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クリエイティブを“科学”する動画マーケティング

2015年に最も視聴・シェアされた動画広告から読み解く、大ヒット動画の傾向とポイント

2015年に最も視聴され、シェアされたAdCouncilの動画

 まず取り上げるのは、日本の公共広告機構にあたるAdCouncilの「Diversity & Inclusion - Love Has No Labels」です。

 シェア数のランキングでは約274万回と6位ですが、YouTube上の再生回数で見ると、ランキング内1位となる約5,600万回を数えます。結果として、この動画は、動画広告以外も含まれたYouTubeの再生回数ランキングであるYouTube Trending Videos of 2015 にも選ばれています。

 そして、実は2つのランキング両方に掲載されているのはこの動画だけ。つまり、2015年に最も視聴され、シェアされた、2015年を代表する動画広告の1つと言ってもいいでしょう。

Hook

 まずこの動画のHookは何か。一言で言えば「時事性」です。

 この動画は、民族、障害、性的指向、人種、宗教などの様々な違いがあっても、人は愛し合える、愛に違いなど無い、というメッセージを啓蒙する内容です。

 そして、動画がアップロードされた15年3月、米国では同性婚が憲法上の権利かどうか、というテーマが最高裁で争われており、ダイバーシティ(多様性)が極めてホットなテーマでした。さらに、動画公開後の6月26日、全米で同性婚が事実上合法化される判決が出て、ダイバーシティの話題は最高潮を迎えました。

 この大きな流れの中で、ダイバーシティを目に見える形で表現した気の利いた動画がある、と聞けば、ぜひ見てみたい、と思う人が大勢現れるのは必然的と言えます。

Sympathize

 次にSympathizeのポイントです。もしかすると、この動画は元々社会的、政治的に議論を起こしやすいテーマを扱っているので、共感されて当然と思われる方もいるかもしれません。

 しかし、逆にこのメッセージはキレイごと過ぎるがゆえに、退屈に感じさせる可能性だってありました。それでも多くの人に視聴され、シェアされた。これには理由があるはずです。

 HESSEの観点から言うと、この動画の内容上のポイントは、「予想を裏切る検証手法」です。メッセージを伝えるに当たり、ストレートに説明するのではなく、まずは映像上で何が言いたいか分からない状態を作る。

 骨が踊っている場面では、まだ動画が何を伝えるためのものか全く分かりません。そこで、視聴者は「一体なんだろう?」と好奇心が刺激される状態になります。

 その後、同性のカップルが現れて、先ほど骨同士がキスをしていたことを思い出し、何が言いたいかが明らかになります。

 さらに、様々な多様性を持ったメンバーが次々に出てくることで、レントゲンで見ればどんな人間にも大した違いはない、みな同じ人間に過ぎないのだ、というメッセージが明らかになっていきます。

 この動画が秀逸なのは、意外なやり方でメッセージを視覚的に表現し、「なるほど、やられた!」と思わせる点にあります。

Express

 Expressのポイントは、投稿キャンペーンへの展開です。動画のタイトルを使った「#LoveHasNoLabels」というタグを使って、自分がLove Has No Labelsと感じたストーリーをSNSへ投稿するように促しました。

 元々、社会的争点でもあり、普段からSNS上で活発に意見がかわされていたテーマでもあるので、人々はこれについて何らかの意見を持っている。そこに表現のネタを提供したわけです。前々回にお伝えした、「コミュニケーションのネタ」にしてもらおうという考え方を押さえたものと言えます。

 この事例は公共広告なので、営利企業のプロモーションで、こういったテーマを扱うことは難しいと感じるかもしれません。しかし社会的な争点に敢えて、企業としてのスタンスをあてることによって、ブランドに対する好感度をアップさせるというマーケティング手法は、特にグローバル企業ではよく行われています。

 実は、シェアランキング1位のAndroidの動画も、「be together. not the same.」というコピーで、Androidプラットフォームの機種の多様性を、異種の動物同士が仲良くしている場面を引っ掛けた内容で表現。ダイバーシティという2015年米国のトレンドに沿わせたメッセージとなっています。

 また別の事例で言えば、サムスンが耳の聞こえない人に対応する手話コールセンターの開設を、サプライズ動画にして配信し、注目を集めました。

 今後日本でも自社のCSR活動や社会的なスタンスを、マーケティングの観点からブランディングに活用する企業はもっと増えていくのではないかと思います。

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バドワイザーのスーパーボールCM「Lost Dog」

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この記事の著者

小野 敬明(オノ タカアキ)

外資系コンサルティングファームにて戦略コンサルティングに従事した後、2014年に企業のデジタル動画マーケティングを支援する株式会社Viibarに参画。自社のマーケティング活動を統括すると共に、動画を活用したマーケティング戦略や、データを基にした動画の企画・制作メソッドの開発を行う。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/01/18 08:00 https://markezine.jp/article/detail/23692

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