インターネットの現実
上の図は「ホリスティック・コミュニケーション」 (秋山 隆平, 杉山 恒太郎/宣伝会議)という書籍から引用・編集したものです。従来は4マスと呼ばれるテレビ、新聞、雑誌、ラジオは「多くの人に届けられるけど、表現力は弱い」とされてきました。逆に、対面販売のセールストークやカタログ、イベントなどでは「少人数相手になるけど、伝えられる内容は大きい」とされてきました。つまり、リーチ(到達性)とリッチネス(表現量)はトレードオフの関係にあったのです。
ではインターネットの場合はどうなのでしょうか。この図に重ねるとすれば、インターネットがカバーする領域はだいたいこのあたりになります。
インターネットは「そこそこ多くの人に届けられることができ、同時に表現力も高い」メディアだと言えます。ただし、これはインターネットの価値や可能性の話であって、すべてのウェブサイトやサービスに当てはまるわけではありません。
Yahoo! JAPANの月間ユニークユーザー数は同社のプレスリリースによれば約5000万人です。これは日刊紙(朝刊)の全国発行部数とほぼ同数となります。しかし、この数字の比較にそれほど大きな意味はありません。だいたいのイメージをつかんでいただくには良い数字かと思って引用しましたが、この数字をもって、単純に両者のメディア価値が同等ということではありません。
まず、Yahoo! JAPANのユニークユーザーはサイト全体の合計であるため、もし全員に広告を見てもらおうとしたら、すべてのページに広告を掲載しなければなりません。トップページのブランドパネルもローテーション表示ですから、出稿しても5000万人に見てもらえるわけではありませんし、全員に広告を見てもらうためには、買い占めなければなりません。
新聞の数字も合算ですので、同じように5000万人に届けようとすると各新聞社に広告を掲載しなければなりません。また新聞の場合は、会社や病院などで回し読みされることがあるので、発行部数と読者数には乖離があります。同時に購読していても、読んでいない人はそれなりにいるでしょうから、実際の購読者数は上方修正が必要なのか、下方修正が必要なのか微妙なところだと思います。
ウェブサイトを作っただけでは誰も見ない
そして、これが企業サイトやキャンペーンサイトになると、ほとんどリーチはありません。ウェブサイトは作っただけでは誰も見てくれません。だからYahoo!などに広告を出稿してトラフィックを集めるわけですね。
このネット内の予算循環の話や、(こうした広告費をかけて集客しなくてよくなるような)企業サイトのメディア化の話も取り上げるべきテーマだと思いますので、別の機会にあらためて書きたいと思います。
最近のキャンペーンサイトはFlashを使って表現力という点ではすごく高まっています。オンライン見積もりのようなインタラクティブな機能も持っています。対面販売とまではいかないまでも、カタログ以上に情報を提供できているサイトもあります。ただ単にリーチの観点からだけ言うと、キャンペーンサイトも企業サイトもほとんど見られていません。認知すらされていないというのが正直な結果です。
別にインターネットがすごくないと言いたいわけではないのですが、広告メディアとしてインターネットを捉えた場合、良くも悪くもこんなものです。もう少し実例を見ていきましょう。