課題はユーザーへの啓蒙・メディアとの連携
深田:メディアとの連携も必要とのことですが、一方で、メディアは自社データのビジネス化に課題を感じているとオラクルの大山さんがお話されていました。これは、広告主やユーザー側のリテラシーの問題もあるかと思います。メディア・広告主・ユーザーの三方を啓蒙しないと、ビジネスとしての成立は難しそうですね。
中村:特にメディアも我々広告主も、データをどう活用していいか、まだ理解しきれていません。まずは、メディアと広告主が協力してデータを使った売り場提案などを成功させ、それを業界に打ち出していけば、ビジネスとして動き出す可能性はあるかと思います。メディアのデータは宝の山ですから、陽の目を見ないのはもったいない。
深田:しかし、ユーザー側に立つと、データが取得される不安が払拭できないという課題もあります。もちろん、企業側が利用するのは個人情報ではなく統計的に処理されたデータですが……。ここにも認識のギャップがありますね。
私はデータの活用とユーザー間の溝の解決には、おもてなしの発想が鍵になると考えています。ユーザーが「この企業になら知ってもらっていい」と思えるような信頼感のある企業であれば、データ活用が進められると見ています。
例えば、ライオンさんのように昔から情報提供の場を用意して、対面で悩みを聞いてきたような歴史・ブランドを持つ企業がデータを活用するのは、今までのサービスの延長線上として意義を示せればユーザーとしても納得感があるのではないでしょうか。
中村:100人中99人が納得できても1人が嫌がった時点で、信頼は瓦解しかねません。99人が守ってくれるという期待もありますが、そこを頼りにするのも大きなリスクです。ですから、長くお客様と向き合い続けている企業でも一歩が慎重になる面はあるかと思います。
深田:ここは難しい問題ですね。少しずつ地道に続けていくしかなさそうです。
「Lideaとタッグを組みたい!」と声があがる世界を作りたい
深田:ブランドを守ってくれる、と仰いましたが、そのようなファンを形成するための施策はお考えですか?
中村:洗濯用洗剤の「トップ」でファンコミュニティの取り組みを始めました。Lideaでも、今後ユーザーのコミュニケーションを活性化するような方向も検討していますし、もっと力を入れていきたいと思っています。
深田:オンラインコミュニティの予算の正当化も難しいですから、エンゲージメントを高め、ファンを作っていくことがブランドを守る人を増やすことにつながる。ひいてはデータの活用がしやすくなる、という構図は説得力がありますね。
中村:Lideaの生活情報を発信するという、サービスの本質があった上でデータを活用するからこそ、有用な見解や施策が生まれ、ファンとつながるプラットフォームにもなっていくと思います。そこからさらに営業支援ツールや、マーケティング支援ツールとしても昇華させていきたいと考えています。
社内外から「ぜひ、Lideaと一緒に企画を作りたい」と言ってもらえるような世界を作りたいですね。
キーワードは「D2O」
深田:最後に、今後はデータをどのように活用されていくのかお聞かせください
中村:今、個人的に打ち出しているキーワードが「Data To Offline(D2O)」です。文字通り、オンラインで集めたデータを、オフラインで活用することです。これを推進していきたいですね。
オフラインは、店頭POPやテレビCM、店頭提案などの営業支援が最初のステップです。そのためには、オウンドメディアで足りない部分を、メディアとタッグを組むことで補う必要があります。パートナーを探し、データの有効活用についてしっかり議論していきたいですね。
深田:D2Oが進めば、さらに「おもてなし」が広がりそうで、これからの展開が楽しみです。本日は、ありがとうございました。