日本に足りないのは実践的学習
中嶋氏は日本のマーケター向けイベントのセッションが概念論に終わってしまうのには、日本と海外の考え方の違いにあるという。具体的には、海外のマーケターはプラクティカル(実践的)であるのに対し、日本のマーケターはコンセプチャル(概念的)であると指摘する。
「アメリカは実践的な思考で、結果として実施施策が会社の収益にどのように貢献するのかを必ず問われます。MBAでも概念論の時間は少なく、ほとんどがケーススタディです。対して日本では、概念論に終始し、実施施策も目的や期待される効果がぼんやりとしたものが多い。イベントでも、概念として正しいことは言っているものの、それ以上得られることがないものが多いんです」(中嶋氏)

中嶋氏によれば、日本で特に多いのは、流行のキーワードに飛びつくだけで、目的をはっきりさせず失敗するケース。例えばビッグデータにしても、概念的な話を聞いて、目的なしに取り急ぎ玉石混交のデータを集め分析を行っても、すでに予測できたような分析結果しか生まれない。
そのコンセプチャルな日本の状況は、支援する側が提供するツールの市場成長を妨げる一因になっていると橋本氏は語る。
「市場で新しい技術や手法が広まるときにありがちなのが、その技術や手法が単なる流行りのキーワードになってしまうこと。これでは、広告主に対しても本当の意味で浸透しているとは言いがたい。なぜなら具体的な活用法が明示されていないからです。現在、MAもキーワードとしてもてはやされていますが、弊社も含めてベンダー各社が議論し、具体的な活用法を伝える義務があると考えています」(橋本氏)
MA成功の秘訣は、リアルから導きだす仮説と明確な目標
では、MAを成功に導くためにはどうすればいいのか、MAに関するセッションも同イベントにて学んできた中嶋氏に伺ったところ、重要なのは「収益目標も含めた、目的関数の設定」だと語る。
「何を課題として解こうとしているか、明確に記述できるレベルで行わない限りは、MAはもちろん、マーケティング施策は上手くいきません」(中嶋氏)
例えば中嶋氏が執行役員を務めるワールドでは、60以上あるブランドのうち、相互に関連性の高いブランドがあるという。その関連性がわかったとき、ブランドAを買っている人はブランドBも買う可能性が高いという仮説ができ、そこで初めてMAなどのソリューションで相互にオファーをかけるなど一歩踏み込んだ施策が可能となるのだ。

「こういった施策は、目的関数を設定し仮説を立てたから見えたことで、MAを導入しただけではできない。最初の仮説は、やはり人間の知能と知恵が必要で、その上で施策を行い、効果があればMAで自動化するフローを踏むべきです。間違っても、顧客を新規・既存・休眠にざっくり分けてメールを自動的に送るだけで終わってはいけない」(中嶋氏)