Facebook広告は効果が出ない、というのは誤解です。ただ、たとえリスティング広告やその他の広告でうまくいっていても、その考えのままFacebook広告に投資したところで結果は出ないのです。
では、どうすればFacebook広告できちんと成果を上げられるのでしょうか。
その疑問にお応えするのが翔泳社が12月17日(木)に刊行した『Facebook広告運用ガイド ダイレクトマーケティングに生かす売上直結の活用術』です。ソーシャルメディアマーケティングは、媒体ごとにクリエイティブからランディングページに至るまで設計しなければならないと説く本書。これからFacebook広告を使いたいと考えている方の入門書としても最適です。
今回、Facebook広告の代理店、株式会社ココラブルの取締役である著者の岡弘和人さんに、本書について、そしてFacebookに隠されたブラックボックスについてお話をうかがいました。ネットにほとんど情報が載っていない「最適化配信」の最先端をゆく岡弘さんのインタビューをお楽しみください。
Facebook広告は効果が出ないのか?
――岡弘さんは現在ココラブルでFacebook広告の運用に携わっていらっしゃいますが、なぜFacebook広告を選ばれたのでしょうか。
岡弘:僕は前職で、リスティング広告の代理事業とアフィリエイト事業に携わっていました。アフィリエイト事業が売却された後に、ココラブルの取締役になったんですが、さすがに競合が多いリスティング広告の代理業を始めるわけにはいきませんし、またアフィリエイトをやるのもなぁと思っていました。そんなとき、とあるお客さんからFacebookに広告を出せないかと言われて、やってみたんです。それがFacebook広告事業のスタートです。
そのときの効果としては、Yahoo!の5分の1くらいのCPAで取れていて、しかも業界では誰もFacebookから外部サイトに誘導していませんでした。Facebook広告はリスティング広告と運用方法が似ていると気づいたんですが、キーワードではなくクリエイティブが重要だということも分かりました。ということは、クリエイティブと運用のノウハウを積み重ねればけっこうな価値になると考えたんですね。
それからは「いいね!」を稼いだりいわゆるソーシャルメディアマーケティングをしたりするのではなく、Facebookを使ったダイレクトマーケティングをやっています。ECや課金サービスの費用対効果を上げる仕事をしてきました。
本書が必要だと思うのは、「やっぱりソーシャルメディアはダメだ」という声がいまだにあるからです。Facebookは奥の深いメディアで、適当にやってうまくいくわけがありません。ですから、うまくやるための基本的なやり方を実行してほしいんです。それによって効果が出れば広告を利用されるみなさんの売上も上がりますし、Facebookの価値も上がります。そういったことを考える方が増えてほしいなと思っています。
――ソーシャルメディア上の広告も一般的になってきましたが、まだまだFacebook広告への理解は足りていないというのが現状なのでしょうか。
岡弘:やりたい方はかなり増えましたが、どうすればいいのかという段階で悩んでいる方が多いと思います。たぶんほかの代理店の方でも悩んでいる気がします。
また、自分たちで運用されていらっしゃる方も大勢いますが、「Facebook広告を始めソーシャルメディアの広告はダメだ」という認識を持っている方もいるので、やり方次第でなんとかなる仕組みになっているということを伝えたいですね。
Facebook広告で「売れない」のには原因がある
――そんな意図が込められた本書の特徴はどこにありますか?
