多くの人が勘違いしているDMPの本当の価値
データ活用において、切っても切り離せない存在として注目されているDMPだが、現状と理想には大きなギャップがあると、菅原氏はいう。
「DMPは、集める・分析する・活用するというシンプルな基盤が理想です。しかし、ほとんどのDMPは、特定の施策に使うことを前提としたものになってしまっています」(菅原氏)
一方、トレジャーデータでは、これまで提供してきたクラウド型データマネジメントサービスが、DMPとしての活用されるケースが増えてきたため、データを蓄積することに特化し「TREASURE DMP」としてサービス化した。同サービスではCRMなどの業務データやWebアクセスログ、メール配信ログなどあらゆるデータを集約できる。そして、APIを公開することで、さまざまなソリューションと柔軟に連携できるようにし、菅原氏のいう「集める・分析する・活用する」という条件を満たした。
最近ではMicrosoft Azure(以下、Azure)との連携も開始し、TREASURE DMPで蓄積したデータをSQL DatabaseやPower BIに展開できるようになる。ためるデータは、どんなフォーマットのどのような種類のデータでも問わない上に、それをどう活用するかも企業の戦略次第だ。そのためにオープンなAPIを備え、自由な活用を促しているという。
Azureのユーザー企業は、デジタルマーケティングで実績のあるTREASURE DMPでAzureに溜まったデータを分析、戦略的に活かせることになる。またTREASURE DMPのユーザーは、IoTや機械学習など、エンタープライズクラウドとして実績のあるAzureで手もとのビッグデータから更なる価値を生み出すことができる。「両社のお客様に対し、AzureとTREASURE DMPのシナジーが新しい価値を提供できるようになる。その相乗効果にも期待しています」と堀内氏は語る。
これに対し、自社でAzureを活用し、また現在パートナーとしてTREASURE DMPの導入支援を行っているという菅原氏も「もともとDMPは、『たまってくるデータをどう活用するか』という思想から生まれたものです。そのため、あらゆるデータを蓄積でき様々なツールと連携できるTREASURE DMPは、DMP本来の価値を提供していると思います」と語った。
広告主もデータやテクノロジーの知識が必要
このデータの集約・活用に対する考え方について、堀内氏は「データドリブンの思想を先進的に取り入れている企業では当たり前のように取り組んでいる」と語る。たとえば、ECとリアル店舗を展開している場合、一昔前であれば両方のチャネルで顧客を“奪い合う”という図式が見られた。ところが現在は、双方のデータを活用し、ECからリアル店舗への誘導シナリオを描くなど、チャネル別ではなく企業全体として売上向上を目指す動きが広まっている。
データの活用方法もさまざまだ。たとえば良品計画では、アプリやPOSのデータをTREASURE DMPに蓄積し、専門のアナリストの分析に利用するのはもちろん、Azureを通じてExcelに分析結果を展開して各店舗の責任者が自らデータ分析できる仕組みを構築している。(関連記事はこちら)
これにより、「メール配信したい」「広告配信したい」と施策ありきではなく、「売上を上げるためにはどのマーケティング施策を選択すべきか」と課題を主軸に蓄積されたデータを基に判断できる環境を整備しているのだ。
松田氏はこれに加えて、「データドリブンが前提になっているこの時代、広告主も今後はデータやテクノロジーに関する知識を身に付けることが必要ではないでしょうか」と指摘する。そして松田氏のコメントに対し菅原氏、堀内氏の両氏も「先進的にマーケティングを行っている企業はIT部門との連携が上手くいっており、それは知識が成せるもの」と同様にデータやテクノロジーに関する知識の重要性を唱えた。
もはやマーケティングにデータは欠かせないといっても過言ではない。ITベンダーや技術者に要件を伝え適切な支援を受ける上でも、テクノロジーやデータを扱う上で最低限必要な知識やノウハウは自分たちで身に付ける必要が出てきた。今後、データドリブンマーケティングの成功の鍵は、マーケターが持つデータやテクノロジーに関する知見に左右されるのではないだろうか。
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