企業と消費者の距離を縮める
これらの事例を紹介しながら、田端氏はLINEにより企業と消費者のコミュニケーションが変化していることに触れる。満足した顧客が写真や感謝の言葉をLINEで送る例もあるという。「これまででは考えられないこと。LINEは友人や家族などクローズドでプライベートなやりとりに、という設計思想があった。これが、企業と消費者とのやりとりでも引き継がれている」と田端氏は語る。
「われわれのミッションは”Closing the distance”――距離を縮める。企業と消費者の距離も縮まっている」(田端氏)
LINE ビジネスコネクトの利用数は現在約90社。この中には自治体も名を連ねる。1年前は30社から40社程度だったというから、順調な推移だ。利用の敷居を下げるべく、各ベンダーが提供するマーケティングツールとの提携も進めている。顧客自身がAPIとの連携作業を行うことなく、そのままLINE ビジネスコネクトが使える。現在、セールスフォース・ドットコム、DAC、電通iXなど約10社と提携しており、今後も増やしていくとのことだ。

広告事業拡大の起爆剤、運用型広告「LINE Ads Platform」
そして田端氏は6月に本格ローンチをした運用型広告「LINE Ads Platform」も紹介した。
同サービスを田端氏は、「100万円前後の予算で、クリック課金でLINEの中でマーケティングができる」と説明する。同社が買収したフリークアウト傘下のM.T.Burnのスマホ向けネイティブ広告プラットフォーム「Hike」を配信基盤に採用し、LINE内のタイムライン、そしてLINE NEWSへの配信がワンストップで行え、Hikeの既存のアドネットワークも利用できるという。
同様に運用型広告を展開するFacebook、Twitterとの違いとして強調したのが、リーチの広さだ。TwitterやFacebookの月間アクティブユーザー数(MAU)が2,000万から3,500万人であるのに対し、LINEは約6,000万人。「女性や若いライトユーザーもサイレントマジョリティーとしてたくさんいる。ここに対して訴求したい通販コスメ、EC系アパレルなどにおすすめ」とユーザー層の違いを明らかにした。
実際、開始から数ヶ月で出稿の多い分野はコスメ、ゲームだという。同配信プラットフォームではターゲティングが可能で、性別と年齢の組み合わせが最も利用されており、予想以上に動画のクリエイティブが多いという。「テレビを見ない若者層向けに、テレビキャンペーンを置き換えているような形」と分析した。
LINEにとっても学ぶことは多いようだ。「LINEアカウントやスタンプ以上に、運用型では常に広告主のROIと向き合っている」と田端氏、改善に向けたサポートも行っているという。
7月で利用企業は430社程度、今後は「主要なネット広告のレスポンス型クライアントの数」である1,000社を目指す。9月以降は、これまで掲載を断っていた通販コスメや健康食品なども緩和する方向で、これも目標達成に一役買いそうだ。また、配信先も拡大を検討中で、LINE NEWSやゲームなどの周辺サービスにも配信枠を広げていくという。
先に東証一部とニューヨーク証券取引所に上場を果たしたLINEにとって、広告は戦略的にも重要だ。2015年の売上高は1,200億円、これを広告、ゲーム課金、スタンプの課金やキャラクターグッズのロイヤリティが3等分している状態というが、広告はこの中で急成長している領域。「上場プロセスでも、投資家からの質問は広告に集中していた」と明かす。
最後に田端氏は、「法人事業強化にあたってLINE Ads Platformは起爆剤になる」と意気込みを伝え、セッションを締めくくった。