「直近7日以内で3回以上検索したユーザー層」など緻密なターゲティングが可能に
MarkeZine編集部(以下MZ):以前、YDNサービスマネージャーの矢吹さんには「Yahoo! DMP×YDN」のテーマで、またスポンサードサーチのサービスマネージャーの齋藤さんには「スポンサードサーチの地域ターゲティングへの活用」というテーマで、それぞれ本連載にご登場いただきました。
今回は、ヤフーの広告プロダクトの中でも定番と言えるYDNのサーチターゲティング機能のアップデートを中心に、その内容や、スポンサードサーチとの併用の可能性についてうかがいます。早速ですが、前提としてYDNのサーチターゲティング機能について、概要や広告主のニーズなどを教えていただけますか?
矢吹:YDNのサーチターゲティングは、ユーザーが過去に検索したキーワードを元にターゲティングをして、ディスプレイ広告を配信します。YDNには複数のターゲティング機能がありますが、検索というユーザーの強いインテントを捉えてアプローチできるサーチターゲティングは、効果が大きいですね。広告主にもその点が受け入れられており、サイトリターゲティングの次に多く使われている機能です。
これまでは「過去30日間に1度でも検索したユーザー層」を指定することができましたが、今回のアップデートで、さらに細かく期間や回数を指定できるようなりました。そのため、「直近の7日以内に3回以上検索したユーザー層」など、より緻密なターゲティングが可能になりました。
スポンサードサーチより自由度の高いYDN
MZ:なるほど。アップデートの内容はさらに詳しく後ほどうかがいますが、そもそも広告主にとっては「パフォーマンスが高い」と認識されていたんですね。
矢吹:そうですね。あるワードを検索した際、その顕在化したニーズをピンポイントで捉えるのは、やはりスポンサードサーチが得意とするところです。ただ、出稿が検索したそのタイミングに限られることや、キーワードと訴求内容のレリバンシー(関連性)が強くなければクリックされないことを考えると、ニーズが強いユーザー層に適した広告と言えます。
一方、YDNはディスプレイ広告ということもあり、必ずしも強いレリバンシーを必要とせず、かなり自由度の高いターゲティングを設定いただくことが可能です。
MZ:具体的に、どのような設計が可能なのでしょうか?
齋藤:スポンサードサーチの場合、検索キーワードと訴求内容とのレリバンシーが低いとCTRが低くなってしまったり、クリックされてもCPAが見合わないケースもありますので、広告主が「キーワードAを検索しているユーザーはきっとBにも興味があるだろう」とストーリーを立てられても、Bは優先順位を下げざるを得ません。それを、YDNならカバーできるわけです。
矢吹:極端な話、ユーザーから見たらまったく関係ないと感じる訴求だったとしても、広告主側でオーディエンスのプロファイルを想像し、潜在ニーズに訴えられると判断したなら、入札し配信することも十分可能なのです。
興味・関心の強いユーザー層を検出してアプローチ
MZ:それが、YDNとスポンサードサーチの併用の効果なんですね。
矢吹:ええ。使う側のアイデア次第で、顕在化したニーズを高確率で捉えながら、少し前のニーズの掘り起こしやユーザーが気付いていない潜在ニーズにもアプローチできるんです。これは今に始まったことではなく、以前からこの相乗効果について広告主や代理店にお伝えし、併用をお勧めしてきました。
MZ:その上で、今回の機能アップデートがあると。先ほど、期間と回数を細かく指定できるという点をお話いただきましたが、詳しくうかがえますか?
矢吹:今回の機能アップデートは、大きく2点あります。先ほどの有効期間(リーセンシー)と検索回数(フリークエンシー)の細かい指定を可能にしたのが、ひとつ目の改善です。
以前の「過去30日」という括りでは、たしかに一度は興味を持って検索したとしても、今と比較するとその興味が移っていることは往々にしてありますよね。それに、30日前に一度検索したテーマと、先週1週間で3回も5回も検索したテーマでは、当然後者のほうがインテントが強い。こうしたインテントの強さをしっかり把握して、配信できるようにしたのです。
MZ:どのくらいのスパンで、回数を指定できるのですか?