岡弘:Facebookは進化が早くて、いろんなプロダクトが出てくるんですが、どんな新しいものが出てきてもまずやるべきことがあります。本書では、基本として考えるべきこと、やるべきことに紙幅を割いているのが特徴ですね。
――基本的なところもまだ知られていないんですね。
岡弘:基本を分かっていてもどうやればいいのか戸惑っている方もいますね。また、質を高めるというのがいまいち分からないという方もいるでしょう。本書を読んで「当たり前だな」と思われる方もいるはずです。そういう方はぜひ個別にメッセージをください(笑)。もっと深い世界をお伝えできますので。
もしFacebook広告を一度やって諦めた方は、本書を読んで、同じ考え方でできていたかを検証してみてはいかがでしょうか。知り合いのシェアで見たんですが、「月額予算100万円までなら本書を参考にして試行錯誤したほうがいい。それ以上だとリソースがかかりすぎるから、ココラブルなどに相談したほうがいいんじゃないか」と。そうだよな、と共感しましたね。
――Facebook広告を使っている方にとって、大きな課題は何なのでしょうか。
岡弘:EC業者の方であれば、「売れない」というのがやはり課題ですね。リスティング広告の感覚でやられる方が多くて、広告を出しておけば売れると思っているんです。でも、Facebookユーザーに検索モチベーションはありませんから、何のモチベーションもない方に買ってもらうには別の視点が必要です。
売れない理由は、Facebook広告のクリエイティブ以外にもありますから、そういうところも考えてチャレンジしていただけると嬉しいです。本書ではFacebook広告とランディングページをセットで用意すべきと書いていますが、それがヒントになると思います。
例えば、流入経路ごとにランディングページを作られている方はうまくいっています。検索、純広告、ソーシャルメディアなど、ユーザーやチャンネルを分けて誘導するのが重要です。リスティング広告でうまくいっているからという理由でFacebook広告をやっても、だいたいうまくいきません。
Facebook広告のいいところはターゲティングですので、特徴を押さえたクリエイティブが絶対に必要です。特に年齢については、いままでのネット業界でこれほどの精度で狙えるメディアはありませんでした。「あなただけにお見せします」とOne-to-Oneで見せられるのもいいですよね。
Facebookが何を考えているのかを考える
――ソーシャルメディアは変化が早いですが、Facebookではオーガニックリーチが減っているということが話題にもなっています。そうした変化は、本書の読者にとってどれくらい影響があるのでしょうか。
岡弘:オーガニックリーチについてはあまり影響がないと思います。ただ、これも不思議なもので、Facebook全体のトラフィックやリーチは減っていないんですよ。ということは、出なくなった分だけ出るようになった分がある。そこを見れば、実はリーチを取れるんですね。本書にもあるように、Facebookが何を重要視していて、そこに対してどうアプローチするかで結果がまったく変わるんです。Facebookのことを考えるというか、その裏をつくのが大事です。
プラットフォームが普及すればするほど、それのシステムがどのように動作するかを深く考えていくと、オーガニックリーチの問題も解決できていきます。
――それはなかなか思いつきませんし、どう考えていけばいいのか分からないですよね。
岡弘:皆さん、市場的にいい効果が出ないと言われていると一様に「ああ、出ないんだ」と思ってしまうんですよ。広告の効果が悪くなっているとはよく言われるんですが、誰もやっていないことをやればすごく効果が出ることもあります。何をどう展開するのかが大事になってきていますね。
――それは本書の少し先の段階でしょうか。少しお聞かせいただけませんか?
