スマートフォンとテレビは対立関係ではない
生活者のモバイルシフトが加速している。先月6月20日に、博報堂 メディア環境研究所が発表した、生活者のメディア接触の現状を調査・分析する「メディア定点調査 2016」によると、メディア総接触時間は過去最大の393.8分に伸長したと同時に、「携帯・スマートフォン」と「タブレット」の合計が全体のシェアの3割に迫る勢いだという。そして「スマートフォン」の所有率が70.7%と昨年とほぼ変わらず横ばいになったことから、すでにスマホシフトは完了したと捉えることもできる。(関連ニュースはこちら)
一方、昨今ではテレビCMだけでは若年層へ十分なリーチをはかることができないという課題が顕在化している。テレビなどの4マス媒体と、スマートフォンをはじめとするデジタルデバイスをうまく組み合わせたコミュニケーション設計が求められる今日、マーケターは何を判断基準とすべきなのか。2016年6月30日(木)に開催されたエム・データ主催のイベント「新世紀テレビ大学」では、「テレビデータが拓く未来」をテーマに、有識者によるディスカッションが繰り広げられた。同イベントから、角川アスキー総合研究所の遠藤諭氏、電通 電通総研の奥律哉氏をパネリストに、エム・データ顧問研究員の境治氏をモデレータに迎えたセッションをレポートする。
境:先日発表された博報堂 メディア環境研究所の「メディア定点調査」。2011年と2016年のデータを比較して、この5年間の変化を振り返ってみましょう。男性15~19才に注目してみると、2011年の携帯電話からのインターネット接続時間は84.3分。これが5年間で183.3分(「携帯電話・スマートフォン」)にまで、約100分増加しています。タブレットも含めると、さらに40分増加です。
しかし、モバイルの接触総時間の増加に伴い、単純にテレビの接触時間が減っているわけではありません。例えば、女性15~19才に注目してみると、携帯電話・スマートフォンの接触時間は2011年の88.2分から2016年には203.8分へ増大している一方で、テレビの接触時間は2011年が153.1分で2016年は144.5分と、わずかに微減している程度です。これと同様の現象は女性20代にも見られます。つまり、若い女性はテレビを相変わらず見つつ、さらにスマートフォンを使っているということです。遠藤さんはこのデータを、どう読み解きますか?
遠藤:弊社が持っているデータでも同じ傾向が出ていますが、「テレビが見られなくなった」としばしば言われるものの、見ている人は意外にテレビをよく見ているんですよね。ただ一方で、まったくテレビを見ない層も存在している点は注意すべきです。