矢吹:現状、有効期間は過去1日以内、3日以内、7日以内、14日以内、30日以内から選択可能になります。検索回数は検索回数を1回以上、2回以上、3回以上から選択可能になります。
リーセンシーとフリークエンシーを絞り込んで細かいターゲティングをすることによって、CTRなどが大きく改善できることは、社内のデータ分析で明らかになっています。だだし、絞り込んだ分リーチは小さくなり、露出量の低下につながる可能性があります。単に絞り込みをするだけではなく、リーセンシーとフリークエンシーの強弱を調整して、成果効率と成果数のバランスを取ることこそが、本機能の効果を最大化するポイントになってくると思います。
URL入力によるキーワード提案機能も実装
MZ:では、もうひとつのアップデートを教えてください。
矢吹:もうひとつは、URL入力によるキーワード提案機能の追加です。サーチターゲティングでは、仮にAというワードを検索したユーザーに、どういったワードを適合させるかを指定して広告を配信しますが、これをうまく選べるかどうかで効果が大きく変わります。そこで、誘導したいサイトのURLを入れると最適なキーワードを提案するツールを実装して、その提案を参考に選んでいただけるようにしました。
MZ:なるほど。そうすると先ほどお話いただいた、広告主側でオーディエンスを想定してストーリーを立てた上で関連キーワードを考える、という属人的な発想だけでなく、アルゴリズムによる提案も盛り込んでいけるのですね。
YDNとスポンサードサーチで潜在~顕在ニーズをカバー
MZ:これらのアップデートによって、YDNでもきめ細やかな運用が可能になるのですね。では、スポンサードサーチの運用を中心に行っている広告主の視点からは、YDNとの併用はどのような可能性が魅力でしょうか?
齋藤:スポンサードサーチは、ニーズがはっきりと顕在化したときにユーザーとの接点を持てる広告ですが、ニーズが顕在化する前の潜在レベルでも人は検索しています。そうした潜在レベルに対してアプローチできるYDNは、強い味方になる機能だと思いますね。
たとえばユーザーが「リゾート地」と検索した場合、それがハワイのことなのかモルジブのことなのか、あるいはただ癒されたいだけで温泉でもいいのかまでは分からないので、このタイミングの検索に、スポンサードサーチを費用対効果をあわせながら出稿するのは難しいです。でも、YDNならイメージを広げて汎用性高くアプローチできます。
その結果、潜在ニーズに働きかけて、スポンサードサーチでクリックが見込めるまでニーズが顕在化する可能性もあると思います。まさに、理想的な補完関係ですね。
MZ:なるほど。先日Insight for Dに掲載されていた、購入検討と検索開始の関係性に関する記事でも、自動車を購入したユーザーが「購入を検討し始めた」と考えている時期より、関連キーワードを検索し始める時期はかなり前になっていました。
広告プラットフォームとしてプロダクトの併用を促進
矢吹:そうなんです。まさに、ユーザー本人が認識しているより前に、検索には潜在ニーズが表れているんですね。さらに細かく検索キーワードを見ていくと、たとえば購入直前だと「自動車ローン」関連を検索するなど、時間が経過してニーズが強くなるにつれて、求める情報が変遷していました(参考情報 )。
これらの心境を踏まえてYDNで適切にアプローチできると、時間軸に沿ってかなり早い段階からユーザーと接点を持つことができると思います。
MZ:まさに今回のアップデートは、そうしたきめ細かいアプローチの実現を可能にするものなのですね。スポンサードサーチとの相乗効果もますます見込めそうです。最後に、今後の展望をうかがえますか?
齋藤:前述のように、効果が見合わないキーワードをYDNで適用するなど、今まで以上にYDNとセットで考えて運用を最適化していけると思います。スポンサードサーチでも、たとえばキャンペーンごとだった「対象外キーワード」リストを共通して適用できるようにするなどの機能アップデートをしているので、よりYDNとあわせたキーワードの精査・保守を行いやすくなっています。
矢吹:今回の機能アップデートは、我々も以前から見込んでいましたが、同時に広告主や代理店の皆様からの要望も高かったんです。スポンサードサーチとYDNは併用のポテンシャルが高いため、このふたつをバランスよく組み合わせることで相乗効果を出すことが可能になります。小規模なトライアルでも効果は上がるので、ぜひ試していただきたいです。