電車を前面に出す? 出さない? 鉄道会社の決断
――サイトの公開は2015年10月15日ですが、どのようなスケジュールで進められたのでしょうか?
塩野氏:年度の予算が決定したあと、4月からどのような施策をすべきか検討をはじめ、実施の決定が7月中旬でした。弊社のイベントは5~10月に集中しており、その中でも秋の行楽シーズンに合わせて10月中の公開を狙っていました。さらに年に2回更新で打ち出しているTVCMが10月下旬から11月中にかけての放送だったため、そこに照準を合わせた側面もあります。
実施の決定から3か月という決して長くはない制作期間でしたが、大枠としてオウンドメディアという答えに辿り着き、狙いが明確だったためコンテンツの立案に迷いはありませんでした。ただし、鉄道会社として電車を全面に出すのか、あまり見せないようにするのかという点は、かなり時間をかけて検討しています。
結果、鉄道会社の色は極力薄く、電車も見せない方向に舵を取りました。「ぐるっとプラス」の狙いは、電車に乗る機会が少ない方に対していかに電車に乗るきっかけをご提供するかということ。その点については一貫した方向性を敷いて、コンテンツ選定をしています。
実際、電車を扱う記事はハロウィーン仕様に飾ったラッピング電車など、季節性や話題性を考慮して、お客様が「お出かけしたい」と感じてもらえる理由が見いだせる場合だけにしています。
ユーザー目線だからこその“共感”が開く新たな可能性
――サイトの公開から約2か月、どのような手応えを感じていますか?
町屋氏:11月末までのデータしか出ていませんが、期待通りのPVが得られています。ただ公開直後は数字が伸びて当然ではあるので、ここからという想いです。
手応えという点では、取材をしている最中にとても嬉しい出来事がありました。秩父にある武甲酒造さんにお邪魔した際、西武鉄道のTVCMを見て秩父を訪れたという、女子大生に出会ったんです。彼女たちも西武線沿線に住んでいて、「記事に登場くださいませんか?」とお願いしたところ、「もっと沿線を盛り上げてほしいから、ぜひ!」と言ってくださって。

塩野氏:鉄道会社は手に取れる商品を提供しているわけではないため、沿線に住む方々が鉄道会社に対し、どのような想いを抱いているのか知る機会がなかなかありません。しかし今回の施策では、武甲酒造さんの一件はじめ、沿線に住む方が地域を取り上げられることを喜び、応援してくださることが分かりました。拡散力に期待はしていましたが、「一緒に盛り上げていきましょう」という声をいただけたことは、予想していなかった反響です。
町屋氏:そうしたお声を後押しに、今後はLINEやInstagramといったSNSとの連携も計画しているところです。また、実際に西武線沿線に足を運んでいただけるよう、「ぐるっとプラス」が主催するイベント開催なども視野に入れています。
塩野氏:地域の方々が「一緒に盛り上げよう」と言ってくださったのは、この新たなメディアに共感してくれたからだと思います。これはユーザー目線に重きをおいた情報発信ができる、オウンドメディアだからこそです。「ぐるっとプラス」を通じて、西武鉄道を利用していただくお客さまの「想い」を拾い集めながら、沿線内外の方々と一緒に沿線を盛り上げていけるような情報発信を広げていきたいと考えています。
出典元:D2Cスマイル