SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

新着記事一覧を見る

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

広告運用の情報サイト「Unyoo.jp」出張所

【有園流】年間10億円以上の大型案件獲得のコツ~人を惹きつけるストーリー構築からプレゼン手法まで

「うまい話で裏切らない」ストーリーが重要

 このストーリー性は仕事でも重要だ。とりわけ、競合提案などの重要な局面で非常に大事なことだ。なぜなら、クライアントは複数の提案を同時に受ける訳なので、クライアントの記憶に残る印象的な話をした方がいいからだ。先ほどのサムラゴウチマモル現象では、「うまい話に騙された」という感じだが、私たちはクライアントを騙してはいけない。当然だ。なので、「うまい話で、かつ、裏切らない」という提案をしなければならない。

 この「うまい話」が非常に重要で、クライアントへの提案では最も神経を使うところだ。ウソの話を作ってはいけないが、「なるほど、そういうアイデアがあったか!」「そういう話ならうまく行きそうだ!」とクライアントに感じてもらう提案を心がけたい。そして、「裏切らない」話になるように工夫する。

 「なんかうまい話だけど、そんなに簡単じゃないでしょ」などと疑念を持たれないように、データや分析結果、シミュレーションなどを駆使して、単なる、うまい話ではなくて説得力のある話にしていく。提案段階では、実際はやってみないとわからない事ばかり。それを、いかにして、「裏切らない」話にできるか、ここに勝負がかかっている。

うまい話の作り方と悪い事例

 この「うまい話」をどのように作っていくか。いつも成功する訳ではないので、自分が意識していることが参考になるかはわからない。ただ、提案作成段階では、自分は「何を売っているのか」に注意を払っている。

悪い事例その1:表紙だけ変えた提案書

 よく見かけるケースで悪い例だと自分が思うのは、表紙だけ変えて他のクライアントにも持っていけるような提案資料を使ってプレゼンすることだ。何度か見たことがあるのだが、A社に対しての提案資料をほとんど表紙だけ変えてB社にも提案しているケースだ。広告の運用を売りにしている代理店の場合に、自社の運用の強み・メリットを主軸にして提案資料を作っている。そうすると、ほとんど同じ内容の話をA社にもB社にもしているのだ。これは、運用のノウハウを売りにしているということだ。

 あるいは、媒体社と特別のディールを結んでいて、「このメニューや広告枠については弊社しか扱えないんです」というのを売りにしているケースもある。あるいは、「このツールは独自で開発したツールで、こんなにスゴイんです」と自社ツールの強み・メリットを売りにしているケースもある。

 このようなケースだと、私自身は、良い提案だとは感じない。なぜなら、自社の強みを売っているに過ぎないからだ。その自社の強みがクライアントのニーズに合致している場合は、それでもいいかもしれない。しかし、その提案は、それぞれの個別クライアントの状況に応じて深く考えた提案にはなっていない。説得力あり、かつ、共感してもらえる話にはならない。

 本来、それぞれのクライアントの、それぞれの個別の課題があって、そこを深く抉り出して、それぞれの個別の具体的な状況に対応して、個別のアイデアと提案のストーリーを考えなければ、印象的な刺さる提案にはなり得ないと思っている。「あー、うちのことをよく考えてくれているなぁ」とクライアントに感じてもらうことが大事だ。それが共感の礎になる。

 つまり、個別のクライアントに対してオリジナルのアイデアとストーリーを作り上げて、それを提案の売りとして主軸にしなければ、「あー、なるほど。そういうアイデアがあったか!」とか「そういう話ならうまくいくかもしれない」という「うまい話」にはならないと思うのだ。その「うまい話」があった上で、自社の独自のノウハウなど強みがその話の中で活かされるようにストーリーを展開した方がいい。「うまい話」を作る。そこにこだわる。つまり、「アイデアとストーリーをクライアントに売るんだ」という意識を強く持たなければ、良い提案にはならない

悪い事例その2:ツギハギの提案書

 もう一つ、頻繁に目にする悪い例を挙げておきたい。それは、ツギハギの提案書である。提案日までの時間があまりない場合にありがちだし、チーム全体を束ねるリーダーが不在だったり、リーダー自身にストーリーを構築する能力が不足している場合に起こりがちだ。

 たとえば、総合広告代理店でもネット専業代理店でもよく見るのだが、どのターゲットに向けてどのようなメッセージを伝えるべきか、つまり、Who-to-say や What-to-say、How-to-say についての調査はマーケティングセクションが担当して資料を作り、クリエイティブのパートは制作チームが担当し、メディアプランは業務推進部が担当し、広告運用のパートについては運用チームが資料を作成して、それらをつなぎ合わせて提案資料を作成するケースがよくある。

 このような分担作業自体は悪くないと思うのだが、制限時間内で全体のストーリー構成を統括するリーダー的存在が不在だったりすると、結果として、全体のストーリーに一貫性がなく、ちぐはぐで、ホコロビの多い、薄っぺらい提案になってしまう。このようなツギハギの提案も絶対に避けたいところだ。すべては「アイデアとストーリーを売るんだ」という強い意識をチームリーダーを中心に持つことができるかに懸かっていると思う。

次のページ
アイデアとストーリーに説得力を持たせるコツ

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
広告運用の情報サイト「Unyoo.jp」出張所連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2016/04/21 10:00 https://markezine.jp/article/detail/24298

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング