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アカウントトライアングルで見る成長余地
まず、検索連動型広告領域自体のトレンドだが、引き続き堅調に推移しているものの、スマートフォンやソーシャルメディアの普及など、市場環境の変化を機に、ここ数年はソーシャルメディア広告やリターゲティング広告などに押され、かつてのような勢いは失った感もある。デジタルインファクトでは、2016年の検索連動型広告市場を3,635億円、前年比+6.6%増と予想している。
今後の検索連動型広告の大きな成長余地はどこにあるのだろうか。その一つの切り口は、SMB領域、いわゆる中小企業向けの検索連動型広告の出稿ニーズであると考えられる。
検索連動型広告利用企業の予算規模は、大きく4つの層に分けることができる。月額30万円未満、月額30万円~100万円、月額100万円~、そして月額500万円以上だ。
月額500万円以上のアカウント(広告主)は、検索連動型広告に対して高い知見を持ち、多くのノウハウを蓄積している業界トップクラスの広告代理店が運用支援をしている。そして、業界大手の広告代理店が支援している広告主は、概ね月額100万円以上の予算規模であると言われている。
広告代理店サイドの話としてよく耳にするのが「広告主の予算の大小にかかわらず、そこに割く作業工数があまり変わらない」という声だ。広告代理店にとって、月額100万円を使う広告主と、1,000万円を使う広告主、それぞれのために割く運用やレポーティングのための作業量は、ほとんど変わらないと言われる。
従来、月額100万円未満の広告主は、運用力のある大手代理店からの質の高い手厚い支援を受けることは難しいと言われてきた。広告代理店から見れば、いわゆる月額予算が100万円未満のクライアント層の市場に、検索連動型広告への潜在ニーズがあるということがわかっていても、収益性の観点から容易に手を出すことができない領域であった。
この月額予算100万円未満のクライアント領域は、検索連動型市場における埋もれた需要として残されてきた。しかしながら、SMB領域に適したテクノロジーの普及が、その状況を変えつつある感がある。
SMB領域でのエコシステム
これまで広告主向けの支援が手薄であったSMB領域では今、さながらスモールエコシステムのようなものができつつある。
まず、これまで参入に二の足を踏んでいた大手広告代理店が、SMB市場に挑戦する動きが活発化している。比較的前からこの領域への注力を進めてきたのがオプトグループである。オプトグループでは、傘下のソウルドアウトが中小企業をメインターゲットにした広告代理事業を展開、大手広告代理店として培ってきた検索連動型広告に関する知見やノウハウをSMB企業向けに提供している。
また、検索連動型広告取扱最大手のアイレップも子会社ロカリオを設立、この市場に参入している。子会社の設立には至らずとも、取引条件の下限額を引き下げて月額100万円未満の広告主との取引を進め、取引先数を大幅に増やした広告代理店もいる。
その他、求人、歯科・医療機関、士業などのサービス情報を提供するクラシファイド系メディアを運営する事業者が、自社顧客(多くは中小企業)向けサービスの一環として、また、CMS提供事業者や制作事業者がアップセルかつ売り切りモデル以外の収益確保として、広告主の検索連動型広告の運用支援に取り組みはじめている。中小企業をターゲットにしたコンサルティング会社もまた、検索連動型広告の運用支援を始めたと聞く。