岡弘:やっぱりアルゴリズムを考えることが重要ですね。Facebookが何を優先して広告を出しているのかを探るんです。これを自社だけでやるのは限界があります。我々は代理店として非常に多くの案件を見ていますから、こっちではこういう状況で、あっちではこういう状況にある、ということは全体としてはこんな状況になっている、と考えていけます。それが代理店の強みではありますね。
僕は最近、Facebook広告で効果を上げるためには三つの要素を突き詰めないといけないと思っています。クリエイティブ、ターゲット、配信のアルゴリズムです。このうち本書では、クリエイティブとターゲットの突き詰め方について特に重点的に書きました。まずはクリエイティブとターゲットを充分に練り上げたうえで、Facebookの広告配信アルゴリズムを最も活用できる「最適化配信」につなげる、というのが本書の基本的な解説の流れです。
最適化配信というブラックボックスを暴くには
――本書は最適化配信というゴールを目指して、クリエイティブとターゲットについて理解していくように読み進めていけますが、最適化配信とは何なのでしょうか。
岡弘:Facebookが持っているデータベースの強みを最大限に活かしてコンバージョンをする可能性が高いユーザーに広告を配信するのが最適化配信ですね。A/Bテストで得た結果を組み合わせて、最適化配信を行なっていかないといけません。
Facebookがユーザーの属性や情報から導き出す最適化配信のアルゴリズムは、この2年でとても精度が上がっていて、いまは使うほうが確実にいい結果が出ています。Facebookが持つデータ量と解析力、広告主の状況を汲み取るソリューション化する力はものすごいです。今後はそれがもっと強化されていきますから、アルゴリズムはどんどん強力になっていきます。
今後はそれがもっと強化されていきますから、アルゴリズムはどんどん強力になっていきます。最適化配信は絶対に必要なんですが、さすがにFacebookがクリエイティブまで作ってくれるとはまだ思えません。インプットするものは人が設計しないといけないのかなと。
――最適化配信については、検索してもあまり情報が出てきませんよね。
岡弘:なるほど、ネットに情報がないんですね。僕も最適化配信を敬遠していた時期もありました。Facebookのよさはターゲティングが明瞭になっていることですが、最適化配信になると急にブラックボックスになってしまうんです。そのアンコントローラブルなところが嫌で……でも実際にやってみると確実に結果が出る。結果がそれを使えと言ってくるわけです。
そうすると、今度は最適化配信のアルゴリズムに何のデータを入れたらより効果が出るのかいいのか?という話になってきて、本書でもA/Bテストを行ってクリエイティブを厳選する手法を紹介していますが、こうしたテストやデータ分析を繰り返すことがアルゴリズムを暴くことに繋がっていきます。これからどんなメディアが出てきても、配信アルゴリズムのブラックボックスを暴ける力は必須になるのかなと。
最近、Facebookのアルゴリズムと話をするみたいに分析しています(笑)。昔はクリエイティブだけ見ていればよかったんですけどね。カルーセル広告も、Facebookが自動で表示してくれる順番と、僕が組み立てた順番で対決するんです。どっちが効果が高いんだ、と。「負けたら引退するぞ」という意気込みで、同じ金額で広告を走らせてみるんです。最初は負け続けるんですが、あとからぐんぐん勝っていく……でも3か月後には負けそうだな、みたいなことをやっています。
Google対Facebook、そしてその先の世界
――本書の最後にInstagramについてのコラムがありますね。
岡弘:これからの世の中は、いま以上にGoogle対Facebookの戦いになると考えています。Googleは検索もありながらも、アドネットワークを持っています。Facebookもソーシャルがありながらアドネットワーク化を進めています。アドネットワークの大きな媒体として自社のInstagramがあるわけです。Facebookのアドネットワークは、Facebookのターゲティングが使えて、これを拡張していくので、いろんな媒体でFacebookのターゲティングできるようになっていくんですよ。
GoogleはCookieベースによる推測のターゲティングで、Facebookは個人情報を用いたターゲティングで、お互い争うことになります。両者のアドネットワーク対決は、僕はFacebookが優位になっていくのではと思っています。そこにある大きな媒体がInstagram。Facebookのターゲティングを使えるというのが非常に魅力的ですよね。そんな意図があって、本書にコラムとして掲載しました。
――最後におうかがいします。いま、Facebook広告に真摯に向き合っている岡弘さんの目標とは何なのでしょうか。
岡弘:我々はFacebook広告を管理するツールの事業もやっています。エージェンシーやマーケターとして世界に出ていくのは難しいですよね。でも、日本の広告運用は世界一細かいので、日本でFacebook広告運用の一番を取れば、世界でもトップを取れるのではないかと思っています。世界に向けてはそれをツールという形でチャレンジし、日本のマーケティングが世界で通用するということを証明したいですね。