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コーポレートサイトの適正なKPI数は? 何を見ればいい? みんなが納得できるストーリー作りを考える


 企業の「顔」として機能するコーポレートサイト。関係部署も多いだけに目標設定も難しい側面がある。一体どうすれば会社全体で筋の通った設定ができるのか? 電通デジタルの福山一樹氏と、アクセス解析の専門家・小川卓氏が語り合う対談第2回目のテーマは「KPI」です。

 電通デジタルのプロデューサーとして多くのコーポレートサイトを手掛ける福山一樹氏と、アクセス解析の専門家・小川卓氏が「KPIの立て方」に迫ります。
 ★両氏がコーポレートサイトの「ボトルネックの洗い出し方」を考える記事も公開中! 詳しくはこちら

 福山一樹氏:1999年電通入社。クリエイティブ職、営業職を経て2009年より現職。大企業のコーポレートサイトを中心とした大規模プロジェクトのマネジメントに携わる。

 小川卓氏:マイクロソフト、ウェブマネー、リクルート、サイバーエージェント、アマゾンで勤務後、独立。株式会社Faber Company社外取締役CAOなどを務める。

ブレないサイト作りは「KPIの社内浸透率」がものをいう

福山:僕がクライアント企業の経営者の方と話すときって、コーポレートサイトの最終的なデザインの承認をもらいに行く場合が多いんです。で、サイトのコンセプトが社内ネゴシエーションで通っておらず、その日が社長に見せる初めての機会ということもあって。

 そんなときに社長から「ウーン、悪くないけど、俺さあ、Appleみたいなデザインが好きなんだよね」って現場の担当の方とは全然違うことを言われてしまう経験が何回もあるんですよ(笑)。

 その時こそ必要なのがKPIだなと。このプロジェクトがなぜ始まって、事業分析の結果、何を目的としているのか。なぜこの構成で、このレイアウトで、このデザインなのか。その経過をロジックで話すと「ああ、うちは商品ページも事業ポートフォリオも多いから、Appleみたいなシンプルさは実現できないのね。だったらこれでいい」と、個人的な好みではなく、建設的な議論をしてもらえることが多いんです。

 まあ、それでも理解されず、社内ネゴも通っていなかった場合は、「何とかしましょう」と、ある程度ご意見を取り入れざるを得ないんですけどね(笑)。

小川:「本当にいいデザイン」って表面の話ではないんですけどね。コミュニケーションデザイン含めてのデザインだから。

福山:その通りですね。コーポレートサイトの場合、広報機能が優先で、収益性は二の次としている場合もあります。マスコミュニケーションや店頭など様々なメディアとの関係性の中で、このサイトをどう位置づけるのか、序盤でちゃんとコンセプトダイアグラム(※)を書いて、取れるところはデータ的な裏付けを取ったうえで「ボトルネックはここ」「これを解消するためにこうする」という旗印を持っておかないと。「みんなが立ち返れるコンセプト」って重要です。

小川:しかも、それを言語化しておくことが大事ですよね。ジャッジに迷った時も、判断材料として欠かせないですから。

福山:コーポレートサイトに多少収益性があったり、会員サイトを統合していたりすると、追っていくべきデータ量って膨大じゃないですか? サイト外のソーシャルからの流入など、追っていくのも大変ですよね。

小川:そこにもKPIという概念が必要なんですよ。追うのが「集客を●%増やす」なのか、「来年のこの時期に問い合わせをここまで増やす」なのか。アナリストとしても「こういう人を増やしたい」「次はこういうことをしたい」とクライアントに言われたほうが分析データをしっかり絞れます。

※コンセプトダイアグラム:Webサイトのコンセプト(存在意義、ゴール)を図解する手法。

「KPIの適正な数」って?

福山:KPIの適正な数って、いったい何個ぐらいなんでしょうね? 例えば「ナビゲーションの数は昔なら7±1、スマホ時代の今は5±1が適正」といったセオリーがあるじゃないですか。

 ある業界のトップ企業は、昔からWebに力を入れていて、例えばコーポレートサイトのユーザビリティランキングでは、いつも上位に入るサイトをお持ちです。そこが、部署ごとにめちゃくちゃ細かくKPIを決めたときがありました。僕たちも真摯に定めたんですよ。「ここの部署ならこう、ここならこの数字」と。けれど、最終的にはうまく回らなかったんです。

小川:そうですね、「KGIは決まるけど、KPI自体設定するのが難しい」という企業もあるし、逆にすごく細かくKPIを設定する企業もありますね。どちらもうまくいく場合、うまくいかない場合があると思います。中には40~50個設定する企業さんもありますよ。

 (一同騒然)

小川:そうすると、担当ごとに運用することになるんですよ、KPIを。

小川:要はKPIの数は「KPIというものをその会社でどうとらえているか」によるんですよね。正解はひとつではない。KPIを全社で運用する目標にするやり方もあるし、担当者の数字の指標として定義するなら、たくさんできるわけです。

 あるいは、「経営者がゴールだけ決めて、道筋は現場に任せる」パターンもあります。この場合、経営者が見るのはKPIではなく、KGI。「俺が見るのは獲得数とコストだけだぞ。CTRやCPCなど細かい数値は見ない。リスティング広告や代理店を使う・使わないも自由にやれ。必要なものに予算は出すから」というアプローチです。

福山:それだと、どこがキーパフォーマンスなのかを現場が分かっていて、自分たちのKPIを決めておかないといけないですね。数値が上がったとき、下がったときに「どこがボトルネックなんだっけ」と読み解きづらくなりますから。

小川:加えて、「KPIとは何なのか」「どうやって決められているのか」、社内で統一的な見解として理解されていないとグチャグチャになってしまいますね。あれもこれもと、各部署で階層の違う数値をKPIに定めると、失敗しやすいのは明らかです。

 私がよくクライアントさんお伝えするのは「KPIを決めたら半年ないし1年間はそこにフォーカスしましょう」ということ。となると、KPIの適正数は本来、5つぐらいなんですよ。KPIのKは「Key」。つまり「人・モノ・金・技術など社内のリソースを一定期間ここに投下する」と同義で、社内の体制とか、やることの方針に影響するはずなんですよ。特に大きな企業ほど。

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上流から決めると、KPIはおのずと適正な数に絞られる

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この記事の著者

井田 奈穂(イダ ナホ)

早稲田大学卒業後、記者として活動。企業広報を経て、現在フリーランスのライターとして活動。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/08/23 10:49 https://markezine.jp/article/detail/24941

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