2020年、ネイティブ広告市場はディスプレイ広告市場の2.5倍に
「“ネイティブ広告”という言葉は、今や日本でも浸透し、よく耳にするようになった。今日は米国発のネイティブ広告プラットフォームを提供するSharethrough(シェアスルー)がサンフランシスコで行ったイベント『NATIVE2016』で語られた米国のネイティブ広告の現状について共有したい」と、スマートニュース 執行役員の川崎 裕一氏はセッションの口火を切った。
まずはじめに、「スマートフォンが一生使えないのと、自分の指を一本切るのと、どっちがいいか?」という質問を川崎氏は問いかけた。会場では「スマートフォンが使えないほうがいい」という回答者が4割弱程度だったが、この質問を2000年代以降に生まれた米国のミレニアル世代に聞くと「指を切るほうがいい」と回答する人が約6割に上るという。
「これが米国のミレニアル世代の現状だ。これが私達が直面していく世界で選択されることであり、このギャップに立ち向かわないと、ミレニアル世代のニーズに応えていくことはできない」(川崎氏)
日本と同様に、米国でもスマートフォンにおける時間消費は大きく伸長し、ユーザーはスマートフォン上で多くの時間を過ごしている。さらにインフィード広告を含むネイティブ広告市場は、2020年には3兆3,000億円まで伸長し、ディスプレイ広告市場の2.5倍にまで拡大すると予測されている。一方でディスプレイ広告市場の成長は横ばいで、米国では2016年の時点ですでにネイティブ広告がディスプレイ広告市場を上回っているという。
そしてここで、川崎氏から興味深い調査結果が紹介された。NielsenとSharethroughによる調査結果によると、ディスプレイ広告は見られるだけだが(SEEN)、ネイティブ広告は読まれる(READ)ことが明らかになったという。これは大きな違いと捉えられるが、その結果何が起きるのか。
「よくインフィードのネイティブ広告において、画像にこだわる人は多くいる。その一方で、テキストに関しては意外に工夫する人が少ない。画像は一般的には目を止める効果があるものの、ネイティブ広告は読まれるものであるからこそ、ブランド名やブランド想起につながる文脈に沿った言葉をテキストに散りばめることでブランド想起につなげることができる」と川崎氏からネイティブ広告の意外な盲点が指摘された。
加速するネイティブ広告の動画化/自動再生動画を好むミレニアル世代
次に、動画の視点からネイティブ広告の現状が解説された。
上記の図は、赤色がYouTubeにおける動画再生回数、青色がFacebookのインフィード上での動画の再生回数、そして黄色がSnapchatの動画再生回数を示したものだ。FacebookとSnapchatではインフィードで動画が自動再生され、これはインスタントプレイと呼ばれている。このインスタントプレイが大きく伸長しており、動画のデフォルトの表示方法になりつつあるという。
「2015年の推移から、2016年には確実にFacebookとSnapchatの2つがYouTubeの動画再生回数を抜くだろう。また、動画を自動再生で見ることを好んでいるミレニアル世代は約8割にのぼる。もはやタップして動画を見ることを、不便と彼らは感じているのだ」(川崎氏)
またミレニアル世代の7割は、動画を音声なしでみながらヘッドラインをみているという。つまり、動画は音声なしで再生されており、それを補足するためのテキストが必須であるということをマーケターは認識する必要がある。そしてインスタントプレイの動画は、7秒で広告想起、認知、購買以降がほぼ決まるため、7秒の間にいかにメッセージを伝えるかが特に重要だという。
ネイティブ広告をプログラマティックに買う時代の到来
すでに米国では、インフィード広告をプログラマティックに買う時代が到来している。そしてオープンなマーケットプレイスよりも、プライベートマーケットプレイス(PMP)での取引が主流だという。パブリッシャーは価格の維持を、クライアントは広告掲載面の質の確保を願うことから、ネイティブ広告をプログラマティックに買う時の主たる場はPMPになっているのだ。
「ネイティブ広告をプログラマティックで買い付けができる環境が、米国ではすでに整いつつある。さらにはネイティブ広告のフォーマットは動画化が加速しており、今後その主たるフォーマットは動画になるだろう。スマートニュースとしても、ネイティブ広告がプログラマティック化する時代を見据えて、準備はしている。ただし日本においては、いずれはその方向に進んでいくとは思うが、その時代が到来するまでにはまだ時間がかかるだろう」と川崎氏は語り、セッションを締めくくった。
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