

また赤星氏は別の切り口から、「広告予算の適性化」について「今後のヤフーの課題と認識している」と発言。メディアとしてだけでなく、ヤフーオークションなどサービスを展開する“広告主”としてもテレビを含めて広告展開を行い、そこからの学びを共有していくという。その際に「リーチの重なり」や「認知の向上」などの効果を数値化してみせることで、最適な予算配分を提案したいと語った。
徳力氏は「スマホ広告はテレビCMを超えられるか?という質問に対する直球の答えではないかもしれないが、スマホ広告ならではの可能性について何らかの示唆を与えてくれたディスカッションだったと思う」と総括し、セッションをまとめた。