構築フェーズよりもカオスになりがちな運営フェーズ
サービスは、ローンチした瞬間から息をつく間もなく、「運営フェーズ」となります。サービスのローンチはしたことがあるものの、運営について頭を悩ませている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
オムニチャネル・マーケティングでは、従来よりも部門間が密につながっており、システムだけでなく、各部門の意思決定や情報連携が連鎖することで、初めてエンドユーザーに価値が提供されます。つまり運営そのものも、「オムニ」になっている必要があるのです。
サービス運営には、主に3つの「運用業務」が存在し、その3つを維持・管理することで、効率的な運営が実現できます。
また、これら運用業務を計画してゆくことを、「運用設計」と呼びます。今回は、特に「2.情報の運用」をテーマとしつつ、「オムニ」化された運用設計に、どのようなものがあるか説明します。
情報の流れと、部門のつながりを「可視化」する
前回の記事同様、スマートフォンアプリを活用したサービスを展開する小売企業をモデルケースとして、課題と解決案をします。
例えば、ユーザーがアプリをダウンロードし、複数ある店舗の中から「お気に入り店舗」を登録でき、登録時に、割引クーポンが発行される機能があったとします。このケースですと、ユーザーは店舗でアプリ起動することになりますから、問合せ先は、店舗スタッフに集中することが予想できます。
アプリの使い方、登録の仕方については、事前に店舗スタッフに周知がされていれば解決は可能ですが、ここでは「クーポンが表示されない」といった「正常でないケース」でのお問合せ対応について考えてみましょう。この場合、
- 店舗スタッフがエンドユーザーからお問合せを受け、本部に連絡
- 本部は、店舗からの連絡内容によって「クーポンの再発行」を意思決定、コンテンツ運用担当に通達、作業依頼
- コンテンツ担当がアプリ用管理画面を操作、当該エンドユーザーの端末にクーポンを再発行、完了報告
- 店舗スタッフが、エンドユーザーのクーポンが復元されている事を確認し、本部に完了報告
このような流れで、お問合せ対応が可能です。しかしこの流れの中には、いくつか課題、懸念事項が存在します。
- 店舗スタッフは、問合せ段階で何をヒアリングし、エスカレーションすべきか
- システム的な障害なのか、エンドユーザーの手違いなのかの判断材料
- 運用をベンダーに外注していた場合の指揮、連絡系統
- 判断を待っていては、エンドユーザーに対応完了するまでの時間がかかりすぎる
などです。特に店舗では、常に接客を主とした業務をしていますから、対応に時間をかけてしまっては、顧客満足度は低下してしまい、このサービスそのものの意義を問われてしまいます。そうならないように、運営前の段階で以下のものを用意しておくと良いでしょう。
このように、起こりうる対応を、予めフローチャートとして「ルール決め」をしておくことで、エンドユーザーの窓口となるチャネルや、判断、対応を行う部署との連携がわかりやすくなり、店舗スタッフとしても、今どの対応を行っているかステータス確認ができますので、エンドユーザーへの事細かな対応も可能になります。
ちなみにこれは、コールセンターの問合せフローを応用したものですが、まさに他部門のノウハウを活用した「オムニ」な手法と言えます。
また、このような運用設計はサービスの全体像が決まった段階で、どのような問合せや運用対応が発生するかは予想が可能になります。
つまり、構築プロジェクトの後半で着手するのではなく、上流フェーズ(ソフトウェア開発工程でいうと基本設計)の段階から議論を開始し、運用イメージを共有できることが重要です。