明確なターゲットとマーケティング
BuzzFeedの創業者ジョナ・ペレッティは、ことあるごとに自サービスのターゲット層を包み隠さず明言しています。いわく……
- 仕事中ヒマで仕方ない人
- 記事をシェアすることで大きな満足を得られる人
- Web上でのコメントのやり取りなどに、強迫的とも言えるほど固執する人
こういった人は「BBCやCNNを見る人よりも遥かに多い」と明言しています。仮にも自分たちの顧客にそんな表現を用いていいのかという気がしますが、しかしすべての人が「はは、まったくその通りだ。自分以外はね」と思うため大丈夫なのだとか。何とも強気なマーケティング宣言ですよね。
BuzzFeedはどうやって稼いでいるのか
BuzzFeedのサイトをご覧になるとお分かりのように、そこにはバナーなどの一目で広告だとわかるものがありません。Webサービス収益化の王道とも言える広告を廃し、しかし彼らは去年度120億円以上の売上を達成しています。なぜ売上を伸ばすことができるのでしょうか?
売上の源泉は、主にネイティブアドだといわれます。たとえば「レッド・ツェッペリンがいなければ生まれなかったであろう15のバンド」という記事は、欧米で人気の音楽配信サービスSpotifyが制作したもので、記事のところどころに自サービスへのリンクや埋め込みが入っています。

このように最初からスポンサードだと明記して記事を書く方法は、先行メディアの新聞や雑誌ではすでに行われていたことであり、最近では、日本のwebメディアでも頻繁に行われています。こうしてPRであることを堂々と全面に押し出していても、その内容や切り口が面白く、なによりSNSでシェアされるものであれば、十分なコンテンツとなることを示したといえるのではないでしょうか。
日本版BuzzFeedがどのような媒体になるかはまだ明らかになっていません(2015年12月執筆現在)が、基本的にはこのビジネスモデルを踏襲すると予想します。日本最大のポータルサイトとして、広告モデルでのあらゆる収益化を実現してきたヤフーとしては、Web上で実現できる新たなビジネスモデルとして、BuzzFeedが持つネイティブアドの知見を買ったのではないかと個人的には見ています。
仕事の半分は記事の執筆、もう半分は拡散方法の検討
「メディア系サービスは技術に弱い」という印象を持っている人は多いのではないでしょうか? もちろん各メディアの編集ポリシーが関係するものの、多くの場合で「いいものを書けば人は読んでくれるはずだ」という根性論に陥りがちな傾向があるように感じます。
しかしBuzzFeedはそうではありません。彼らは、全体の仕事量を100%とすると50%は記事を執筆することに、残りの50%はそれをいかに広げるかに費やすといい、そのための技術への投資、エンジニアの雇用などを惜しみません。
たとえば彼らは、1つの記事に対し12種類のタイトルと写真を作成し、それらをすべて掛け合わせたパターンを配信する技術を持ちます。そして数時間試した後、最も良い結果を出した組合せに差し替えるのですが、この一連の流れはすべてプログラムによって自動化されています。
また、今年の春頃発表された「Pound」と呼ばれる独自技術は、閉ざされた情報としてブラックボックス扱いであったSNS上での拡散を可視化し、分析するものだといわれています。その他にも、各SNSが提供するAPIを徹底的に使いこなし、積極的に他社も買収(参照)するなどの動きを見せる同社。Webサービスを運営する上で、技術を重要視していることが伝わってきます。
